アルト ルージュ ブリュン スタッド。 歌月十夜 二十七祖シリーズ

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アルト ルージュ ブリュン スタッド

というわけで、アブリアルさんのサイトに記載されていたので、 こちらの知る限りのアルトルージュデータを。 秋葉タオル激希望) 『アルトルージュ・ブリュンスタッド』 第九祖でありながら、真祖である二十七祖における姫。 血塊契約:自分の血を他の存在に吸わせることにより、自分無しでは存在できない死徒にする。 アルクェイド派とアルトルージュ派が存在。 死徒の中で『最強』となる。 ちなみに当然アルトルージュ反対派(契約していようが関係ない)。 トラフィムと契約が結ばれたことにより、死徒の中で最大発言を持つ死徒王と同等の立場になったため、 トラフィムの発言に唯一左右されない死徒となる(ネロやアルクェイドなどに真祖退治を頼んだのは彼)。 能力は随一。 さっきほども記載したとおり、『現存する最強の死徒』に位置する。 能力的には真祖なので空想具現化が使用可能。 他に死徒の中で使用できるのは「スミレ」のみ。 だが別に完全に真祖の味方というわけではない。 ヴァンやトラフィムなどはアルトルージュ派を嫌っているために上記になる。 が、その内の第二祖、第三祖は現存しないため関係ない。 アルクェイドの欠陥品であるということから、先に創生される。 アルクェイド(1)とアルトルージュ(2)の違い。 1:最強の真祖 2:最強の死徒 1:白を好む 2:黒を好む 1:吸血衝動制御 2:吸血衝動開放 1:短金髪 2:長黒髪(のちに詳細) 1:外見20歳前後 2:外見14歳前後 髪について。 まだ千年城が真祖たちの住処であった時代。 姉なのだが、妹方面のアルトルージュはアルクェイドに 「その長い髪の毛が欲しい」 と懇願(つまりこのときのアルトはまだ髪が短かったと推測)。 だがそのアルトを無視しつづける真祖狩りの機械『朱い月のブリュンスタッド』であるアルクェイドはそれを拒否。 長い年月の果て、アルトはアルクェイドから強制で髪の毛を強奪。 なのでアルトルージュは肩までは黒髪だが、それ以降からは金髪で存在する。 『データ』 見た目は黒長髪の14歳の少女で、顔はアルクェイドをそのまま小さくした感じ。 身長など細かいデータは不明。 固有結界『パレード』『マーブル・ファンタズム』を使用可能(パレードは本来フィナのもの)。 魔力の強制制御により、常に外見14歳の少女。 見た目もアルクェイドと同等まで成長する。 その際、アルクェイドから強奪した髪の毛が具現化。 肩までが黒、それ以降が金髪という異様な髪色になる。 甘いものが好き。 月を見るのも好き(ブリュンスタッドは代々、月を好む)。 性格はFateでいうイリヤがかなり性格に該当。 残忍だが萌えな部分も存在する。 いや、もしかしたら「白レン」あたりも該当するかもしれません。 能力的にはアルクェイドより断然上。 アルクェイドがセイバーの5倍の強さ(どこかで情報入手)だと換算すると、 アルトルージュはざっと20倍。 だがアルクェイドが『朱い月のブリュンスタッド』に覚醒すれば上回るが、 それにはアルトルージュが保持する『自分の髪』が必要。 なので実際にはアルトルージュには勝てない。 護衛であるリィゾ・フィナは実質的にはアルトルージュの中の 『アルクェイドの髪の毛』を護衛(なぜならこの髪の毛が奪われない限り最強だから)。 ちなみにリィゾ・フィナはどちらも最強格の死徒。 前者は固有結界、後者は不死 シエルと同等原理)を所持する。 と…文字数限界レベルなのでここらへんで終了なのですが…。 アブリアルさん、脳内更新お願いします。 これぐらいが現在の分かっている部分ですね(100%正解とは言えませんが)。 追加ですが、意外と文字数大丈夫でした(笑)。 『鷺澤頼子 誕生祭!!』 わぁー!!わぁー!! というわけでサギーこと頼子の誕生日なのですよ今日は。 あ~…まぁ…僕の中では以外と普通の地位に位置するD.C.ヒロインなのですが、 まぁ…それでも腐ってもD.C.。 祝うしかないでしょうにと。 オーッ!!マイ、サギーッ!!(by杉並) で、頼子と美咲の謎はいろいろありますよね~…作品、小説、資料集。 全てバラバラな意見が書いてあるというD.C.を理解する人にとってはかなり嫌な設定。 でも頼子は頼子。 頼子ファンには申し訳ないですが、僕にとってはどうでもいいです。 僕はあくまでTYPE-MOON信者ですから(笑)。 というわけで恒例の壁紙公開。 以上、壁紙5枚でしたw 誕生日おめでとうっ!!.

