よしとおさま。 四位晴果

よしとおさま! 1巻 四位晴果

よしとおさま

とりあえず布団に寝るようにしろ、と。 そうじゃないと働きっぱなしだ。 サビ丸は渋々頷いてたが、本当にわかってるか不安だ。 先に風呂に入り、布団のうえに寝転がってた。 身体はぽかぽかとあたたかい。 薄い布団でも寝転がるとそれなりに心地好い。 かたん、と音がしたほうを見るとサビ丸が風呂から上がったようだ。 髪からぽたぽたと水滴が垂れてる。 なにやってんだ。 早く拭かないと風邪をひく。 風邪をひかれたら、また面倒だ。 あいつは風邪をひいていようが、意地でもいろいろやってくるだろう。 髪をかわかせ、と言おうとしたら、突っ立ってたサビ丸が俺のほうに来た。 「……サビ丸?」 「……」 電気が遮られ、視界が薄暗くなった。 目の前にはサビ丸の顔がある。 俺に跨がり、じいっと見つめてくる。 なんだ、サビ丸のやつ。 風呂上がりだからか、顔が赤いのはわかる。 けど、なにも言わずに近寄ってくるなんて。 俺は起き上がり、ずるずると後ろに下がる。 なんだ、いきなり。 布団は用意してあるのにこっち側がよかったのか? サビ丸は俺を追いかけてきた。 壁際まで追い詰めると、そっと頬に触れてくる。 優しく包み込むように触ってきて、どくっと胸が鳴った。 自分でも顔が赤いことがわかるほど熱を帯びてるのを感じた。 熱のこもった視線とぶつかる。 サビ丸のこんな目、はじめて見た。 「……なっ、あ……」 「よしとおさま」 「……サビ……っ……」 甘ったるい声に、身体がわなないた。 どっどっとうるさいくらいに鼓動が耳に届く。 サビ丸の端正な顔が近づいてくる。 それを目の前で見てる俺の瞳は潤みつつあった。 じわりと目頭が熱くなってるのがわかる。 混乱していた俺はどうしたらいいかわからなくて。 サビ丸の頬にそっと触れた。 頬はあったかい。 幽霊とか幻とか、そういった類のものじゃないんだな。 サビ丸がごくりと喉を鳴らす。 徐々に顔を近づけてきた。 近くで見るとまつげが長い。 キリッとしててやっぱりイケメンだ。 女子はこういうのが好みなんだよな。 サビ丸……もしかして、お前は。 サビ丸の頬を思いきり引っ張った。 「……いっ!」 「……夢、じゃなかった……」 夢かと思ったけど、違ったみたいだ。 サビ丸は痛みに頬をさすってるから、これは現実か……。 と、思ったところで今の状態にはっとした。 サビ丸との距離、およそ十五センチ。 目の前にある端整な顔。 あまりの近さにかあっと顔が熱くなる。 どうしようもない思いに身体がわなわなと震える。 男同士でこんな状況はおかしい。 なにしてんだ俺は……! サビ丸は俺から顔を離す。 痛みのあまり、目に涙をにじませてる。 俺に謝罪するわけでもなく、ようやく口を開いたかと思えば、よしとおさま、と名前を呼ぶだけで。 熱を帯びた顔を伏せ、唇を噛んだ。 なんだ、なんなんだよサビ丸。 なにがしたいんだ! 痺れを切らしたらしいサビ丸が、ようやく口を開いた。 可愛いです! とわけのわからない叫び声をあげ、抱き着こうとしてきた。 なかば俺に突っ込んでくるかたちで。 サビ丸のあまりの変貌に俺はぎょっとした。 とっさのことだったけど、身の危険を感じた俺は、それをかわした。 じと、と壁と熱いキスをかわしてるサビ丸を睨む。 がつん、と大きな音がした。 壁と対面してたサビ丸が顔を離したら、痛々しいほどに鼻が赤くなってる。 ばっ、と俺のほうを向くとそれでもなお、熱のこもった視線を送ってくる。 「こっの……この大馬鹿! もう知らないからっ」 そんな視線にどうしたらいいのかわからず。 脱兎のごとく、部屋から出ていった。 「よっ、善透さま! お待ちください!」 このあと、夜の街を駆け回る俺とサビ丸がいて。 ……つぎの日は学校だというのに、なにをしてたんだか。 ただ、ひたすら逃げることに気がいっていたんだ。 『愛あればすなわち、』 問題解決……って、そんなわけありませんでした。 End. 2012. co4nine1]].

