まったり さん 小説。 まったりジノさん【短編….集(?)】

小説(鹿おじさん)

まったり さん 小説

*・*・* ユリアネス視点 「……あんな簡易的な封印でよかったの?」 「ま、注意してくれているんだし? あれくらいの緩さでもいいと思うよ?」 狭間で、今日もお昼寝しているシアを浮かせて、私と夫のフィルドは水鏡を通じて、 王女 ( チャロナ )達を見ていたりした。 時々、姫に真実を告げようとする者には、封印と注意をしたり。 他にも口止めの魔法を施したり。 粗は多いが、夫が言うにはこれくらいでいいと。 完全に封印させたら、つまらないと言うのだ。 「カイルキアの両親にも知れてしまってるけど……」 「けど、言いふらす子達じゃないだろう?」 「まあ、そうだけど……」 言ってることと行動がちぐはぐだらけで、少しめちゃくちゃではあるが。 枯渇の悪食による、食の復興についてこれでも考えているのだから、我が夫ながら不思議ではあるところだ。 「けど、レクターとかも考えるね? チャロナへの一番のプレゼントをカイルキアにするだなんて!」 「いいのではなくて? 成人の儀もだけれど、誕生日には一番の贈り物になるわ」 「ふふ。 なら国どころか世界中を挙げて、盛大にお祝いしてやろうじゃないか?」 「封印の謝罪として?」 「それもだけど。 お馬鹿な強固派の連中に利用させられないためさ?」 それくらいの余興は、あのおばかさん達に目にもの見せてあげなくては。 最近、セルディアス内での捕縛もうまく助けられているし、根深い馬鹿な子にもそろそろ手を伸ばす事ができそうだ。 だが、もしかしたら姫のことについて知っている輩もいるかもしれない。 他国の王妃に推薦すべきだと、画策されているかもしれないのだ。 それは絶対止めなくては。 「ねえ、フィルド」 「なーに?」 「そのおばかさん。 特におばかな子達をあの城から引きずり落とす方法は、シュライゼン達に任せるの?」 「あー。 それでもいいけど」 フィルドが水鏡を軽く撫でて、見せる映像を変えると。 見るからに醜い男が、ハンカチの端を噛みながらぶつぶつと何かを言っているところだった。 「こりゃ無理だ。 ユリアネス、君はシュライゼンとカイザークを誘導させるようにして連れてきて。 俺はこのおバカがいけないことを言い出さないように見張っておくよ」 「わかったわ」 時折、性格の悪い言葉遣いをしかける我が夫ではあるが、この水鏡に映る男は夫の癇に障ったらしいわ。 私だって嫌だけど……あとどれくらいでいるのかしら。 セルディアス王家に根付いた、 毒 ( おばかさん )達は。 ひとまず、別の水鏡を取り出して、私はシュライゼンとカイザークを探すことにしたのだった。

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なんじゃもんじゃ

まったり さん 小説

コンコン 小さな可愛らしいノック音が2回響く。 「お姉ちゃん入るね〜」 部屋からは甘くて澄んだ金木犀の香りがした。 優衣はベッドに腰掛ける由紀に向かっていって隣に座った。 「いらっしゃい優衣。 あら、お風呂入ってたの?」 「うん!結構長めに入ってたから少しのぼせちゃった」 「ふふ、ほら髪がまだ乾いてないよ、ちゃんとドライヤーしなきゃ髪がパサパサになっちゃう」 真っ直ぐでやわらかな優衣の髪を梳きながらドライヤーの風を根本の方から当てていく。 時折、上気してりんごのように赤らんだ頬をすべすべと擦る。 姉である由紀はこの瞬間がとても心地よかった。 「ん、ふふっ、くすぐったい。 お姉ちゃんの手、すべすべでちょっとひやっとしてて気持ちいいなあ」 「そう?気持ちいい?でも、最近秋らしくなったというか、急に寒くなったよね。 そのおかげで手や足とかが冷えちゃってね。 