意味 記憶 エピソード 記憶。 手続き記憶とは何か・記憶の種類|意味記憶/エピソード記憶

記憶を司る海馬。情動を司る扁桃体も記憶に関与

意味 記憶 エピソード 記憶

エピソード記憶とは、「個人が経験した出来事に関する記憶」で、例えば、昨日の夕食をどこで誰と何を食べたかというような記憶に相当する。 エピソード記憶は、その出来事の内容 「何」を経験したか に加えて、出来事を経験したときのさまざまな付随情報(周囲の環境すなわち時間・空間的文脈、あるいはそのときの自己の身体的・心理的状態など)と共に記憶されていることが重要な特徴である。 臨床的枠組みにおいて、「記憶」という用語はエピソード記憶を指して用いられることが多く、記憶障害という場合は、通常エピソード記憶の障害を指している。 長期記憶の内容による区分の中での位置づけ 一般的にの内容による区分として、 とも呼ばれる と とも呼ばれる があり、エピソード記憶はとともに陳述記憶に分類される。 エピソード記憶と意味記憶の大きな違いは、前者が単一の経験により成立し経験した文脈との連合が保たれているのに対し、後者は通常同じような経験の繰り返しにより形成され経験した文脈情報との連合が消失することにある。 エピソード記憶の記銘と想起 個人が経験したある出来事に関する記憶表象は、ある一定の時間の範囲の中で、局所的な要素(群)の、周囲の環境についての記憶痕跡、それらの間の連合に関する記憶痕跡から形成される。 局所的な要素(群)は、徐々に変化する情景(を含む生物、無生物、それらの位置関係など)の連続物として、さまざまな様式をとおして経験される。 さらに局所的な要素(群)からの感覚情報の多くは個人の意味記憶を介して自動的に解釈される場合もあるだろう。 したがって、局所的な要素(群)に関する記憶痕跡はさまざまな異なる種類の情報を含む(視覚・聴覚などの感覚情報、自己と外界対象との空間的情報、自動的に解釈された意味情報など)。 さらに、出来事を経験している自己の身体的・心理的状態も記銘されるであろう。 周囲の環境に関する記憶痕跡はこれらの局所的な要素(群)の記憶痕跡と連合し、まとまりのある出来事に関する記憶表象を形成するのに必要となる(前述のように、文脈情報の想起はエピソード記憶の想起の最も重要な特徴である)。 エピソード記憶のは、想起手がかりと貯蔵された記憶痕跡との相互作用からなる。 この過程をとおして、局所的な要素(群)と周囲の環境についての記憶痕跡が再連合(心理的再構成)を起こし、まとまりのある出来事として意識上に想起される。 エピソード記憶がよく想起されるかどうかは、記銘時の局所的な要素(群)と周囲の環境についての記憶痕跡の連合の強度(あるいは連合の多さ)に依存するだろう (例:処理レベルの深さ、経験した時の情動)。 また、記銘時の認知過程がどの程度想起時の認知過程において繰り返されるかによる (例:文脈依存記憶、状態依存記憶)。 神経基盤 エピソード記憶の神経基盤についてはの報告 以降、多くの症例研究がなされ、 と がエピソード記憶に重要な領域であることが確立された。 エピソード記憶のみが障害され、他の記憶 意味記憶、、など や高次脳機能に障害がない患者はと呼ばれる。 健忘症候群の病巣としては、内側側頭葉の他に脳 および 、などが報告されてきた。 それ以外にも、 の損傷でも健忘を呈した症例が報告されている。 患者を対象とした研究から、エピソード記憶の記銘および想起過程の両方で、内側側頭葉および間脳の関与が示唆されており、が想起過程に関与することが報告されている。 脳機能イメージング研究においても内側側頭葉がエピソード記憶の記銘および想起過程の両方に関与することが報告されており、基底部が想起過程に関与することが報告されている。 ( 編集部コメント:この文章と前の段落に若干の重複が認められます。 ) の損傷では典型的な健忘症候群(重篤なエピソード記憶の選択的障害)は生じない。 ただし、エピソード記憶とまったく関連がないわけではなく、前頭前野の損傷後には、記銘時の方略適応、想起時の適切な探索のガイド、想起された局所的な要素(群)を適切な周囲の環境についての記憶痕跡への結び付けなどの方略的側面が障害される。 具体的には、再認に比べて不釣り合いな再生の障害、項目の時間的順序の記憶障害、メタ記憶障害、などが報告されている。 また、においても作業記憶やのみならず、エピソード記憶を含むさまざまな課題条件のもとで前頭前野の活動がみられるが、どのような心理過程と関連した活動なのかを特定するのは困難な場合も多い。 関連項目• 参考文献• 1996. Structure and function of declarative and nondeclarative memory systems. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 93 24 , 13515-22. [] [] [] []• Tulving E. Episodic and semantic memory. In: Tulving E, Donaldson W, editors. Organization of memory. New York, Academic Press 1972. 381-403. Elements of Episodic Memory. New York, Oxford University Press 1983. 