フライング バットレス。 ゴシック建築の特徴

ゴシック建築の特徴

フライング バットレス

西洋建築=石造のイメージが強いが、壁は石造・屋根は木造というものも多い。 ギリシャのバルテノン神殿も、屋根は木造・瓦葺きだったそうだ。 木造ではなく切り石を組み合わせて天井を作ろうとするなら、 平らな天井では落ちてしまうので、アーチを連ねた形になる。 ロマネスク建築の時代、石のアーチ型天井の荷重は、 真下の柱や壁に加え、両脇に沿えた部屋のアーチ型天井に流し、 さらに外壁と、外壁と直角に交わる「控え壁」で支えた。 大きな教会建築の基本形が、 天井が高くて細長い廊下状の「身廊」と、 その両脇の、天井が一段低い「側廊」で構成されるのは、 そのような建築技術の制限下で発展してきたからだろう。 ゴシック建築の時代、それまでは側廊部の天井アーチで支えていた荷重を、 天井ではなく外に出した梁として支える「飛び梁」が工夫される。 飛び梁にかかった荷重は、やはり控え壁に流され地面に落とし込まれる。 梁にしたことで、天井を形づくるのに比べて石材が少なくて済み、 支えるための天井自体が荷重になってしまう矛盾も解決できる。 建物全体が規模の割に軽くなって窓をあけやすくなり、 覆われていた部分に外光が直接入るようにもなって、内部が明るくなった。 歴史的にも機能的にも、「控え壁」の延長線上としてあるのが「飛び梁」なので、 英語ではそれぞれを、バットレス buttress/支え 、 フライングバットレス flyingbuttress/飛び支え と呼ぶ。 シャルトル大聖堂東側。 写真左手前の、窓の横に張り出ているのが「控え壁」で、 屋根の上から階段状に降りて来ているのが「飛び梁」。 こういう話は、文章より図を見た方が早い。 『フランス ゴシックを仰ぐ旅』都築響一・木俣元一 新潮社/とんぼの本シリーズ) は、図解と共に両者を説明していて分かりやすい。 87〜89.

