アイアム マザー。 アイ・アム・マザーのレビュー・感想・評価

【アイ・アム・マザー】”海外映画レビュー”「これは面白い!人類滅亡後にロボットが一人の少女を育てた果てに…」

アイアム マザー

アイ・アム・マザー あらすじ人類の大量絶滅後、再増殖施設内でドロイドの母親に育てられているたった一人の少女。 そこは設備の整った環境で、ドロイドの手厚い世話によって不自由なくスクスクと成長する。 しかし、彼女の前で信じられない出来事が起こり、ずっと信じてきた世界が揺らぎ始める。 ネタバレなし感想 日本の未来の姿かな?先日、厚生労働省が人口動態統計を発表し、2018年に日本で生まれた子どもの数(いわゆる「出生数」)が91万8397人で 過去最低を更新したという、全く嬉しくない事実が明らかになりました。 皮肉なことに核戦争とかなくともこのまま日本人は死に絶えるかもしれません。 でも出生数が低いのは多くの人も納得のはず。 なにせ子育てのしづらい国です。 ベビーカーを電車に持ち込んだだけで厳しい目で見られ、公園では子どもが声をあげて遊ぶことは禁止され、保育士の給料は低く、ジェンダーへの差別や偏見も平然とまかり通っているわけですから。 そんな日本社会の未来の姿を予見するような映画…と言ったらさすがに言い過ぎですが、思わず重ねたくなる世界観設定のある作品が本作 『アイ・アム・マザー』です。 舞台はどうやら人類はほぼ絶滅してしまったらしい地球。 謎の閉鎖的施設でロボット(ドロイド)に育てられるひとりの人間の少女の物語。 以上です。 うん、これ以上は言えない。 はい、お察しととおり、 ネタバレ厳禁なタイプのストーリーです。 困るんだよなぁ、こういうの。 ネタバレなしで感想とか語れないですよ…。 世界観や物語的には、 『10 クローバーフィールド・レーン』と『エクス・マキナ』を掛け合わせたような作品だと言えば、イメージがつきやすいでしょうか(もちろんオチは同じではないですよ)。 要するに「ここはどこ?」「あなたは信頼できるの?」系のサスペンス・スリラーが見どころです。 映画ではないですが、 「Portal」というゲームと非常に通じるものがあり、作中でもオマージュ的な遊びもあったり、明らかに制作陣が意図していることを匂わせています。 具体的にどこが「Portal」に似ているかを語りだすとガッツリとネタバレになるので言えないですが…。 まあ、タイトルが『アイ・アム・マザー』ですから、母や子育てがキーワードになるのは想像がつくと思いますが…。 本作は、優れた脚本を選出する「ブラックリスト」に選ばれたひとつとのことで、ユニークなシナリオであることはじゅうぶん保証しましょう。 サンダンス映画祭で上映され、批評家評価も上々。 今後に期待したい才能の登場でしょうか。 日本ではNetflixオリジナルで配信中。 気軽に観れる映画なのでぜひどうぞ。 テロップが表示されます。 場所は「再増殖施設(UNU-HWK-Repopulation Facility)」なるところ。 絶滅からの日数「1」。 施設内ヒト胎児「63000」。 ヒト居住者数「0」。 一体の人型二足歩行ドロイドが起動し、いくつもの保存された「胚」の中からメスのヒトの胚を取り上げ、人工子宮のような特殊な機械の中に入れ、まるで電子レンジで食べ物を温めるのを待つかのように、待機。 しばらくすると胎児が成長。 無事、産声をあげて産まれ、その赤ん坊を優しく抱くのでした。 そこから少しずつ成長する少女と親であるドロイドの心温まるやりとりが、 『ダンボ』の挿入歌「Baby mine」とともに、しっとり描かれます。 「いつか大家族になる」…そう言葉をかけるドロイド。 そしてまたテロップ。 ヒト居住者数「1」。 ティーンの少女がベッドから目覚めます。 先ほどの続きのように少し大人に成長した少女とドロイドの交流がまた描かれるわけですが、 細かく観ている方はもうこの時点で「あれ?」と違和感に気づくはずです。 絶滅からの日数が 13867日…これは 約38年です。 冒頭で赤ん坊が産まれたときは、絶滅からの日数が1日と表示されていました。 つまり、38年近くは経過しているはず。 でも今、画面に映っているのは明らかにティーンの年齢に見える少女。 どういうこと? この謎は映画のラストのラストで明かされるわけですが、結構この序盤10分以内でいろいろな核心に迫る伏線のセリフ(「母も学習が必要よ」など)があり、このSF映画、侮れません。 母と女、どっちを信じるとりあえずそれは置いておいて、平穏な日常を施設内で過ごす少女とドロイド。 