2001. Theories of episodic memory. Philosophical transactions of the Royal Society of London. Series B, Biological sciences, 356 1413 , 1395-408. [] [] [] []• Episodic memory. In: Binder MC, Hirokawa N, Windhorst U eds : The Encyclopedia of Neuroscience, vol 1. Springer, NewYork, 2009, pp. 1139-1142. Memory systems of 1999. In: Tulving E, Craik FIM, editors. The Oxford handbook of memory. New York: Oxford University Press; 2000. 627-643. Craik, FIM, Lockhart, RS. Levels of processing: a framework for memory research. Verb. Learn. Verb. Behav. 1972; 11: 671-684. LaBar, K. 2006. Cognitive neuroscience of emotional memory. Nature reviews. Neuroscience, 7 1 , 54-64. [] [] []• Morris DC, Bransford JD, Franks JJ. Levels of processing versus transfer appropriate processing. Journal of Verbal Learning and Verbal Behavior 1977; 16: 519-533. SCOVILLE, W. 1957. Loss of recent memory after bilateral hippocampal lesions. Journal of neurology, neurosurgery, and psychiatry, 20 1 , 11-21. [] [] [] []• Fujii T, Moscovitch M, Nadel L. Memory consolidation, retrograde amnesia, and the temporal lobe. In: Handbook of Neuropsychology, 2nd ed. Vol. Memory and its disorders. eds Boller F, Grafman J, Cermak LS. Elsevier, Amsterdam, 2000, pp. 223-250. Van der Werf, Y. , Scheltens, P. , Lindeboom, J. , Witter, M. , Uylings, H. 2003. Deficits of memory, executive functioning and attention following infarction in the thalamus; a study of 22 cases with localised lesions. Neuropsychologia, 41 10 , 1330-44. [] [] []• Fujii T. The basal forebrain and episodic memory. In: Handbook of Behavioral Neuroscience, Vol. Handbook of Episodic Memory. eds Dere E, Easton A, Nadel L, Huston JP. Elsevier, The Netherlands, 2008, pp. 343-362. SWEET, W. , TALLAND, G. 1959. Loss of recent memory following section of fornix. Transactions of the American Neurological Association, 84, 76-82. [] []• Valenstein, E. , Bowers, D. , Verfaellie, M. , Heilman, K. , Day, A. 1987. Retrosplenial amnesia. Brain : a journal of neurology, 110 Pt 6 , 1631-46. [] [] []• Moscovitch M, Winocur G. The frontal cortex and working with memory. In: Stuss DT, Knight RT, editors. Principle of Frontal Lobe Function. Oxford, Oxford University Press; 2002. 188-209. Cabeza, R. 2000. Imaging cognition II: An empirical review of 275 PET and fMRI studies. Journal of cognitive neuroscience, 12 1 , 1-47. [] [].