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アルトルージュ・ブリュンスタッド+頼子さん誕生祭っ!!

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もう一人の吸血姫 「貴方が遠野志貴君ね?」 黒髪の少女が訊ねた。 「そうだけど、君は一体…」 志貴はポケットの中の七つ夜を握り締め、身構えながら訊き返した。 眼が紅いところをみると吸血鬼だろう。 それに七夜の血が警告している。 この娘の力が強大だと。 「私?私はアルトルージュ・ブリュンスタッド。 一応死徒二十七祖8番目の死徒って言われてるわ」 「なっ、死徒二十七祖だって?それにブリュンスタッドって…」 志貴はアルクェイドと出会った時を思い出す。 「そうよ志貴君。 「貴方の魔眼が欲しい…と言ったら?」 「何っ!?」 志貴は七つ夜を取り出して構える。 「止めるのだな、貴様ではあの方には適わん」 「あの方どころか僕等にも適わないよ」 「なっ!!」 いつの間にか二人の男が現われ、志貴の腕を掴んだ。 「クソッ…!はなせっ!!」 志貴はもがくが力の差が違いすぎた。 恐らくこの二人も死徒であろう。 「冗談よ、…シュトラウト・スヴェルテン、下ろしてあげなさい。 それから志貴君と二人だけにさせて頂戴。 そうそう、埋葬機関の弓とアルクェイドが向かって来ると思うから、適当に相手してあげなさい」 志貴は彼女の言葉に怒りを覚え、声を荒立てた。 「二人には手を出すな!俺が目的なんだろ!?」 「そうね。 だけどあの二人が来ると貴方とお話する事ができないじゃない?」 「二人にケガさせるつもりなら俺は何も喋らないぞ」 志貴は彼女を睨みながら言った。 すると彼女は少し考えてから言った。 「なら、躱せる程度の攻撃で、なるべく時間稼ぎして頂戴。 これならいいわよね?」 彼女は志貴に訊いた。 志貴はただ無言で目を逸らした。 「じゃあ二人とも、夜明け前には戻っていいわ。 」 「御意」 「ハッ」 二人の男、リィゾ=バール・シュトラウトとフィナ=ヴラド・スヴェルテンはそれぞれ散っていった。 「あの二人も死徒二十七祖のメンバーよ。 だから弓もアルクェイドも当分は来れないでしょう。 …さて、志貴君」 彼女は志貴の方へ歩き始めた。 「俺をどうするつもりだ?」 志貴は彼女を睨む。 「そんなコワイ顔しないで。 私、死徒のまえに女の子なんだから」 彼女は微笑みながら近づいていく。 志貴はその微笑みに一瞬心を奪われた。 その微笑みには邪悪な意志は感じられない、むしろ汚れの無い可愛いものだった。 「志貴君。 私とデートしない?」 「……はい?」 彼女から放たれた予想もしなかった言葉に素っ頓狂な声をあげる志貴。 「だから、私とデートしよ。 ね?」 上目遣いで見つめられる志貴。 志貴は、自分に選択権が無いことを察知した。 下手をすると殺されかねない。 相手は少女の姿でも死徒二十七祖の吸血鬼なのだ。 「…ああ、わかった」 志貴は様子をみるため、承諾した。 「それじゃ行きましょう、志貴君」 志貴たちは夜の遊園地へ行った。 ジェットコースターに乗り、ダウンした志貴を心配そうに気遣うアルトルージュ。 お化け屋敷のお化けにビックリして怖がるアルトルージュに、優しく声をかけて落ちつかせる志貴。 二人のその姿はまるで恋人同士にも兄妹にも見えた。 その後公園へ訪れ、ベンチに座って会話していた。 「でも何で俺とデートしたかったんだ?」 志貴は彼女に訊ねた。 「アルクェイドが夢中になってる貴方が、どんな人か知りたかったから」 「そっか。 で、俺のコトを知って何が判ったんだ?」 「とても優しいヒト。 死徒である私を女の子として接してくれた。 凄く嬉しかったわ」 「そんなの当たり前だろ。 キミはどう見たって女の子じゃないか」 志貴は微笑みながら言った。 その微笑みにアルトルージュは顔を赤くした。 「アルクェイドや弓が放っておかない理由がわかったわ。 