二人はそれぞれ 「娘(Daughter)」と 「母(Mother)」と呼ばれており、固有の名前がないようです(まあ、二人しかいないので困らないのでしょうけど)。 その日常がある訪問者によって揺らいでいきます。 エアロック周辺でネズミを発見し、気になった少女が夜中に施設外へとつながるエアロックに近づくと物音と声。 外は汚染されて人などいないはず。 でも明らかに「助けて」と言っている。 そして扉を開けると大人の女性がひとり入ってきて、怪我をしているので治療させてくれと求めてくる。 本作はこのスリルの見せ方が上手いですね。 しょうがないので少女はひとり夜中にこっそり2つの弾丸を比較すると、弾は異なる形で…。 しかも追い打ちをかけるようなショッキングな事実が。 ドロイドの腕パーツを利用して胚保存場所のロックを解除して確認すると 他の胎児も使われた痕跡があり、「APX02:失敗」とのデータも発見。 自分は「APX03」と番号付けされていることを思いだし、最悪の事態を頭によぎらせながら、焼却灰を探ると中から 人の骨が…。 困惑、恐怖、絶望。 パニックになる少女。 私が生まれる以前にもヒトを育てていたのか。 そして死んでいるのか。 緊迫した状況になり、ドロイドの攻撃的な対応から逃げるようにひとまず施設から脱出する少女と大人の女。 しかし、決断の時が迫っていたのでした。 外を出ると、初めての大地の感覚に驚いていると、上空を飛ぶ飛行機のような存在。 なんと大規模なコーン畑の生産を展開しているようで、一体何が何やら。 そこで聞かされる残酷な話。 少女は自分の意思で施設に戻ることに決めて、ついに現実に直面するのですが…。 結論:母になるのは大変『アイ・アム・マザー』は 2つのオチがあります。 過去に子どもを殺したらしいことをほぼ告白したも同然のドロイドに対し、銃を向ける少女。 それに対して熟考した後、何かに納得したように「さようなら、娘」と言って自らの急所に銃口を向けさせ、撃たれるドロイド。 この一つ目のオチを見るだけだと、恐怖のドロイドに支配される世界からの決別のような、人間が真の意味で立ち上がるラストに見えます。 一方でこの後にもうひとつオチが待っています。 「母を覚えている?」「なぜあなただけが生き延びてきたのか」と意味深な言葉をかけ、ここで役目は終わりだと言わんばかりの幕引き。 このシーンを見ると、前述したテロップの時間の矛盾は説明されます。 そもそも序盤に少女は 倫理的な判断を問う臓器移植問題(1人を犠牲に5人救うか、5人を犠牲に1人を救うか)の講義を受けていました。 そして、終盤でまさに倫理的な判断を迫られるわけです。 これは「試験」だったのか。 では何のための試験か。 それはもちろん「母になる」ため。 SF映画の面白いところは、極端にフィクショナルな世界観設定や物語を通して、私たちの身の回りに当たり前にある概念などの意味や価値を根源的に問い直して、考えさせてくれるところにあると私は思っています。 ドロイドは「母も学習が必要」だと序盤で語っています。 世の中には実際にたくさんの母親の方々がいますが、たぶんみんな悪戦苦闘しているはずです。 場合によっては失敗することもあります。 最悪の場合、ネグレクトなど事件化することだってあります。 ちなみに本作はオーストラリア映画なのですが、ドロイドの出来が非常に良いですよね。 絶妙に感情の切れ端を感じさせるような動きとかもいいですし、あの緊急事態発生時にいきなりそれまでと異なる機敏さでダンダンダンと走るのがまたギョッとします。 このドロイド、実物が作られており、撮影ではSFXとして活かされています。 このドロイド製作を担当しているのが 「Weta Workshop」というSFXでおなじみのニュージーランドの会社。 これまで『ブレードランナー2049』や『アリータ バトル・エンジェル』のSFXも手がけている超有名どころです。 同じく「Weta Digital」というVFXを手がけるこれまた有名企業もあり、こちらはアメコミ映画などを手がけています。 なお社名の「weta」というのはニュージーランド固有のカマドウマみたいな昆虫のことで、社のロゴにもなっています(画像検索する際は虫嫌いの人はやめたほうがいいですよ)。 ともあれ、近くに優れた会社があると映画のクオリティも上がるので良いものですね。 日本全国の母親の皆さん。 あまり悩みすぎずに母親業をしてくださいね。 ドロイドだって悩むみたいですから。