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エピソード記憶とは?意味記憶との違いや鍛え方・記憶力UP術を紹介!

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それではまず、今回の話題の中心ともいえる、エピソード記憶について簡単に紹介していきましょう。 記憶には、保持される記憶の期間によってまず三種類に分類されるといわれています。 第一に瞬間的に記憶されるが、すぐに消去されてしまう「即時記憶」、即時記憶よりは長い時間記録されるが、いずれ消えてしまう「短期記憶」、そして長時間の間、頭の中に記録される「長期記憶」があります。 それでは、エピソード記憶とはこれらの記憶の種類のうち、どこに分類されるのでしょうか。 その答えとしては、エピソード記憶の性質を考えるとすぐに理解することができます。 エピソード記憶は思い出などといった個人のエピソードの内容であるともいえるでしょう。 つまり頭の中にずっと残っている性質があるということは容易に想像することが可能です。 したがって記憶の分類上、エピソード記憶は長期記憶に含まれていると考えられています。 エピソード記憶と意味記憶の簡単な特徴に関しては、先述の項のとおりです。 これらの特徴と整理すると、エピソード記憶が持つ特徴が大きく現れています。 私たちが普段の生活、特に学生生活のテスト勉強でよく行う一夜漬けに代表される勉強で覚える内容は、意味記憶に当たります。 特に英単語や文法、歴史の年号、計算式の公式などといったいわゆる暗記するものに関しては意味記憶に該当するといっても良いでしょう。 一方でエピソード記憶については、先ほどのテスト前の勉強を例にとると、記憶した単語や用語などといった学習内容が意味記憶なのに対して、エピソード記憶は、実際にテスト前に勉強したという事実やエピソードそのものであるといえます。 このように長期記憶という同じカテゴリーの中であっても、意味する内容は大きく異なるため、実際のエピソード記憶の単語の使用は気を付けなければなりません。 それでは、どうしてエピソード記憶は意味記憶に比べて強く残ってしまうのでしょうか。 それはエピソード記憶が人の情動、いわゆる感情に結びついて記憶されているからであるといわれてます。 情動とは、人における「うれしい」や「かなしい」、「楽しい」、「つらい」といった感情の種類であると認識されています。 こういった感情がエピソードと絡むことによって記憶が脳で強化されると考えられています。 例えば、とても嬉しいことあった時には、その時の周りの状態やセリフといったものを詳細に覚えていることが多いです。 また逆に、自分が失敗したエピソードがいつまでもトラウマとして記憶に残ってしまうといった例も挙げられます。 こういった感情に付随した思い出はいつまでも強く残ってしまい、トラウマなどとして引きずってしまい、あまり良いものとして認識されないことがありますが、これをプラスに捉えて活かす方法が考えられています。 勉強にエピソード記憶を生かす エピソード記憶は確かに、良くも悪くも記憶に残りやすい記憶の形式です。 そのため、こういった記憶の種類を勉強の暗記に生かすことも考えられています。 勉強の記憶というと、一般的に意味記憶と考えられており、エピソード記憶とは関係が少ないように考えられます。 しかしながら、大人になるにつれて、意味記憶を丸暗記だけで暗記することは難しくなると考えられいます。 しかしながら、エピソード記憶に関係する機能は大人になっても改善する場合があります。 それは論理的思考です。 エピソード記憶を暗記の生かす例 それでは具体的にどのような方法でエピソード記憶として記憶を定着させることができるのでしょうか。 こちらでは、エピソード記憶を生かした暗記方法の例について紹介してきましょう。 まずは、歴史についての暗記についてです。 学生の場合、多くは年号を丸暗記すること手段がとられます。 しかしながら、こういった暗記方法の場合には、年号と歴史的事件しか覚えることができません。 エピソード記憶を使って覚える、つまり論理的思考をもって暗記する場合には、時系列にそって覚えることが重要です。 英単語を例にすると、単語の構成を暗記するのが良いでしょう。