私も…」 「ん?何か言った?」 「いいえ、ただの独り言よ。 気にしないで」 「そう?…ならいいけど」 アルトルージュは、ふぅ、と胸を撫で下ろした。 「あとブリュンスタッドってアルクェイドの名前と同じなんだけど、君は死徒なんだろ?アイツから聞いたんだけどブリュンスタッドってのは真祖の王族につく名前なんだよな?どういうことなんだ?」 「私は死徒と真祖との混血なのよ。 次代の朱い月の器として育てられた。 だけどやはりオリジナルでなくてはならなかった。 それで今度はあの娘が生まれた。 だから私はあの娘の姉にあたるの」 「アイツのお姉さんなのか?俺には分かんないけど、そういう次代の器になるために頑張ってきたのに、アイツに権利を奪われる形になった。 そのことに恨みとかは無いのか?」 「まさか、私は血は違えどあの娘の姉。 恨みなんてこれっぽっちも無いわ。 むしろあの娘の方が私を恨んでる」 「どういうこと?君は恨まれるような人には見えないけど……」 「ありがとう、そう言ってもらえると嬉しいわ。 ……あの娘とロアの事は知っているでしょう?」 「あ、ああ」 「あの娘はロアに血を飲まされ、暴走した。 真祖は全て殺された。 その風景はまるで地獄のようだったわ。 そして私も殺されそうになった。 けどあの二人、そしてプライミッツが助けてくれた。 そして私はあの娘の髪を使い、契約することで暴走を抑えることに成功した。 あの娘は死徒を狩ることが目的、その死徒に止められた事を恨んでるんだと思うの」 「そっか……もしその事が言いにくいのなら俺から言っておくよ。 そしてちゃんと向かい合って話せる席を作るから」 「ありがとう。 志貴君。 貴方は本当に優しいわ」 アルトルージュは心から礼を言った。 志貴はただ「お礼を言われることはまだ何にもしてないよ」といって苦笑した。 「じゃあもう一つ質問。 吸血衝動はどうなんだ?俺から血を吸いたくならないのか?制御とかできるのか?」 「ええ。 真祖に比べると、死徒の吸血衝動はそんなに強くないのよ。 そもそも吸血衝動は肉体保持の為のもの。 それに血を吸うことだけが血を得る方法じゃないわ。 私はいろいろな機関から輸血パックを買い、摂取してるのよ。 だから、私や私の周りの死徒は吸血行為を一切していないわ。 それに私、貴方の前では血は飲めない。 そんな姿を見せたくはないわ」 「わかった…フフッ」 志貴は思わず笑った。 「何?私、何かおかしな事言ったかしら?」 アルトルージュは志貴が、何故笑ったのかわからず訊ねた。 「ああいや、キミがアルクェイドと同じこと言ったから。 アイツ、意地でも血は吸わないって言ったんだ」 アルトルージュはそれを聞いて頬を膨らませた。 そして拗ねた素振りで訊ねた。 「……ねぇ志貴君。 志貴君はアルクェイドのコト好きなの?」 「えっ!?」 アルトルージュの突然の質問に動揺する志貴。 「ねぇどうなの?」 志貴はポリポリと頭を掻きながら言った。 「…俺はアイツを一度殺してしまった。 次に出会ったときアイツに感情が芽生えてた。 それがいいように出たか悪いように出たかはわからない。 けど、真祖って言っても女の子だ。 ただ死徒を狩るだけの機械なんか似合わない。 だから、アイツが女の子としていられるように、接してやる。 それが俺の償いなんだ。 どう言ったからいいか分からないけど、俺はアイツのお守り役かな」 「じゃあ、なんとも思ってないのね?」 アルトルージュは志貴にせまった。 志貴は顔を赤くしながら答えた。 「う~ん。 …というか、俺は俺のまわりにいる人たち皆のことが好きなんだ。 誰か一人を選ぶことなんかできないよ」 「なら私も貴方の恋人に立候補しても何の問題も無いわね」 「えっ!?」 アルトルージュの突然の宣言にびっくりする志貴。 「志貴君。 お願いがあるの」 「な、何?」 アルトルージュは顔を赤くしながら、言った。 「私を……抱いてもらえる?」 「な、な何言い出すんだ急に!?」 