もうそろそろ手袋が恋しくなりそうな頃だわ」 ドライヤーを隣に置いて優衣の頭を撫でる。 気持ち良さそうに自分にもたれかかる優衣を後ろから抱くような格好になった。 姉妹はいつもこの体勢で今日あった出来事を語り合う。 『それでね、それでね、』と次々に話したがる妹の弾むような声を聞いてるだけでも由紀は幸せになった。 反対に優衣も時々『そこでどうなったの?』『それはとても面白いね』と疑問や感想を逐一伝えてくれる姉の仕草や笑顔が好きでたまらなかった。 二人は小学校で出た給食のこと、高校の友達とした世間話のこと、帰り道に宝物探しをしたこと、部活で上手くいかなかったこと、など色々なことを話した。 すると、話の最中に優衣がもどかしそうに耳の穴を人差し指で掻きだした。 「あら、優衣。 もしかして耳痒いの?」 「うん、なんか…ちょっと奥らへんがむずむずしてて…」 「ちょっと見てもいい?」 そう言うと、由紀はそっと優衣の耳の中を覗いた。 すると、べたっとした耳垢が耳の壁にこびりついていた。 「あーほんとね。 若干耳垢が溜まっちゃってるわね」 「ねぇ、お姉ちゃんは耳かきできる?」 「出来るには出来るけど…あんまりお風呂上がりの時は耳かきってしない方がいいって言われてるから」 「えー、どうしてー?」 「お風呂に入ると手や足がふやけちゃうでしょ?それと同じで耳もふやけちゃうから、耳かきする時に傷つける心配があってあまりおすすめできないの」 「そんなぁ、わたしお姉ちゃんに耳かきしてもらいたかったのに…」 優衣は口を尖らせて足をバタバタとさせた。 「んー……それなら耳が乾くまで耳や耳の周辺のマッサージとかをしてみる?」 「あ!それがいい!してしてー!」 先程までの曇り顔が一気にパッと明るくなった。 期待を抑えきれずに由紀にすぐさまねだるように抱きついてくる。 「ふふふ、だけどあまり腕には期待しないでね、なにせ初めてだもの、こういうの」 「にへへー、お姉ちゃんの初めてがわたしなんだぁ。 」 お姉ちゃんの特別になったような気がしてつい顔が緩んでしまう。 「じゃあ、ちょっと待っててね。 すぐ耳かきの道具持ってくるからね。 」 由紀は自室を出てリビングの方に向かった。 その間優衣は期待を胸に膨らませて姉の到来を待っていた。 ガチャっ…… 部屋に入り耳かきの準備をした由紀はベッドに座り膝枕を作った。 「うん、そうしたら…ほら、ここに頭をのせて」 優衣は由紀を見上げる形で自分の後頭部を差し出された太腿にのせた。 同じボディーソープの匂いと鼻孔をくすぐるような甘い匂いが香った。 思わずそこに頬ずりをする。 「こら、優衣甘えすぎ、ふふ」 「だってすっごく落ち着くんだもん。 しかたなーい」 「はいはい、そうだね、仕方ないねー」 ゆっくりとまた頬や髪を撫でる。 この動作を無限に続けていたくなる気分だった。 いつまでもずっと、この愛しい妹を愛で続けていたい、そう思うほどに。 次に顎。 こめかみ。 本来の目的を忘れて、由紀は優衣の顔中をすべすべと撫で回した。 「もう…ふふふっ、お姉ちゃんくすぐったいよぉ。 ね、お姉ちゃん。 耳はやらないの?」 「うん、じゃあ今からお耳のマッサージしていくね」 優衣は心待ちにした様子で目をゆっくりと閉じた。 指を這わせてそっと両耳の裏側をさするとピクッと一瞬優衣が震えた。 続いて耳の溝を人差し指で細かくなぞり、それと一緒に親指で挟み込むように裏側を揉んでいく。 すりすり…くりくり…すりすり…くりくり… ひたすらに同じ動作が繰り返される。 単調であるが、その全てが新鮮な感触として染み込んでいく。 柔らかくてしっとりした指の感触が擦り込まれていく度自然と耳がそれに呼応して熱を発する。 「ん……んっ………ふぅ……」 「ふぅ……どう……?気持ちいい?