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漫画「よしとおさま!」を全巻無料で読む方法|マイコミック|漫画のネタバレや無料で読む方法を紹介!

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とりあえず布団に寝るようにしろ、と。 そうじゃないと働きっぱなしだ。 サビ丸は渋々頷いてたが、本当にわかってるか不安だ。 先に風呂に入り、布団のうえに寝転がってた。 身体はぽかぽかとあたたかい。 薄い布団でも寝転がるとそれなりに心地好い。 かたん、と音がしたほうを見るとサビ丸が風呂から上がったようだ。 髪からぽたぽたと水滴が垂れてる。 なにやってんだ。 早く拭かないと風邪をひく。 風邪をひかれたら、また面倒だ。 あいつは風邪をひいていようが、意地でもいろいろやってくるだろう。 髪をかわかせ、と言おうとしたら、突っ立ってたサビ丸が俺のほうに来た。 「……サビ丸?」 「……」 電気が遮られ、視界が薄暗くなった。 目の前にはサビ丸の顔がある。 俺に跨がり、じいっと見つめてくる。 なんだ、サビ丸のやつ。 風呂上がりだからか、顔が赤いのはわかる。 けど、なにも言わずに近寄ってくるなんて。 俺は起き上がり、ずるずると後ろに下がる。 なんだ、いきなり。 布団は用意してあるのにこっち側がよかったのか? サビ丸は俺を追いかけてきた。 壁際まで追い詰めると、そっと頬に触れてくる。 優しく包み込むように触ってきて、どくっと胸が鳴った。 自分でも顔が赤いことがわかるほど熱を帯びてるのを感じた。 熱のこもった視線とぶつかる。 サビ丸のこんな目、はじめて見た。 「……なっ、あ……」 「よしとおさま」 「……サビ……っ……」 甘ったるい声に、身体がわなないた。 どっどっとうるさいくらいに鼓動が耳に届く。 サビ丸の端正な顔が近づいてくる。 それを目の前で見てる俺の瞳は潤みつつあった。 じわりと目頭が熱くなってるのがわかる。 混乱していた俺はどうしたらいいかわからなくて。 サビ丸の頬にそっと触れた。 頬はあったかい。 幽霊とか幻とか、そういった類のものじゃないんだな。 サビ丸がごくりと喉を鳴らす。 徐々に顔を近づけてきた。 近くで見るとまつげが長い。 キリッとしててやっぱりイケメンだ。 女子はこういうのが好みなんだよな。 サビ丸……もしかして、お前は。 サビ丸の頬を思いきり引っ張った。 「……いっ!」 「……夢、じゃなかった……」 夢かと思ったけど、違ったみたいだ。 サビ丸は痛みに頬をさすってるから、これは現実か……。 と、思ったところで今の状態にはっとした。 サビ丸との距離、およそ十五センチ。 目の前にある端整な顔。 あまりの近さにかあっと顔が熱くなる。 どうしようもない思いに身体がわなわなと震える。 男同士でこんな状況はおかしい。 なにしてんだ俺は……! サビ丸は俺から顔を離す。 痛みのあまり、目に涙をにじませてる。 俺に謝罪するわけでもなく、ようやく口を開いたかと思えば、よしとおさま、と名前を呼ぶだけで。 熱を帯びた顔を伏せ、唇を噛んだ。 なんだ、なんなんだよサビ丸。 なにがしたいんだ! 痺れを切らしたらしいサビ丸が、ようやく口を開いた。 可愛いです! とわけのわからない叫び声をあげ、抱き着こうとしてきた。 なかば俺に突っ込んでくるかたちで。 サビ丸のあまりの変貌に俺はぎょっとした。 とっさのことだったけど、身の危険を感じた俺は、それをかわした。 じと、と壁と熱いキスをかわしてるサビ丸を睨む。 がつん、と大きな音がした。 壁と対面してたサビ丸が顔を離したら、痛々しいほどに鼻が赤くなってる。 ばっ、と俺のほうを向くとそれでもなお、熱のこもった視線を送ってくる。 「こっの……この大馬鹿! もう知らないからっ」 そんな視線にどうしたらいいのかわからず。 脱兎のごとく、部屋から出ていった。 「よっ、善透さま! お待ちください!」 このあと、夜の街を駆け回る俺とサビ丸がいて。 ……つぎの日は学校だというのに、なにをしてたんだか。 ただ、ひたすら逃げることに気がいっていたんだ。 『愛あればすなわち、』 問題解決……って、そんなわけありませんでした。 End. 2012. co4nine1]].

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