アルトルージュの大胆発言に、志貴の顔は真っ赤になる。 「そ、そんなことできるわけないだろ!」 さすがに何百年と生きている吸血姫とはいえ見た目は14歳位の少女だ。 いくらお願いされても、志貴自身の常識が許さない。 「私のコト、嫌い?」 アルトルージュは目を潤ませる。 「いや、そういう問題じゃなくって…」 志貴は困ったように頭をかきながら彼女を宥めようとした。 「じゃあこうしましょう」 アルトルージュは静かに目を閉じた。 次の瞬間、空気が一変した。 志貴の内に眠る七夜の血が騒ぎ出す。 アレヲ発動サセルナ。 カナワナイカナワナイ。 アレニハカテナイ。 発動スル前ニコロセ。 コロセコロセコロセ…! (うるさい、黙れ!あの娘はとても優しい娘なんだ。 そんなことさせない!) マアイイ。 ……イズレ後悔スルコトニナルダロウ。 志貴は己との戦いに何とか勝つ。 それと同時にアルトルージュの詠唱が響き渡る。 その光を受け、アルトルージュの力は解放され、大人の姿に変わっていく。 「フフフッ、どう?驚いたかしら?」 「なっ…」 志貴はアルトルージュの姿をみて驚いた。 大人になった事に驚いたのもあるが、言葉では言い表せないほど美しく、それでいて妖艶な雰囲気を醸し出していた。 「これなら文句ないでしょう?さ、行きましょう志貴君」 アルトルージュはそう言って志貴に手を差し出す。 「い、いやあの。 だからそういう問題じゃなくって、その…」 「…お願い。 貴方との距離を短くしたいの…」 表情を曇らせるアルトルージュ。 志貴は彼女を悲しませたくない思いから、決断した。 「……わかった。 本当に俺でいいんだね?後悔しないと約束できるかい?」 志貴は彼女の頬に手を当てて訊いた。 すると彼女はその手を両手で包み込むように掴んで言った。 「志貴君じゃないとダメ。 私が初めて好きになったのは貴方なのよ。 …だから、絶対に後悔なんかしないわ。 …もう誇り高きブリュンスタッドの姫にこれ以上恥をかかせないで」 少し拗ねた感じで志貴に言う。 しかし彼女の目は光り輝いていた。 「…わかった」 彼女の言葉を聞いた志貴は彼女と共に公園を後にした。 一方のアルクェイドとシエルは、それぞれリィゾ・フィナと対峙していた。 アルクェイドSide シエルSide.

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アルトルージュ・ブリュンスタッド

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月蝕 闇の中で、蝋燭が燃えている。 淡く、柔らかな光が、部屋の至るところで、ぼぉ、と闇の中に浮かんでいる。 「報告は以上でございます。 我らが姫君」 太く、大きな声が空間を揺さぶる。 男は時代掛かった大げさな仕草で、恭しく頭を垂れた。 手に嵌めた手袋が、漆黒の外套に包まれたドレスシャツの白が、闇の中で百合の花のように鮮やかに揺れる。 「全ては、御心のままに」 病的なまで色が白く、堀の深い顔立ち。 中世の大貴族の様な礼服に、威厳溢れる振る舞い。 ちらり、と見えた、外套の裏地には鮮血の様な赤色。 褐色の髪は長く、肩甲骨の辺りまで波打つように流れている。 それはまるで、絵画の中からそのまま出てきたような……。 そう、ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』でイメージされる姿そのままだ。 見た目は壮年といったところだが、年齢を感じさせないほどの生気がその男には溢れていた。 「大体の流れはわかった。 ……して、結局のところ、成果はあったのか?」 かしずくように頭を垂れる男に、鈴の鳴るような、少女の美しい声が応えた。 「それはそれは! もちろんで御座います。 麗しきアルトルージュ・ブリュンスタッド!」 赤い瞳が大きく見開き、男は前に進み出た。 求婚の詩を歌い上げるオペラ歌手のように。 あるいは、神を崇める熱狂的な信徒のように。 