ちょっと強めにしてみるね」 「うん…お願い…」 すりすり…ぐりぐり…すりすり…ぐりぐり… 今度は内側から耳が圧迫される感触に変わった。 じわーっと広がるような温かさが伝わってくる。 溝に合わせて這う指は、ゆったりと丁度良い刺激と安らぎをもたらしてくれた。 時折、優衣は脚をもじもじさせて快感に耐えるように身をよじっていた。 すると、 「ふーーっ」 「ひゃあっ!?やっ、何!?」 「ふふっ、あんまりにも反応が可愛いからお耳吹いちゃった」 「いきなりはやめてよぉ…びっくりした……」 「ごめんごめん、じゃあこれからはちゃんと言ってからするから」 「う、うん…」 「じゃあ続けるねー…」 マッサージが再開すると、今度は耳たぶと耳の縁が揉まれた。 先程とは少し変わって、今度は耳を交互に一定のリズムで揉まれる。 くにくに、ぎゅっぎゅ、くにくに、ぎゅっぎゅ 強めに揉まれていても痛くなく丁度よかった。 心地良い波が幾重も押し寄せてきて、瞼を開けるのがとても億劫になってしまいそうになる。 「私ね、よくこの…耳たぶの所の"眼"って呼ばれるツボは自分で押してるんだよねー」 「ん…それってどんなツボ?」 「えと、疲れ目…の改善だったかな。 確かにそこをぐりぐりーってすると、何だか効いてるような感じがするんだよね」 「あ、でも優衣は疲れ目は無いと思うから、効能よりは気持ちよさを味わうぐらいでいいと思うけどね」 「ん〜…よくわかんないけど……ここ気持ちいね…。 お姉ちゃんマッサージじょうずー」 「ふふ、ありがとうございます。 どうぞご贔屓にしてください、お客様」 「わぁ、店員さんみたい。 わたしお客様?」 「そうよ、今優衣はお客様。 お姉ちゃんだけのお客様なの」 「そうなんだぁ……にひひ、嬉しい」 「それならよかった。 じゃあ、またやってくね」 優衣の小さな耳が手のひらですっぽりと包まれていく。 音が遮断され、静かな息の音と手のひらから漏れ出る僅かな音が鼓膜に届く。 耳を塞がれているだけなのに、深い没入感と安心感がそこにはあった。 「ふぁ………んー……きもち…ぃ……」 ゆっくり、ゆっくりと暖かくて柔らかな時間が過ぎていく。 しばらく耳を塞いだ後、眠たそうな優衣の身体を横に倒して、近くに置いておいた耳かき棒と綿棒、ティッシュを取る。 竹製の後ろに白い梵天が付いたシンプルな耳かき棒だった。 「ん……んぅ…?お姉ちゃん…もう…おわり…?」 「マッサージはね。 じゃあ、まず右の耳からやりましょ」 由紀のお腹側に向いて横になる。 さっきよりも甘くてたちこめるような柔軟剤の香りがする。 顔をうずめたくなるのを我慢して今度はきちんとじっとした。 「じゃあ…始めるね……」 そっと耳の縁にゆるく湾曲した先が触れる。 優衣はビクッと肩を少しだけ震わせ目をつぶった。 ツーっ、ツーっと優しく縁をなぞると削られた垢が少し受け皿に溜まった。 溜まった垢をティッシュにのせ、また縁を掻く。 何回も何回もされて、このループから抜け出せなくなってしまいそうだった。 ツーっ…ツツーっ…ツーっ… かり…かり…かりかり…かり… 「じゃあ…耳かきしながらいっしょに囁いてあげるね」 「ほら…かり、かり、かり、かり、かり、かりっ…」 かり…かり…かり…かり…かり… 声と音が混ざっていく。 耳の上で鮮やかな二重奏が繰り広げられる。 丁寧に、丁寧にその調べを弧を描くように奏でていく。 夢心地な気分だった。 縁の垢を取り終わると、いよいよ耳の穴の方に耳かき棒が向かった。 「耳の穴に入れるからリラックスしてね。 いくよー…」 こり…こり…こり…こり…こり…こり… くり…くり…くり…くり…くり…くり… 「あっ……ん………んっ……すごっ…い……んっ…」 内壁にへばり付いた湿り気のある耳垢がズルっと動く感覚がした。 