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> > 記憶を司る海馬。 情動を司る扁桃体も記憶に関与 記憶を司る海馬 情動を司る扁桃体も記憶に関与 忘却は正常な脳の働き……では記憶とは? 記憶の仕組みが科学的に研究されたのは比較的新しく、そのはるか前に忘却についての研究が先行しました。 「人間の脳は忘れるようにできている」 このことを「発見」したのは、19世紀のドイツの実験心理学者 エビングハウスです。 彼は無意味なアルファベットの配列3文字を被験者にたくさん記憶させ、それが忘れられていく時間と量を調べてグラフにしたのです。 エビングハウスの実験によれば、 人は記憶したことを20分後には4割以上忘れ、1日後には7割以上を忘れてしまいます。 つまり、放っておけばその日のうちに大半の記憶が消滅するということです。 では、なぜ人の脳は忘れるようにできているのでしょうか。 それは脳が、生存にかかわる重要な情報を優先して記憶するためです。 もしも、エビングハウスの実験のような無意味な文字の配列や、友人たちとのたわいのない馬鹿話の一語一語、道行くたくさんの見知らぬ人の顔、壁の複雑なしみの形など、見聞きしたあらゆることが忘れられなくなり、日夜、洪水のように頭にあふれ出したら…。 忘却の役割はおのずとわかるでしょう。 忘却が宿命だとすれば、 記憶とは「覚えること」ではなく、「思い出すこと」だと考えるべきでしょう。 短期記憶と長期記憶 心理学では記憶を、短期記憶と長期記憶に分けるのが普通です。 短期記憶は、文章を見て書き写したり、電話番号を聞いて番号をプッシュしたりするときのように、きわめて短い間の記憶のことをいいます。 せいぜい20秒から長くても数分程度しか記憶が持続しないのが短期記憶です。 眼や耳などの感覚器官から入ったほとんどの情報は、覚えようと強く意識しない限り、数秒以内に忘却の彼方へ消えてしまいます。 数分以上の長い記憶は長期記憶といいます。 同じ長期記憶でも、20分後には忘れてしまうものから何年間も覚えているものまであります。 また、一時的に忘れていても、何かのきっかけで思い出すこともあります。 いずれにしても、私たちが記憶力を問題にするときは、この長期記憶のことを指し、必要なときに思い出せることが求められるわけです。 意味記憶とエピソード記憶 長期記憶は、 手続き記憶、 意味記憶、 エピソード記憶、 プライミング記憶の4つに分類されます。 このうち通常、記憶が問題になるのは意味記憶とエピソード記憶です。 まず意味記憶ですが、これは言葉を覚えたり、試験勉強をしたり、本や講演などで知識を吸収したりする記憶のことをいいます。 一般に記憶力の良し悪しを論ずる場合は、この意味記憶を指します。 意味記憶は抽象的な記憶であり、何かを聞かれることによって意識する記憶のことです。 一方、エピソード記憶は知識ではなく、直接体験することによって記憶されることをいいます。 幼少期から現在までのさまざまな思い出(たとえば運動会、遠足、初恋、草野球、アルバイトなど)や、育った家の周り・最寄の駅・学校などの道順と風景、直接かかわった人のイメージなどがエピソード記憶です。 エピソード記憶は3、4歳頃に獲得される能力です。 なお、手続き記憶はスポーツや手芸、工作、楽器など、体で覚える記憶のこと、プライミング記憶は入れ知恵記憶とも呼ばれ、先入観が影響する記憶のことをいいます。 海馬は小さな「記憶の司令塔」 海馬は脳の中では小さな器官で、神経細胞の数は1000億個。 脳全体の1万分の1に過ぎません。 海馬は小さな器官ながら、大脳に入った情報の取捨選択をして、記憶全体をつかさどるきわめて重要な役割を果たしています。。 一昔前の脳科学の本には、「脳細胞は毎日おびただしい数が死滅しており、決して増えることはない」などと述べられていますが、少なくともこの海馬だけは細胞分裂を繰り返して増えることがわかっています。 海馬は、 パソコンでいえば一時的なメモリーの役割を果たします。 そして必要があれば、パソコンを終了する前にデータを保存するのと同じように、海馬もデータを大脳皮質に送って 長期記憶として保存します。 大脳皮質に長期記憶されたメモリーを呼び出すことが、思い出すという作業です。 情動を司る扁桃体の記憶への関与 海馬がどのようにして長期記憶を決定しているのかは、よくわかっていません。 しかし、近年の脳科学の研究で、扁桃体 (へんとうたい)という直径1cm位の丸い形をした器官が海馬と影響し合っていることがわかっています。 扁桃体は大脳皮質の内側にある大脳辺縁系の下のほうに位置しており、 快不快を判断するのが主な役割です。 私たちが見たり、聞いたり、臭いをかいだり、触ったり、味を味わったりしたときに得た感覚情報は、大脳皮質から扁桃体に伝わり、 好き嫌いが判断されます。 異性が好きになるのも、たこ焼きとかペンギンが好きになるのも、この扁桃体の仕業だったのです。 扁桃体は海馬の隣にあり、好き嫌いや快不快の感情を海馬に伝えます。 そのため、心を大きく揺さぶるような出来事は、いつまでも記憶にとどめられています。 記憶は、情緒や感情の働きに影響されていることが、脳の働きの面からも説明できるようになりました。 好奇心を刺激する好きな科目や、大好きな先生の授業の成績がよくなるのも、扁桃体が海馬に影響しているためだといえるでしょう。 逆に、嫌いな先生の受け持つ科目やまったく興味が持てない科目は、放っておくと成績が悪くなります。 経験したことはありませんか? 童話や昔話が覚えられるのも、繰り返し聞かされるからということだけでなく、個性的で生き生きとしたキャラクターや、奇想天外なストーリーが好奇心を刺激し、感情を揺さぶるからでしょう。 なお、扁桃体は情動に深くかかわるだけでなく、 社会性にも関係が深いことがわかってきました。 社会性とは、人の顔を区別したり、表情を読み取るなどの認知能力のことです。 扁桃体が傷つくと孤立するなど、社会生活がうまくいかなくなることが動物実験で確認されています。 それにしても、 好き嫌いなどの情動の働きと社会的な適応能力が、同じ脳の器官でつかさどられているというのは意味深長です。 そして、そこに長期記憶にかかわる海馬が相互に影響し合っているということは、潜在的記憶能力を全開にするうえでヒントになりそうです。 自分の脳の喜ぶことを発見する 勉強やスポーツ、仕事などでは モチベーション(動機付け=早い話が「やる気」)がとても重要視されますが、これも脳科学的には先の扁桃体の役割で説明がつきます。 余談になりますが、「やる気を出せ!」は古臭いスパルタ的な教育の臭いがします。 これを「モチベーションが大切…」と横文字に変えてソフトに表現すれば現代的になりますが、人の内面をコントロールするような印象が漂います。 いずれにしても脳は人から言われて従うよりも、自発的に働くほうがはるかに能力を発揮します。 己の本当の心を知り、脳を喜ばせることこそ、脳力開発の第一歩です。

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