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ゴシック建築の特徴

フライング バットレス

はじめに RYOです 今回は各建築様式の少し詳しい部分まで掘り下げようという狙いです。 今回は ゴシック建築についてです。 ゴシック建築 まずゴシック建築の概要を説明します。 ゴシック建築は、12世紀中頃にフランスで生まれ16世紀初頭まで続いた、ロマネスク建築の潜在的な可能性を極限まで追究して創造された建築様式 です。 ゴシック建築はロマネスク建築での課題だった「高くできない」「大きな窓を開けれない」の問題を見事にクリアしました。 ゴシック建築の革新 ゴシック建築の特徴で、ロマネスク建築に見られなかった外見的特徴として 交差リブヴォールト 尖頭アーチ フライング・バットレス の三つをただ挙げるブログや本が多いですが、(間違いではないにしろ) 著者曰くそれは「教科書的ではあるが、いささか時代遅れ」とのことです。 本質を見ていないとの事なんです。 見分け方を知って「あーこれはロマネスク建築だな」とか「お、尖塔アーチがあるからゴシック建築か」などと、建築様式だけを見分けられても「だから何?」って感じですよね。 重要なのは、ロマネスク建築からゴシック建築へは どういう技術革新があり、どういう表現に主眼を置き、どういう過程でそうなったかを知ることです。 上記の三つの特徴はあくまで結果であり、発明に至る過程を知ることが大事です。 その中で、著者が挙げている革新の本質は 線状要素と重量感の排除 で、ロマネスク建築が部分と部分の組み合わせで構成されているのに対し、ゴシック建築は全体的に統一されているのが特徴です。 ロマネスク建築の課題 ではここで(ロマネスク建築編でも書きましたが) ロマネスク建築の課題についてみていきましょう。 ロマネスク建築の一番の問題は ヴォールト天井でした。 ヴォールト天井、覚えてますか?トンネル型の天井のことですよね。 こんな感じです。 ヴォールト天井を採用したことによって起きた問題が 「推力」をどう支えるかでした。 この場合、上に載るアーチは黒い柱を横に倒そうとする力(推力)が働きますよね? 柱が細いと こうなるか こうなります。 横に広がろうとする力(推力)をどう支えるのか? ローマ建築とロマネスク建築の場合、 壁を厚くすることによってこの問題を解決しました。 なのでどうしても分厚い壁で造られたイカツイ見た目になってしまいます。 当然この場合、強度的に壁に大きな窓を開けることはできませんし、高ければ高いほど不安定なので壁を高くすることもできません。 なのでロマネスク建築完成後、次のステップとして出てきた問題は いかにして壁に大きな穴を開けるか いかにして高い塔を作るか いかにして重量感のない建物にするか でした。 壁で支える方式を捨てて、 骨組みで支える方式を得たことがゴシック建築完成の大きなポイントになります。 交差リブヴォールト 交差リブヴォールトは、交差ヴォールトの稜線上にリブを取り付けて補強したもので、ゴシック建築時代に発明されました。 交差ヴォールトの発明で、天井の重さを柱で支えられるようになりました。 この写真の場合、リブが付いて無いので天井の重さはそのまま両側の壁と分厚い柱で支えることになります。 しかし交差ヴォールトだけでは強度不足なんです。 リブを取り付けると、リブが繋がっている 柱で重さをもたせることができるので、そのぶん壁を薄くすることができます。 柱さえ頑丈なら壁は薄くてもいいのです。 壁で支える方式から骨組みで支える方式へ 尖頭アーチ 交差リブヴォールトによって天井の強度を上げることができました。 しかしその柱にアーチを付けようと思うと、重さがアーチの柱にかかって(推力によって)再び倒壊する可能性があります。 この問題を解決したのが 尖頭アーチです。 しかし尖頭アーチにすると、推力が弱くなり上からの力がそのまま黒い柱にかかります。 なので、柱さえ頑丈なら天井を高くしても壁に大きな窓を開けても大丈夫! 壁で支える方式から骨組みで支える方式へ フライング・バットレス(飛び梁) そしてゴシック建築の最も重要な革新がこの フライング・バットレスです。 通常、塔が高くなればなるほど推力は増し、建築物として不安定になっていきます。 しかし塔を高くしても 柱を横から支えるものがあれば安定します。 それが フライング・バットレス(別名「飛び梁」)です。 フライング・バットレスは、ヴォールトの横圧を受け止めそれを控え壁へと流します。 このフライング・バットレスの発明により、身廊壁は荷重支持機能から解放され、薄くて高い、しかも大きな開口部のある身廊壁が可能となりました。 教会堂の外周部には、ピナクルと呼ばれる小尖塔をいただいた控え壁が、フライング・バットレスを受けるために林立しています。 あたかも針葉樹の森のような外観ですが、これは内部空間を実現するために、構造の仕組みを全て建物の外部に露出させた結果なんです。 壁で支える方式から骨組みで支える方式へ ゴシック建築の無重量性 先述しましたが、ゴシック建築の革新の本質は 線状要素と重量感の排除です。 線状要素とは シャフトや小円柱などの丸くて細長い棒状の要素 です。 ゴシック建築はロマネスク建築と違って線状要素で溢れています。 線状要素が多用された理由は 重量感の排除です。 ゴシック建築で用いられた、重量感を排除するための方法の一つに「エッジの排除」があります。 エッジの排除 ゴシック建築では、ロマネスク建築のように壁をくり抜き、窪ませ、盛り上げたときにできる 直角のエッジがみれません。 線状要素の太さ=壁の厚さ? ゴシック建築で用いられた 線状要素は重量感の排除にとても役立っています。 なぜなら、ロマネスク建築ではくり抜かれた開口部に、壁の厚さが率直に現れますが、ゴシック建築では壁の厚さもまた、線状要素によってたくみに隠されているからです。 