ズっ、ズっと平べったい耳垢が持ち上げられる度に耳の中を快感が蹂躙する。 「うん、気持ちいいね…。 よしよし、力抜いて楽にしてねー…」 耳かきと一緒に頭と肩を優しく撫でられる。 快感によって強張った身体を撫でられることで緊張が解けて、またそこに次の快感が押し寄せてくる。 引いては寄せる波のようにそれは続いた。 「ふぁ………あっ、ん……ふぅ……ふぅー………んんっ……ふーっ……ふーっ……」 優衣の呼吸は次第に荒くなり、言葉を発する力も失って、外と中からの快感にただ耐えるだけとなった。 こりこりこり…ズっ…ズっ…ズルっ、かりかりかり… くりくり…こりこりっ…こりっ…ズルっ、ズルっ、 へばり付いた湯葉のような耳垢は徐々に外界へ運び出され、次々と奥に溜まった耳垢が排出されていく。 「ちょっと湿ってるから、耳垢がくっついていっぱい取れちゃうね。 どう気持ちいい…?」 「ひぁ……うん…きもちひぃ……」 「ふふ、優衣の顔すっごい蕩けちゃってるよ。 あともうちょっとだから、頑張ってね」 残った小さな耳垢を丁寧に耳かきで掬い取る。 最後の耳垢をきれいに取り終え、由紀は綿棒を取り出した。 「じゃあ、綿棒で拭き取りながら細かいの取っていくね」 耳の縁、耳穴の入り口近く、耳穴の中と順々に綿棒で掃除していく。 くるくるくる…すりすりすり…くるくる…すりすり… 綿棒を2,3本取り替えながらしっかりと汚れを落としていく。 使い終わった綿棒にはわずかに水分を含んだ細かいかすが張り付いていた。 「仕上げに、白くてフワフワな梵天を使っていくねー…」 梵天を耳の穴へ侵入させる。 フサフサの毛が小さな穴の中をすっぽりと満たし、細かい塵のようなかすを絡め取っていった。 「ほわぁ……フワフワしてるのすきぃ……」 やがて耳穴から梵天が抜かれると、由紀は優衣の肩をちょんちょんと叩いて身体を起こした。 「はい、じゃあ今度は左耳やるね。 反対側になってね」 「うん、おねがいー…」 右耳と同じ順序で耳かきがされていく。 微睡む視界、溶けるような匂い、由紀の包み込むような体温と柔らかさを感じた。 その解けるような感覚に優衣は瞬きを忘れて意識をゆっくりと落とした。 「あら、優衣?ふふ、じゃあお姉ちゃん…静かに耳かきするね…」 かり…かり…かり…かり… こり…こり…こり…こり… 手前にあった耳垢を集めてから奥を耳かき棒で探る。 すると、反対よりも大きめで押し込まれて固まった耳垢があった。 「あ、もう優衣ったら…痒いからって押し込んだら駄目じゃない」 叱るような口調とは裏腹に由紀は優衣の頭をさらりと撫でる。 すやすやと寝息を立てている姿がまるで小動物のようで愛着が湧いてくる。 由紀は撫でくり回したくなる衝動を押し留めて耳かきを続行した。 ごり…ごり…ごり…ごり… かりかり…ぐりっ…ごりごり… 耳垢を奥から持ち上げていく。 これも壁にべったりとくっついていて取るのが少し難しい。 慎重に耳かき棒を動かし、固まった耳垢を壁から少しずつ剥がす。 くりくり…ぐりぐり…こりこり…ペリッ…ペリ… ぐっ…ぐりっ、ごり…ごり…ごりごり…パリパリっ… 「すぅー……ぅ………ふっ……んっ……すぅー……」 耳垢が徐々に剥がれていくと共に優衣の口から微かな吐息が漏れる。 「優衣って、寝ててもちょっと反応しちゃうのね。 「よし、剥がせた剥がせた。 じゃあ、ゆっくり外に掻き出していくよー…」 ズーっ、ズっ、ズっ…くりくりこりこり…… ズルっ…ズズーっ…かりかり……ズズーっ…ズリュっ ひしゃげてて少し茶色い耳垢が顔を表した。 ティッシュに移して耳の穴を確認すると、それほど大きな耳垢はもう見当たらなかった。 「今のが大物だったのね。 あんなに大きいのが入ってたらそりゃ痒くもなるわ」 大きな耳垢が張り付いていた箇所は少し赤くなっていた。 