両手を大きく広げ、男は芝居がかった大仰な仕草で、彼の主を讃える。 何の憂慮も要りません。 事は順調に進んでおります」 伏し目がちに粛々と、しかし誇らしげに低い声を響かせる。 異論はないな?」 それまでの恭しい仕草は一転、男は隠しようも無い侮蔑の視線を足元に走らせた。 「は、はい。 無い、です」 床一面に敷き詰めた赤い絨毯。 そこに額が突くほどに深く跪き、若い男は震える声で応えた。 「ほぅ、そうか。 思ったより早い展開だな」 「喜んでいただけて何よりでございます。 姫君」 足元に傅く下僕を見下ろしていた侮蔑の視線を一転、男は顔を上げると満足げに首肯した。 「して。 ロブ……といったか?」 「は、はい」 軽やかな少女の声に応えて、若い吸血鬼は顔を上げる。 その途端、 「貴様……ッ!!姫の前でその汚い顔を上げるな!!」 雷のような怒声と共に、凄まじい衝撃がロブを襲った。 「ぐげ……ッ」 踏み潰された蛙の様な声を漏らし、ロブの身体が凄まじい力で床に押し付けられる。 何が起きたのかも解らず、ロブは猛烈な重圧の中、困惑に視線を彷徨わせた。 「身の程をわきまえろ! 下郎ッ」 息も絶え絶えに、声のする方に視線を移す。 そこには、拳を握り締め、侮蔑の目でロブを見下ろす男の姿があった。 「げぇ、ぇ」 男は手を触れても居ない。 だというのに、不可視の重圧がロブの全身を砕かんばかりに、押しつぶしている。 ロブは請うような視線を男に向けるが、怒りに染まった顔に慈悲の色は微塵も存在しない。 ごきり、 音を立てて、体中の骨が砕けていく。 フィナ・ヴラド・ツヴェルテン。 我が従順なる騎士よ」 怒りを顕にする男を、少女の声が制止した。 そう熱くなるな」 「は。 「顔を上げろ。 我が僕」 ちゃぽん、 水の中に、何かが落ちる音が響いた。 ロブは、恐る恐る顔を上げる。 「……」 ロブの跪く場所と部屋の半分から奥を遮るように、白いレースが引かれている。 汚れ一つ無い、綺麗な白。 その奥に、シルエットが映っている。 床に置かれた、船の様な形をしたシルエットと、そこに横たわる少女の影。 ちゃぽん、 浴槽に満たされた水面が揺れ、音を立てる。 「……っ!」 白い布一枚を隔てて、バスタブに少女が浸かっている。 どこか扇情的なその光景に、ロブは、思わず息を呑んだ。 姫君のご好意だ。 謹んで請け給え。 「だから、よいと言っているだろう。 フィナ」 どこかうんざりとした様子で、少女が言う。 「失礼しました。 麗しき姫君。 ……ところで、貴様。 もう一匹の方はどうした? 姿を見ないが。 確か、ヴォロゾフと言ったか」 「それが、逸れてしまってからは行方がわからなくて……。 向こうからの連絡も無いですし……」 話しているうちに興奮してきたのか、ロブは拳を握り締め、勢い込んで喋り出した。 「そ、そうだ、兄貴を助けてください! きっと、俺を待ってる!」 泣きそうな顔で、フィナの足元へと縋りつく。 足に触れたロブの手を見下ろして、フィナは嫌悪感も顕に顔を顰めた。 「……貴様。 見苦しいぞ。 黙れ」 「お、お願いします……!! 捕まっているのかもしれません。 お願いします。 「兄貴、が? そんな、馬鹿な」 ロブの身体から力が抜け、その場にへたり込む。 「本当だ。 昨日の晩、私との契約が一方的に破棄された。 つまり、殺されたということだな」 くすくすと、少女は笑う。 シルエット越しの細い肩が、小刻みに震えている。 「ということは、殺したのはエミヤシロウということですな」 触れていたサーベルから手を離して、白騎士が言った。 「そういうことだ。 シナリオが少し早まっているようだ。 あれも意外と鼻が利く」 ばしゃり、 弾むような水音を立てて、アルトルージュが湯船から一気に身体を起こした。 すかさず、控えていた侍女達が少女の身体をタオルで包み込む。 聖杯もすぐ目の前だ。 なぁ? 魔術師?」 「仰るとおりでございます。 杯の復元も、まもなくかと」 部屋の隅で、老人の声が響いた。 