まあ簡単なので実例を挙げながら説明していきます こちらの写真で説明します。 多くの線状要素がありますが、今回は ピア、シャフト、小円柱、トレーサリーの四つを抽出しました。 つまり、存在感のあるピアやシャフト、小円柱にトレーサリーを『壁の厚さを代表するもの』として受け止めます。 このようにゴシック建築の身廊壁は 線状要素によって編まれた格子状の壁と化しているのです。 これらの線状要素は、重量を支えるには細すぎる外見しかもたないので 線状要素の細さに見合った軽さ(重量のなさ)を感じさせます。 また、実際には荷重をほとんど支持しませんが、(目を欺くために)力の流れの正しい道筋とみえる位置にだけ付けられています。 ゴシック建築の展開 ゴシック建築は、13世紀の初期に様式上の頂点に達した後、イール・ド・フランスからフランス各地に、さらにヨーロッパ全土に広まり、その地の伝統と結びついて多様な展開を遂げました。 こうしてゴシック建築は壁といわず天井といわず、全体を覆いつくす線状要素の、織物状の装飾パターンのなかに解体していきました。 なぜならゴシック建築はおよそ250年に渡って発展し変化し続けていたからです。 イギリスにはイギリス風のゴシック建築が、フランスにはフランス風のゴシック建築が、ドイツにはドイツ風のゴシック建築があります。 しかし、フランスの中心地パリにおいてのみ、初期から後期に至るゴシック建築の一貫した発展の状況を確認することができるので、最後にそれを紹介します。 初期ゴシック『サン・ドニ大聖堂』 パリの近郊に位置するサン・ドニ修道院は、 フランス王家の庇護を受ける由緒正しい修道院で、院長のシュジェールは 「最初のゴシックを生み出した」とされており、建築史上特に重要な人物とされています。 確かにアーチは尖頭アーチではなく半円アーチやし、窓も小さいし・・・ 詳しく言うと 「ロマネスクの面影を色濃く残している」って感じです。 しかし一たび堂内に入ると、そこはもうロマネスクとは全く異なる世界が広がっています。 りヴ・ヴォールトの天井と線状要素、そして壁面に敷き詰められたステンドグラス、尖頭アーチのトリフォリウムなど 完全にゴシック様式です。 「 外観はロマネスク、内観はゴシック」このからくりを説明します。 サンドニ大聖堂自体は、五世紀に創建されました。 尖頭アーチも リブ・ヴォールトも小規模ながら周辺各地域でひっそりと用いられていたのを、シュジェールが思い切って全てまとめて採用したのでこのサン・ドニ大聖堂が 初期ゴシックと呼ばれます。 盛期ゴシック『アミアン大聖堂』 1220年に創建されたアミアン大聖堂は、最も完成されたゴシック建築と呼ばれています。 先程のサン・ドニ大聖堂と比べて、建物外観の装飾も多く線状要素も多用されています。 フライング・バットレスも確認できますね。 そして中に入ると ロマネスク建築とは程遠い内観 リヴ・ヴォールトと尖頭アーチの連続 まさに THE GOTHICって感じです 盛期ゴシックでは高さよりも軽さを追求しました。 ロマネスクよりは高くても後期ゴシックよりは低め、とにかく全体の無重量感を極限まで考慮しました。 後期ゴシック『ストラスブール大聖堂』 ストラスブール大聖堂は1176年の着工から資金不足などを経て1439年にようやく完成しました。 初めはロマネスク様式で建設していたところに、ゴシック様式を身につけた職人の一団が訪れ、急遽ゴシック建築が導入されたらしい。 なので職人到着より先に造られていた内陣はロマネスク様式が色濃く残っているらしい。 後期ゴシックでは線状要素は当たり前、軽く見せるのはできたから次は軽く見せながら高さを追求していきました。 ストラスブール大聖堂は1647年から1874年まで世界一高い建物だったようです。 その高さ、なんと142m!! この高さにもなれば、外側は勿論フライング・バットレスで支えられています。 堂内はと言うと、 これだけでは正直、後期ゴシックかはわかりませんね。 後期ゴシックでは、もはや外観の構造的な改革には興味を示さず、末端の装飾部分に関心が向かっていきます。 一般的にフランス後期ゴシックの特徴として、 フランボワイヤン式のトレーサリーが挙げられます。 フランボワイヤン式とはいわゆる 火焔式と呼ばれる、炎がボワっとしている感じのトレーサリーのことです。 見てください、この炎が燃え盛るような装飾を 基本的にフランスの後期ゴシックは、装飾がめちゃくちゃ複雑です。 おわりに という事で、ゴシック建築が終わりました。 次は古典系建築の「ルネサンス建築」に入ります。 これまでゲルマン人たちが創造したロマネスク建築とゴシック建築でしたが、過去の偉大なローマ建築を手本として始めたルネサンス建築とは一体どのような建築様式だったのでしょう。 1992年11月生まれ 京都在住 旅する空手家 大好物は「旅」「自然」「カメラ」「空手」 そして「鶏天」と「麻婆豆腐」も... 顔に似合わずロマンチスト 関連する記事• 目次 1. はじめに2. 新古典主義建築3. 新古典主義建築が排除した要素3. 目次 1. はじめに2. バロック建築2. 豪華にしなければならなかった背景3. バロック建築の特徴4. サン・ピエトロの正面4. コリント式[…]• 目次 1. はじめに2. ロマネスク建築3. 古典建築の衰退と中世建築の開花4. 教会堂の二つの形式4. 集中式4. バシリカ式4. […]• 目次 1. はじめに2. ローマ建築3. オーダーと石造建築の矛盾4. 石造建築に有利な『アーチ構造』4. 【解説】アーチ構造4. 【解説】ヴ[…]• 目次 1. はじめに2. 西洋建築とは3. 各建築様式の代表作3. ギリシア建築(B. 7~2)3. ローマ建築(B. 2~A. […] コメント (2件)•