由紀は次に綿棒を取り出すと、今度は耳用のローションを染み込ませる。 適度に拭き取ってから濡れた綿棒を耳の中へと入れた。 濡れた綿棒がツルツルと耳穴を撫でる。 綿棒のひやっとした感覚で優衣がまたピクピクッと震えるのが見えた。 耳の壁に綿棒を少し押し付けるとじわっとローションが染み出てくる。 耳垢は全てとろとろと洗い流され拭き取られ、耳穴はすっきりとしていた。 ある程度拭き終わって綿棒を抜き、優衣の顔を見るととても幸せそうな顔で寝ていた。 耳かきセットをしまうと優衣の頬をぷにっと押した。 「ふふっ、お耳もきれいになって満足してくれたかな。 また今度も耳かきしてあげたくなっちゃった」 起こすと悪いと思って頭を撫でるだけにして優衣の顔を眺めた。 小動物のようだと思っていたその表情は今は妖精のように感じる。 妖精とは時に人をその愛らしい仕草で翻弄するものであっただろうか。 しかし、この幼き妖精にならばたとえ騙されていたとしても幸せだろう。 由紀はそう思った。 瞳を閉じて瞬くと変わらない妹の幸せな顔がやっぱりそこにある。 このままずっと、変わることのない幸せを、幸福の印を描いていって欲しい、そう願った。 「じゃあね、おやすみ……優衣。 」 声は微睡みの中へと、願いは夢の隙間へと浸透していった。

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まったりジノさん【短編….集(?)】

まったり さん 小説

コンコン 小さな可愛らしいノック音が2回響く。 「お姉ちゃん入るね〜」 部屋からは甘くて澄んだ金木犀の香りがした。 優衣はベッドに腰掛ける由紀に向かっていって隣に座った。 「いらっしゃい優衣。 あら、お風呂入ってたの?」 「うん!結構長めに入ってたから少しのぼせちゃった」 「ふふ、ほら髪がまだ乾いてないよ、ちゃんとドライヤーしなきゃ髪がパサパサになっちゃう」 真っ直ぐでやわらかな優衣の髪を梳きながらドライヤーの風を根本の方から当てていく。 時折、上気してりんごのように赤らんだ頬をすべすべと擦る。 姉である由紀はこの瞬間がとても心地よかった。 「ん、ふふっ、くすぐったい。 お姉ちゃんの手、すべすべでちょっとひやっとしてて気持ちいいなあ」 「そう?気持ちいい?でも、最近秋らしくなったというか、急に寒くなったよね。 そのおかげで手や足とかが冷えちゃってね。 もうそろそろ手袋が恋しくなりそうな頃だわ」 ドライヤーを隣に置いて優衣の頭を撫でる。 気持ち良さそうに自分にもたれかかる優衣を後ろから抱くような格好になった。 姉妹はいつもこの体勢で今日あった出来事を語り合う。 『それでね、それでね、』と次々に話したがる妹の弾むような声を聞いてるだけでも由紀は幸せになった。 反対に優衣も時々『そこでどうなったの?』『それはとても面白いね』と疑問や感想を逐一伝えてくれる姉の仕草や笑顔が好きでたまらなかった。 二人は小学校で出た給食のこと、高校の友達とした世間話のこと、帰り道に宝物探しをしたこと、部活で上手くいかなかったこと、など色々なことを話した。 すると、話の最中に優衣がもどかしそうに耳の穴を人差し指で掻きだした。 「あら、優衣。 もしかして耳痒いの?」 「うん、なんか…ちょっと奥らへんがむずむずしてて…」 「ちょっと見てもいい?」 そう言うと、由紀はそっと優衣の耳の中を覗いた。 すると、べたっとした耳垢が耳の壁にこびりついていた。 「あーほんとね。 若干耳垢が溜まっちゃってるわね」 「ねぇ、お姉ちゃんは耳かきできる?」 「出来るには出来るけど…あんまりお風呂上がりの時は耳かきってしない方がいいって言われてるから」 「えー、どうしてー?」 「お風呂に入ると手や足がふやけちゃうでしょ?