「聖杯は必ず、姫君の手に」 小さなシルエットが、闇の中から進み出る。 全身を包み込む黒いローブ。 白髪交じりの頭髪。 背は曲がり、頬は扱けているが眼光だけが妙に鋭い。 ぎょろり、と大きな双眼を蠢かせ、老魔術師はここぞとばかりに前へ出た。 「ふふふ。 東欧のような失敗は無い、と? 頼もしい限りだ。 なぁ? フィナ」 「……はい」 部屋の隅で頭を垂れる老魔術士を、白騎士は鋭く睨みつける。 老魔術師は、その視線を知ってかしらずか、爬虫類のような顔を緩ませたまま、ニヤニヤとした笑みを崩さない。 湧き上がる殺意を押し殺し、フィナは彼の姫君の元へと視線を戻した。 「……ん? またこのデザインか? 違うのは無いのか」 仕切りの向こうで、アルトルージュが眉を顰める。 侍女達が戸惑っているのが気配で感じられる。 「し、しかし、フィナ様がこれを、と」 恐る恐るといった様子で、侍女の一人が応えた。 「フィナが? おい、フィナ。 どういうことだ。 これは」 剣呑なアルトルージュの声に、従順な騎士は、顔色一つ変えることなく静かに頭を垂れると、 「それが、姫君に最も似合うお召し物に御座います」 確信の篭った声で、そう断言した。 「またか。 フィナ。 なんだこの無駄な装飾の付いたドレスは。 私はこのフリフリの付いた服が嫌いだと、何度言ったら……」 「何を言っております! 姫君!!」 困ったように眉を顰める主に、フィナは嘆くように額に手を当た。 「何度も申しているではありませんか! その服が、そのドレスこそが、姫君の魅力を! 余すことなく存分に発揮することの出来る、至高の召し物であると!!」 両手を広げ、演説する政治家のように拳を握り締める。 そんな従僕に、アルトルージュは呆れ果てたような眼差しを向けた。 「お前の趣味は聞いておらん。 私は、もっと大人っぽい服が……そうだ、リィゾ。 お前はどう思う?」 その言葉で、闇が動いた。 「!?」 現れたリィゾの姿に、老魔術師の浮かべていたニヤニヤとした嫌らしい笑みが、一瞬で驚きに取って代わる。 無理も無い。 老魔術師は、すぐ隣に立つリィゾの存在に気付いてさえいなかったのだから。 「どうだ? 私には、こんな童女が着るような服より、貴婦人が着るような優雅なドレスが似合うだろう?」 どこか弾むような、期待の篭った声がレースの向こうから響く。 「……」 僅かな沈黙。 主の問いかけに答えるべく、黒騎士は端正な白い顔を姫君の方へと向けると、透き通るような静かな声で答えた。 「我が姫君。 あなたにはどんな服でも、お似合いになるでしょう」 黒騎士の静かな言葉に、アルトルージュの肩が落ちる。 「……お前に聞いた私が愚かだった。 早く着せよ」 不機嫌そうに呟くと、両手を広げ、侍女たちを促す。 着付けは澱みない手つきで行われ、バスタブが片付けられた。 長い髪に櫛を入れ終わると、部屋を隔てていたレースが静かに取り払われる。 そこには、豪奢な漆黒のドレスを身に纏った、黒の姫君が艶かしい笑みを讃えて立っていた。 ゴシック調の可憐なヘッドドレスをゆるやかに揺らして、白魚の様な、たおやかな指先を揺れる華のように、柔らかく差し出す。 「さぁ、始まりだ」 凛、と通る声を響かせ、アルトルージュ・ブリュンスタッドは彼女の従僕達を見渡した。 「戦争だ。 戦争が始まるぞ、我が従僕たちよ。 その身をもって、我が欲望を満たしてくれ」 「おお、」 感極まった様子で、フィナが声を震わせる。 「我らが姫君よ。 愉悦に顔を歪ませ、歓喜の表情を浮かべる者。 媚びるような笑みを貼り付け、恐れに身を震わせる者。 様々な思惑の中、その全てが例外無く、彼らの姫君に服従と忠誠を誓った。 うらびれた古城の窓から覗いた空には、灯のように星達が瞬いている。 月は、無い。 朱色の瞳を輝かせ、ガイアの怪物は来る戦いの予感に静かにその身を震わせた。

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