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ミラノ(Milano) 5 (ミラノ大聖堂 3 外壁の装飾)

フライング バットレス

タップできる目次• 特にフランスに多いゴシック建築 ゴシック建築って何?と思った人は、あまり海外へ行かれない方か、もしくはゴシックロリータなどをあまり知らない方なのかもしれませんね。 ツアーコンダクターの女性の「ゴシック建築で~」という説明を聞いても分からないのでは?そんなあなたにゴシック建築の特徴をご紹介します。 まず、ゴシック建築の3つの特徴を覚えておきましょう。 せんとうアーチ、リヴ・ヴォールト、フライング・バットレス、この3つです。 ゴシック建築の特徴を見てみよう せんとうアーチは頭が尖っているアーチのことで、つまりアルファベットのUを逆さにした門のことです。 ヴォールトとはかまぼこ型を特徴とする天井の様式や建築構造になります。 筒型になったもの、交差しているもの、など、その教会や城に携わった建築家によってそれぞれ異なります。 またフライング・バットレスですが、建築の外側の壁の補強のために屋外に張り出す形で設置されたものです。 ヴォールト天井を高くすると外側にかかる力が大きくなる 外側にかかる力を支えるため、ヴォールトの壁は厚みを増し、頑丈になっているのだとか。 そこで壁の外側につっかえ棒をして、ヴォールトを支えているようです。 この建築様式を利用することで、天井を高くすることが可能となっています。 天井は何故高いほうが良いのか? 天井は何故高いほうが良いのか?教会、城など特にそう思いますよね。 観光で訪れた場所でも、何故か教会の天井は全て高かったのを覚えています。 それは天井の窓にあえてステンドグラスをつけているからです。 その光が天井から床まで届き、幻想的な雰囲気をかもし出すことになります。 そのような狙いもあって、教会や城の窓は高いところにあり、必ずと言っても良いほどステンドグラスがついています。 もし観光に行くことがあるのであれば、是非ステンドグラスの数を数えてみることをオススメします。 恐らく最後まで数えきることはできないと思いますよ。 ゴシック建築を日本で見たくても… しかしこういった様式の建物は日本ではほとんど見ることができません。 ですから海外で見る際に、かなりゴージャスに見えるんでしょうね。 実際ゴージャスだと思います。 でも海外の人が日本の法隆寺を見たら、どう感じるのでしょうか?ゴージャスとは感じないでしょうね。 それよりはもっと質素な、秩序が保たれた建造物として映るのではないでしょうか。

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