それと同じで耳もふやけちゃうから、耳かきする時に傷つける心配があってあまりおすすめできないの」 「そんなぁ、わたしお姉ちゃんに耳かきしてもらいたかったのに…」 優衣は口を尖らせて足をバタバタとさせた。 「んー……それなら耳が乾くまで耳や耳の周辺のマッサージとかをしてみる?」 「あ!それがいい!してしてー!」 先程までの曇り顔が一気にパッと明るくなった。 期待を抑えきれずに由紀にすぐさまねだるように抱きついてくる。 「ふふふ、だけどあまり腕には期待しないでね、なにせ初めてだもの、こういうの」 「にへへー、お姉ちゃんの初めてがわたしなんだぁ。 」 お姉ちゃんの特別になったような気がしてつい顔が緩んでしまう。 「じゃあ、ちょっと待っててね。 すぐ耳かきの道具持ってくるからね。 」 由紀は自室を出てリビングの方に向かった。 その間優衣は期待を胸に膨らませて姉の到来を待っていた。 ガチャっ…… 部屋に入り耳かきの準備をした由紀はベッドに座り膝枕を作った。 「うん、そうしたら…ほら、ここに頭をのせて」 優衣は由紀を見上げる形で自分の後頭部を差し出された太腿にのせた。 同じボディーソープの匂いと鼻孔をくすぐるような甘い匂いが香った。 思わずそこに頬ずりをする。 「こら、優衣甘えすぎ、ふふ」 「だってすっごく落ち着くんだもん。 しかたなーい」 「はいはい、そうだね、仕方ないねー」 ゆっくりとまた頬や髪を撫でる。 この動作を無限に続けていたくなる気分だった。 いつまでもずっと、この愛しい妹を愛で続けていたい、そう思うほどに。 次に顎。 こめかみ。 本来の目的を忘れて、由紀は優衣の顔中をすべすべと撫で回した。 「もう…ふふふっ、お姉ちゃんくすぐったいよぉ。 ね、お姉ちゃん。 耳はやらないの?」 「うん、じゃあ今からお耳のマッサージしていくね」 優衣は心待ちにした様子で目をゆっくりと閉じた。 指を這わせてそっと両耳の裏側をさするとピクッと一瞬優衣が震えた。 続いて耳の溝を人差し指で細かくなぞり、それと一緒に親指で挟み込むように裏側を揉んでいく。 すりすり…くりくり…すりすり…くりくり… ひたすらに同じ動作が繰り返される。 単調であるが、その全てが新鮮な感触として染み込んでいく。 柔らかくてしっとりした指の感触が擦り込まれていく度自然と耳がそれに呼応して熱を発する。 「ん……んっ………ふぅ……」 「ふぅ……どう……?気持ちいい?ちょっと強めにしてみるね」 「うん…お願い…」 すりすり…ぐりぐり…すりすり…ぐりぐり… 今度は内側から耳が圧迫される感触に変わった。 じわーっと広がるような温かさが伝わってくる。 溝に合わせて這う指は、ゆったりと丁度良い刺激と安らぎをもたらしてくれた。 時折、優衣は脚をもじもじさせて快感に耐えるように身をよじっていた。 すると、 「ふーーっ」 「ひゃあっ!?やっ、何!?」 「ふふっ、あんまりにも反応が可愛いからお耳吹いちゃった」 「いきなりはやめてよぉ…びっくりした……」 「ごめんごめん、じゃあこれからはちゃんと言ってからするから」 「う、うん…」 「じゃあ続けるねー…」 マッサージが再開すると、今度は耳たぶと耳の縁が揉まれた。 先程とは少し変わって、今度は耳を交互に一定のリズムで揉まれる。 くにくに、ぎゅっぎゅ、くにくに、ぎゅっぎゅ 強めに揉まれていても痛くなく丁度よかった。 心地良い波が幾重も押し寄せてきて、瞼を開けるのがとても億劫になってしまいそうになる。 「私ね、よくこの…耳たぶの所の"眼"って呼ばれるツボは自分で押してるんだよねー」 「ん…それってどんなツボ?」 「えと、疲れ目…の改善だったかな。 確かにそこをぐりぐりーってすると、何だか効いてるような感じがするんだよね」 「あ、でも優衣は疲れ目は無いと思うから、効能よりは気持ちよさを味わうぐらいでいいと思うけどね」 「ん〜…よくわかんないけど……ここ気持ちいね…。 