こちらも読まれています 逮捕のシーンを描写したテレビドラマや映画では、逮捕された被疑者が次に登場するのは取調べが行われる取調室であることが多いのですが、実は取調べの前に、写真撮影と指紋採取、任意の検査、身体検査や着替えといった多くの手続きが矢継ぎ早に済まされているのです。 当該事件の初めての取調べがいつ行われるのはケースバイケースですが、本項では取調べ以外に、逮捕後すぐ、留置場に入れられる前に行われる手続きについて紹介します。 万が一刑事事件の被疑者として逮捕されてしまったら、これらの手続きが行われることを前もって知っておけば、落ち着いて対応ができるのではないでしょうか。 被疑者が拒否できること、できないこと 逮捕直後に行われる重要な刑事事件の手続きは写真撮影と指紋採取で、これらは拒否することができないものです。 写真撮影はデジタルカメラで行われ、被疑者の正面と真横、そして人間の特徴が最も出やすいと言われている左斜め前からの写真が撮影されます。 撮影は担当捜査員が行いますが、どのような写真が撮られたのか確認することはできず、デジタルとはいえ撮り直しを依頼することもできません。 指紋採取もデジタル化されており、昔のようにインクを手のひらまでつけて紙に押しつけられることはなく、鑑識係の捜査員が両手の指の指紋、掌全体の掌紋、小指から手首にかけての即掌紋の画像をスキャンします。 以上のデータは、事件が不起訴処分となっても、裁判で無罪になっても警察のデータベースに残るため、前科はつかないものの、前歴がつくと言われているのはこのためです。 一方で、DNA鑑定、声紋鑑定、強制採尿、ポリグラフ検査などの科学的捜査は、あくまでも任意の協力となり、これらの捜査を行うための特別な令状がなければ、被疑者は拒否しても構いません。 何もかもに応じる必要はないことを知っておこう 刑事事件の被疑者として逮捕されてしまったら、警察の言うことには何でも応じなくてはならないと考えがちです。 身に覚えのある罪であっても、まったく覚えがない罪でも、逮捕という事実で気が動転して弱気になり、警察に抵抗すればそれだけで犯罪になってしまうと考えるのも無理のないところでしょう。 しかし近年、取調べの可視化を含めて、社会的にも被疑者の人権を守る動きが強まってきています。 逮捕状があるならば、逮捕に付随する写真撮影と指紋採取、次に説明する身体検査などは拒否することはできませんが、その他の検査については拒んでも警察官の印象が悪くなるだけで、罪が重くなるわけではないことを知っておき、早期に弁護士に連絡を取って、対応方法のアドバイスを得るようにしましょう。 留置場 留置所 に入るとまず身体検査 刑事事件の被疑者として逮捕されてしまった時、写真撮影と指紋採取、取調べが終われば、とりあえず最初の刑事手続きは一段落です。 そして被疑者は留置場へと入ることになります。 留置場は警察署内にありますが、完全に独立したブロックで、たいていの場合は出入り口がひとつしかなく、留置場の出入り口は分厚い鉄の扉でできています。 基本的に出入り口は施錠されていて、扉の開閉は毎回留置場の管理官の監視の元で行われ、新たに収容される被疑者は扉が開くまで扉とは違う方向の壁に向き合って立たされ、開閉が見えないようにされます。 逮捕後、被疑者が移動するときは常に手錠がかけられ腰縄が打たれていますので、警察官を襲ったり、逃亡したりということはないはずですが、警察官の気の緩みで実際に逃亡事件も起きているため、たいていの留置場ではやや異常ともいえる厳しい監視のもとで被疑者は留置場に入ることになります。 被疑者が留置場に入れられると、たいていの場合はまず身体検査が行われます。 パンツの中までしっかり検査 身体検査がどのように行われるかは留置場によって違い、明確な定めはないため、ここでは一例を紹介しておきます。 被疑者が留置場に入れられたら、手錠と腰縄が外されます。 留置場内に収容されている被疑者や被告人は、道具による身体的な拘束はありませんが、部屋の中にいない場合は常に2人以上の警察官がそばに立って監視していますので自由に行動はできないのです。 そして最初に留置場内に入った時、いきなり鉄格子の入った居室に放り込まれるのではなく、まず身体検査が行われます。 留置場には、定期的に医師が出張してきて問診など簡単な健康診断をおこなうための医療室などと呼ばれている部屋がありますが、身体検査はこの部屋で行われることが多いようです。 この際、被疑者は服を脱ぐように言われ、身体検査の時の格好はパンツ一枚となるように指示され、パンツの中までしっかりと検査されてしまいます。 加えて、一般社会ではあまり問題にされない質問として「刺青をしているか?」と聞かれるようです。 最近ではファッションでタトゥーをしている人も多いので、それだけで暴力団関係者とは判断できないのですが、身体的な特徴としてしっかりと記録されるのです。 健康面の心配があれば、前もって申告しておくこと この身体検査では、身長や体重といった一般的なことから、持病があるかどうかも聞かれます。 留置場に収容されている被疑者を管理するのは警察官ですが、事件の捜査や取調べを行う刑事課ではなく、留置場管理課など管轄が違う部署に所属しています。 