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アイ・アム・マザー : 作品情報

アイアム マザー

アイ・アム・マザー あらすじ人類の大量絶滅後、再増殖施設内でドロイドの母親に育てられているたった一人の少女。 そこは設備の整った環境で、ドロイドの手厚い世話によって不自由なくスクスクと成長する。 しかし、彼女の前で信じられない出来事が起こり、ずっと信じてきた世界が揺らぎ始める。 ネタバレなし感想 日本の未来の姿かな?先日、厚生労働省が人口動態統計を発表し、2018年に日本で生まれた子どもの数(いわゆる「出生数」)が91万8397人で 過去最低を更新したという、全く嬉しくない事実が明らかになりました。 皮肉なことに核戦争とかなくともこのまま日本人は死に絶えるかもしれません。 でも出生数が低いのは多くの人も納得のはず。 なにせ子育てのしづらい国です。 ベビーカーを電車に持ち込んだだけで厳しい目で見られ、公園では子どもが声をあげて遊ぶことは禁止され、保育士の給料は低く、ジェンダーへの差別や偏見も平然とまかり通っているわけですから。 そんな日本社会の未来の姿を予見するような映画…と言ったらさすがに言い過ぎですが、思わず重ねたくなる世界観設定のある作品が本作 『アイ・アム・マザー』です。 舞台はどうやら人類はほぼ絶滅してしまったらしい地球。 謎の閉鎖的施設でロボット(ドロイド)に育てられるひとりの人間の少女の物語。 以上です。 うん、これ以上は言えない。 はい、お察しととおり、 ネタバレ厳禁なタイプのストーリーです。 困るんだよなぁ、こういうの。 ネタバレなしで感想とか語れないですよ…。 世界観や物語的には、 『10 クローバーフィールド・レーン』と『エクス・マキナ』を掛け合わせたような作品だと言えば、イメージがつきやすいでしょうか(もちろんオチは同じではないですよ)。 要するに「ここはどこ?」「あなたは信頼できるの?」系のサスペンス・スリラーが見どころです。 映画ではないですが、 「Portal」というゲームと非常に通じるものがあり、作中でもオマージュ的な遊びもあったり、明らかに制作陣が意図していることを匂わせています。 具体的にどこが「Portal」に似ているかを語りだすとガッツリとネタバレになるので言えないですが…。 まあ、タイトルが『アイ・アム・マザー』ですから、母や子育てがキーワードになるのは想像がつくと思いますが…。 本作は、優れた脚本を選出する「ブラックリスト」に選ばれたひとつとのことで、ユニークなシナリオであることはじゅうぶん保証しましょう。 サンダンス映画祭で上映され、批評家評価も上々。 今後に期待したい才能の登場でしょうか。 日本ではNetflixオリジナルで配信中。 気軽に観れる映画なのでぜひどうぞ。 テロップが表示されます。 場所は「再増殖施設(UNU-HWK-Repopulation Facility)」なるところ。 絶滅からの日数「1」。 施設内ヒト胎児「63000」。 ヒト居住者数「0」。 一体の人型二足歩行ドロイドが起動し、いくつもの保存された「胚」の中からメスのヒトの胚を取り上げ、人工子宮のような特殊な機械の中に入れ、まるで電子レンジで食べ物を温めるのを待つかのように、待機。 しばらくすると胎児が成長。 無事、産声をあげて産まれ、その赤ん坊を優しく抱くのでした。 そこから少しずつ成長する少女と親であるドロイドの心温まるやりとりが、 『ダンボ』の挿入歌「Baby mine」とともに、しっとり描かれます。 「いつか大家族になる」…そう言葉をかけるドロイド。 そしてまたテロップ。 ヒト居住者数「1」。 ティーンの少女がベッドから目覚めます。 先ほどの続きのように少し大人に成長した少女とドロイドの交流がまた描かれるわけですが、 細かく観ている方はもうこの時点で「あれ?」と違和感に気づくはずです。 絶滅からの日数が 13867日…これは 約38年です。 冒頭で赤ん坊が産まれたときは、絶滅からの日数が1日と表示されていました。 つまり、38年近くは経過しているはず。 でも今、画面に映っているのは明らかにティーンの年齢に見える少女。 どういうこと? この謎は映画のラストのラストで明かされるわけですが、結構この序盤10分以内でいろいろな核心に迫る伏線のセリフ(「母も学習が必要よ」など)があり、このSF映画、侮れません。 母と女、どっちを信じるとりあえずそれは置いておいて、平穏な日常を施設内で過ごす少女とドロイド。 二人はそれぞれ 「娘(Daughter)」と 「母(Mother)」と呼ばれており、固有の名前がないようです(まあ、二人しかいないので困らないのでしょうけど)。 その日常がある訪問者によって揺らいでいきます。 エアロック周辺でネズミを発見し、気になった少女が夜中に施設外へとつながるエアロックに近づくと物音と声。 外は汚染されて人などいないはず。 でも明らかに「助けて」と言っている。 そして扉を開けると大人の女性がひとり入ってきて、怪我をしているので治療させてくれと求めてくる。 