お姉ちゃんマッサージじょうずー」 「ふふ、ありがとうございます。 どうぞご贔屓にしてください、お客様」 「わぁ、店員さんみたい。 わたしお客様?」 「そうよ、今優衣はお客様。 お姉ちゃんだけのお客様なの」 「そうなんだぁ……にひひ、嬉しい」 「それならよかった。 じゃあ、またやってくね」 優衣の小さな耳が手のひらですっぽりと包まれていく。 音が遮断され、静かな息の音と手のひらから漏れ出る僅かな音が鼓膜に届く。 耳を塞がれているだけなのに、深い没入感と安心感がそこにはあった。 「ふぁ………んー……きもち…ぃ……」 ゆっくり、ゆっくりと暖かくて柔らかな時間が過ぎていく。 しばらく耳を塞いだ後、眠たそうな優衣の身体を横に倒して、近くに置いておいた耳かき棒と綿棒、ティッシュを取る。 竹製の後ろに白い梵天が付いたシンプルな耳かき棒だった。 「ん……んぅ…?お姉ちゃん…もう…おわり…?」 「マッサージはね。 じゃあ、まず右の耳からやりましょ」 由紀のお腹側に向いて横になる。 さっきよりも甘くてたちこめるような柔軟剤の香りがする。 顔をうずめたくなるのを我慢して今度はきちんとじっとした。 「じゃあ…始めるね……」 そっと耳の縁にゆるく湾曲した先が触れる。 優衣はビクッと肩を少しだけ震わせ目をつぶった。 ツーっ、ツーっと優しく縁をなぞると削られた垢が少し受け皿に溜まった。 溜まった垢をティッシュにのせ、また縁を掻く。 何回も何回もされて、このループから抜け出せなくなってしまいそうだった。 ツーっ…ツツーっ…ツーっ… かり…かり…かりかり…かり… 「じゃあ…耳かきしながらいっしょに囁いてあげるね」 「ほら…かり、かり、かり、かり、かり、かりっ…」 かり…かり…かり…かり…かり… 声と音が混ざっていく。 耳の上で鮮やかな二重奏が繰り広げられる。 丁寧に、丁寧にその調べを弧を描くように奏でていく。 夢心地な気分だった。 縁の垢を取り終わると、いよいよ耳の穴の方に耳かき棒が向かった。 「耳の穴に入れるからリラックスしてね。 いくよー…」 こり…こり…こり…こり…こり…こり… くり…くり…くり…くり…くり…くり… 「あっ……ん………んっ……すごっ…い……んっ…」 内壁にへばり付いた湿り気のある耳垢がズルっと動く感覚がした。 ズっ、ズっと平べったい耳垢が持ち上げられる度に耳の中を快感が蹂躙する。 「うん、気持ちいいね…。 よしよし、力抜いて楽にしてねー…」 耳かきと一緒に頭と肩を優しく撫でられる。 快感によって強張った身体を撫でられることで緊張が解けて、またそこに次の快感が押し寄せてくる。 引いては寄せる波のようにそれは続いた。 「ふぁ………あっ、ん……ふぅ……ふぅー………んんっ……ふーっ……ふーっ……」 優衣の呼吸は次第に荒くなり、言葉を発する力も失って、外と中からの快感にただ耐えるだけとなった。 こりこりこり…ズっ…ズっ…ズルっ、かりかりかり… くりくり…こりこりっ…こりっ…ズルっ、ズルっ、 へばり付いた湯葉のような耳垢は徐々に外界へ運び出され、次々と奥に溜まった耳垢が排出されていく。 「ちょっと湿ってるから、耳垢がくっついていっぱい取れちゃうね。 どう気持ちいい…?」 「ひぁ……うん…きもちひぃ……」 「ふふ、優衣の顔すっごい蕩けちゃってるよ。 あともうちょっとだから、頑張ってね」 残った小さな耳垢を丁寧に耳かきで掬い取る。 最後の耳垢をきれいに取り終え、由紀は綿棒を取り出した。 「じゃあ、綿棒で拭き取りながら細かいの取っていくね」 耳の縁、耳穴の入り口近く、耳穴の中と順々に綿棒で掃除していく。 くるくるくる…すりすりすり…くるくる…すりすり… 綿棒を2,3本取り替えながらしっかりと汚れを落としていく。 