担当さんと呼ばれる管理課などの警察官は、被疑者の健康管理も重要な任務のひとつで、留置場で病気になったり、自殺をしたりすることを防ぐことに神経を尖らせています。 かつて劣悪な環境で被疑者に取調べを行って問題になりましたが、現在では十分に健康状態などに気を遣い、しっかりと管理が行われているようです。 そのため、たとえ短期間でも違う環境で慣れない生活を送り、健康状態が悪化してしまうことを避けるため、不安のある人は遠慮なく事前に申告をしておくべきでしょう。 留置場 留置所 での衣類は私服で大丈夫 身体検査が終われば、服を着替えていよいよ居室と言われる被疑者が居住する部屋に入れられるのですが、この時の服は私服で構いません。 世間では誤解されがちですが、刑事事件における手続きは、被疑者は有罪が確定している犯人ではないという、推定無罪の見地で進められるものです。 被疑者は、現行犯逮捕であっても、本人が最初から罪を認めていても、裁判が終わって判決が下されるまでは、無実の人として扱われます。 そのため、まだ裁判にも至っていない被疑者が収容される留置場では、服装も私服で大丈夫なのです。 ただし自殺防止などの観点から、服装には厳しい規制があります。 紐状のもの、ボタン類は禁止 施設によって規定に違いがありますが、留置場ではネクタイやベルト、パーカーの紐など、首吊りなどに使えそうな紐状の物が付いた衣類は禁止されています。 また、ボタンの付いた衣類も、飲み込んで自殺を図ったものがいるという理由から、持ち込みや着用が禁止されています。 たいていの施設ではジーンズやパンツスーツも禁止されていて、もし逮捕時にこれらの衣類を着ていたならば、身体検査の時に脱がされたまま警察がすべて預かることになります。 この結果、留置場内で着ることができる衣類はジャージかスウェットの上下くらいとなってしまい、靴もサンダルに履き替えさせられるのです。 衣類は準備しておくか、差し入れてもらうことに 留置場での衣類に関する規制は厳しいため、もしサラリーマンがスーツを着たまま逮捕された場合、留置場では下着以外はそのまま着ていることができなくなります。 この際、留置場では無料で着ることができる衣類を貸し出してくれるのですが、たいていは以前別の被疑者が着ていたものの使い回しです。 クリーニングされているとはいえ、とても快適に着ていられるとは思えないので、逮捕状をもって逮捕される時は、規制に引っかからない着替えを持っていくのも良いでしょう。 そのような余裕がなかった場合や、現行犯逮捕されてしまった時には、家族や友人・知人に差し入れてもらうことになります。 逮捕直後は被疑者と面会するのが難しいと思われますが、弁護士であれば原則としていつでも接見可能ですので、優先して衣類の差し入れをお願いしてみましょう。 被疑者は番号で管理される 留置場内では、以上のような理由から自分の靴も履けません。 留置場側で用意されたサンダルを履くように指示されますが、それにはマジックで数字が書かれており、以降、留置番号と呼ばれるその番号で呼ばれるようになってしまいます。 理由は被疑者のプライバシー保護だというのが建前ですが、この留置番号という習慣は被疑者の人権に配慮するようになるより前から導入されていて、その目的は 被疑者の本名を剥奪して精神的ダメージを与えるという狙いがあるとも言われています。 プライバシーは自分で守る 施設によって違いますが、留置場の居室は6人程度が一緒に入る雑居の部屋となっています。 重大な事件や世間が注目するような著名人の場合は独居と呼ばれる個室に入れられることがありますが、たいていの場合は見も知らぬ被疑者たちと一緒に数日間を過ごすことになります。 その際、留置場ではプライバシー保護という観点はなく、同じ居室に居合わせた被疑者同士が本名や連絡先を教えあっていても特に注意はされないのです。 しかし留置場で同居する人は罪を犯した被疑者であることに代わりはないので、下手に自分の身分を明かしてしまうと、後々に面倒なことになる可能性があります。 自分で自分のプライバシーを守る気になれば、留置番号だけで押し通すことも可能ですから、個人情報を守る方が良いでしょう。 まずは弁護士へ連絡を 万が一刑事事件の被疑者として逮捕されてしまったら、以上のような手続きが何の説明もなく進められ、留置場での生活が始まってしまいますし、たとえそれぞれの手続きの意味を説明されたとしても、気が動転して少しも記憶に残っていないのではないでしょうか。 そこで思い出して欲しいのは、逮捕された直後から、いつでも弁護士への連絡を求める権利があるということです。 弁護士への依頼は早ければ早いほど効果的で、その後の刑事事件の手続きを有利に進めることができ、早期の社会復帰の可能性を高めるものです。 しかし被疑者が自分で電話することなどはできないため、実際に警察が連絡を取ってくれるかどうかは別問題ですから、家族や友人・知人が逮捕されてしまったら、すぐに弁護士に連絡を取り、被疑者の支援のために活動を始めることをお勧めします。
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