本作はこのスリルの見せ方が上手いですね。 しょうがないので少女はひとり夜中にこっそり2つの弾丸を比較すると、弾は異なる形で…。 しかも追い打ちをかけるようなショッキングな事実が。 ドロイドの腕パーツを利用して胚保存場所のロックを解除して確認すると 他の胎児も使われた痕跡があり、「APX02:失敗」とのデータも発見。 自分は「APX03」と番号付けされていることを思いだし、最悪の事態を頭によぎらせながら、焼却灰を探ると中から 人の骨が…。 困惑、恐怖、絶望。 パニックになる少女。 私が生まれる以前にもヒトを育てていたのか。 そして死んでいるのか。 緊迫した状況になり、ドロイドの攻撃的な対応から逃げるようにひとまず施設から脱出する少女と大人の女。 しかし、決断の時が迫っていたのでした。 外を出ると、初めての大地の感覚に驚いていると、上空を飛ぶ飛行機のような存在。 なんと大規模なコーン畑の生産を展開しているようで、一体何が何やら。 そこで聞かされる残酷な話。 少女は自分の意思で施設に戻ることに決めて、ついに現実に直面するのですが…。 結論:母になるのは大変『アイ・アム・マザー』は 2つのオチがあります。 過去に子どもを殺したらしいことをほぼ告白したも同然のドロイドに対し、銃を向ける少女。 それに対して熟考した後、何かに納得したように「さようなら、娘」と言って自らの急所に銃口を向けさせ、撃たれるドロイド。 この一つ目のオチを見るだけだと、恐怖のドロイドに支配される世界からの決別のような、人間が真の意味で立ち上がるラストに見えます。 一方でこの後にもうひとつオチが待っています。 「母を覚えている?」「なぜあなただけが生き延びてきたのか」と意味深な言葉をかけ、ここで役目は終わりだと言わんばかりの幕引き。 このシーンを見ると、前述したテロップの時間の矛盾は説明されます。 そもそも序盤に少女は 倫理的な判断を問う臓器移植問題(1人を犠牲に5人救うか、5人を犠牲に1人を救うか)の講義を受けていました。 そして、終盤でまさに倫理的な判断を迫られるわけです。 これは「試験」だったのか。 では何のための試験か。 それはもちろん「母になる」ため。 SF映画の面白いところは、極端にフィクショナルな世界観設定や物語を通して、私たちの身の回りに当たり前にある概念などの意味や価値を根源的に問い直して、考えさせてくれるところにあると私は思っています。 ドロイドは「母も学習が必要」だと序盤で語っています。 世の中には実際にたくさんの母親の方々がいますが、たぶんみんな悪戦苦闘しているはずです。 場合によっては失敗することもあります。 最悪の場合、ネグレクトなど事件化することだってあります。 ちなみに本作はオーストラリア映画なのですが、ドロイドの出来が非常に良いですよね。 絶妙に感情の切れ端を感じさせるような動きとかもいいですし、あの緊急事態発生時にいきなりそれまでと異なる機敏さでダンダンダンと走るのがまたギョッとします。 このドロイド、実物が作られており、撮影ではSFXとして活かされています。 このドロイド製作を担当しているのが 「Weta Workshop」というSFXでおなじみのニュージーランドの会社。 これまで『ブレードランナー2049』や『アリータ バトル・エンジェル』のSFXも手がけている超有名どころです。 同じく「Weta Digital」というVFXを手がけるこれまた有名企業もあり、こちらはアメコミ映画などを手がけています。 なお社名の「weta」というのはニュージーランド固有のカマドウマみたいな昆虫のことで、社のロゴにもなっています(画像検索する際は虫嫌いの人はやめたほうがいいですよ)。 ともあれ、近くに優れた会社があると映画のクオリティも上がるので良いものですね。 日本全国の母親の皆さん。 あまり悩みすぎずに母親業をしてくださいね。 ドロイドだって悩むみたいですから。

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アイ・アム・マザー : 作品情報

アイアム マザー

解説 文明崩壊後の地球を舞台に、ドロイドの母親に育てられた少女の運命を描いたSFドラマ。 人類の絶滅後、無人の再増殖施設内で誕生した少女。 母親代わりのドロイドのもとで高度な教育を受けながら健やかに成長した彼女は、外の世界は汚染されていると教えられ、施設から出ることを固く禁じられていた。 ある日、施設の外から助けを求める声が聞こえてくる。 少女が慌ててエアロックを開けると、負傷した女性が倒れ込んでくる。 その女性との出会いをきっかけに、少女がこれまで信じてきた世界が揺らぎ始める。 負傷した女性役に「ミリオンダラー・ベイビー」のヒラリー・スワンク。 「ピーターラビット」のローズ・バーンが母ドロイドの声を演じる。 Netflixで2019年6月7日から配信。 2019年製作/113分/オーストリア 原題:I Am Mother スタッフ・キャスト.

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