使い終わった綿棒にはわずかに水分を含んだ細かいかすが張り付いていた。 「仕上げに、白くてフワフワな梵天を使っていくねー…」 梵天を耳の穴へ侵入させる。 フサフサの毛が小さな穴の中をすっぽりと満たし、細かい塵のようなかすを絡め取っていった。 「ほわぁ……フワフワしてるのすきぃ……」 やがて耳穴から梵天が抜かれると、由紀は優衣の肩をちょんちょんと叩いて身体を起こした。 「はい、じゃあ今度は左耳やるね。 反対側になってね」 「うん、おねがいー…」 右耳と同じ順序で耳かきがされていく。 微睡む視界、溶けるような匂い、由紀の包み込むような体温と柔らかさを感じた。 その解けるような感覚に優衣は瞬きを忘れて意識をゆっくりと落とした。 「あら、優衣?ふふ、じゃあお姉ちゃん…静かに耳かきするね…」 かり…かり…かり…かり… こり…こり…こり…こり… 手前にあった耳垢を集めてから奥を耳かき棒で探る。 すると、反対よりも大きめで押し込まれて固まった耳垢があった。 「あ、もう優衣ったら…痒いからって押し込んだら駄目じゃない」 叱るような口調とは裏腹に由紀は優衣の頭をさらりと撫でる。 すやすやと寝息を立てている姿がまるで小動物のようで愛着が湧いてくる。 由紀は撫でくり回したくなる衝動を押し留めて耳かきを続行した。 ごり…ごり…ごり…ごり… かりかり…ぐりっ…ごりごり… 耳垢を奥から持ち上げていく。 これも壁にべったりとくっついていて取るのが少し難しい。 慎重に耳かき棒を動かし、固まった耳垢を壁から少しずつ剥がす。 くりくり…ぐりぐり…こりこり…ペリッ…ペリ… ぐっ…ぐりっ、ごり…ごり…ごりごり…パリパリっ… 「すぅー……ぅ………ふっ……んっ……すぅー……」 耳垢が徐々に剥がれていくと共に優衣の口から微かな吐息が漏れる。 「優衣って、寝ててもちょっと反応しちゃうのね。 「よし、剥がせた剥がせた。 じゃあ、ゆっくり外に掻き出していくよー…」 ズーっ、ズっ、ズっ…くりくりこりこり…… ズルっ…ズズーっ…かりかり……ズズーっ…ズリュっ ひしゃげてて少し茶色い耳垢が顔を表した。 ティッシュに移して耳の穴を確認すると、それほど大きな耳垢はもう見当たらなかった。 「今のが大物だったのね。 あんなに大きいのが入ってたらそりゃ痒くもなるわ」 大きな耳垢が張り付いていた箇所は少し赤くなっていた。 由紀は次に綿棒を取り出すと、今度は耳用のローションを染み込ませる。 適度に拭き取ってから濡れた綿棒を耳の中へと入れた。 濡れた綿棒がツルツルと耳穴を撫でる。 綿棒のひやっとした感覚で優衣がまたピクピクッと震えるのが見えた。 耳の壁に綿棒を少し押し付けるとじわっとローションが染み出てくる。 耳垢は全てとろとろと洗い流され拭き取られ、耳穴はすっきりとしていた。 ある程度拭き終わって綿棒を抜き、優衣の顔を見るととても幸せそうな顔で寝ていた。 耳かきセットをしまうと優衣の頬をぷにっと押した。 「ふふっ、お耳もきれいになって満足してくれたかな。 また今度も耳かきしてあげたくなっちゃった」 起こすと悪いと思って頭を撫でるだけにして優衣の顔を眺めた。 小動物のようだと思っていたその表情は今は妖精のように感じる。 妖精とは時に人をその愛らしい仕草で翻弄するものであっただろうか。 しかし、この幼き妖精にならばたとえ騙されていたとしても幸せだろう。 由紀はそう思った。 瞳を閉じて瞬くと変わらない妹の幸せな顔がやっぱりそこにある。 このままずっと、変わることのない幸せを、幸福の印を描いていって欲しい、そう願った。 「じゃあね、おやすみ……優衣。 」 声は微睡みの中へと、願いは夢の隙間へと浸透していった。

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