エンドオブ ライフ ケア。 エンド・オブ・ライフ

高齢者のエンドオブライフ・ケアの現況

エンドオブ ライフ ケア

高齢者のエンドオブライフ・ケアの現況 公開日:2018年10月18日 12時00分 更新日:2019年8月 6日 15時00分 三浦 久幸 みうら ひさゆき 国立長寿医療研究センター在宅連携医療部長 はじめに エンドオブライフ・ケアの日本語にあたる「人生の最終段階の医療」という言葉が、この4、5年、公的に使用されるようになってきているが、以前は「終末期医療」と呼ばれた言葉を変更したものである。 「終末期」は生物学的生命 biological life の終わりを指す一方で、「人生の最終段階」は物語られる人生 biographicallife の最終段階を指す言葉であり、単に余命何か月という「死」に照準を合わせた「終末期」に対して、人としての生き様に照準を合わせた言葉が「人生の最終段階」である。 これは単に「終末期」の暗いイメージを払拭することを目的とした変更ではなく、「人生を生き切る」ことを支える医療・ケアを重視するパラダイムシフトをめざした言葉であるといえる。 ではなぜ、このような「死」から「生」を重視する流れが起きたか、という背景を考える必要がある。 1つには日本は世界に類をみない超高齢社会が到来しているということがある。 2025年には後期高齢者が3000万人以上に達するが、この中には ADLが低下するなど、自立した生活が困難となり、介護を必要とする人も増加する。 さらには「多死社会」とも呼ばれ、2040年には年間死亡数がピークを迎え、およそ167万人が1年間に死亡するとされる。 この事実は、超高齢者における老化を基盤とした疾患や老年症候群は完全には治癒するものが少ないため、病気や病態とつきあいながら人生の最期を過ごす人が今後増えてくることを意味する。 この一方で、完全治癒が望めない慢性疾患などに対して1人ひとりが希望する医療・介護の内容や、療養先の希望は多様化しており、本人の希望を最大限尊重した医療・ケアをいかに実践するかがこれからのテーマとなる。 このように「治す医療」から「治し支える医療」への転換が求められている。 「支える」という言葉は単に身体的対応のみでなく、本人の希望を支える、つまり意思決定支援が超高齢社会におけるこれからの中心的役割となることを意味している。 エンドオブライフ・ケアの定義 2002年に発表された WHO World Health Organization:世界保健機関 の緩和ケアの定義 2002 によると、「緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族の QOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである」としている。 従来、緩和ケアは、英国ホスピスの創始者であるシシリー・ソンダースに代表される、がん患者を中心とした疼痛・苦痛の緩和が主体であったが、今回の定義では、がんのみならず、すべての生命を脅かす病を対象としている。 国内の緩和ケアは、診療報酬上の面から長期間がん疾患を中心に発展したため、非がん疾患患者のケアは遅れをとってきたともいえる。 しかし、最近になり、進行期の非がん疾患のケアへの関心が高まり、がんも非がんもなく全疾患を対象とした人生の最終段階のケア、すなわちエンドオブライフ・ケアに関する学会が立ち上がるなど注目を集めている。 一方、世界的にみても、このエンドオブライフ・ケアの定義はいまだ確立しているとはいえず、国内では Izumiら 1 2 が看護学的視点から「健康状態、疾患名、年齢にかかわらず差し迫った死あるいは、いつかは来る死について考える人が最期まで最善の生を生きることができるよう支援すること」と定義している。 エンドオブライフ・ケアとは、患者とその家族と専門職との合意形成のプロセスであることを付記している。 海外ではヨーロッパ緩和ケア協会 3 が図1のように緩和ケア、サポーティブ・ケア、エンドオブライフ・ケアそれぞれの対象疾患および対象時期の違いを示しているが、海外においても緩和ケアはがん疾患中心で、エンドオブライフ・ケアが広く非がんを含めた概念として捉えられていることがわかる。 図1:緩和ケア、サポーティブ・ケア、エンドオブライフ・ケア(広義)の概念 (文献3より引用、筆者訳) しかしながら、前述のように緩和ケアそのものの対象が、非がんを包括しようとしている流れを考慮すると、両者の違いは、がんと非がんのどちらに力点を置くかの違いのみとも考えられる。 高齢者の人生の最終段階においては、割合として非がん疾患が多く、現時点ではがん、非がん双方を対象とした「エンドオブライフ・ケア」の言葉のほうがなじみやすいとはいえる。 非がん疾患のエンドオブライフ・ケアのエビデンスについて 現在、当センターと東京大学の共同により非がん疾患のエンドオブライフ・ケアの系統的レビューを行っており、これまでのエビデンスについて考察する。 この研究では1990〜2017年の英文もしくは和文の文献についての Medline、医中誌、 Cochraneのデータベースを系統的にサーチしている。 疾患別に主なエビデンスを紹介すると、人生の最終段階にある認知症患者の苦痛症状には、摂食嚥下に関わる問題、疼痛、呼吸困難、 Agitation 不安、興奮、混乱 が多くみられるという報告がある 4。 穏やかな死を阻害する症状としては、不快、不穏や最期の1か月の抑うつ、最期の1週間の恐怖や不安などの報告がある 5。 重度の慢性閉塞性肺疾患 COPD の末期の苦痛症状として、呼吸困難、痰、喘鳴 ぜんめい 、咳、食欲不振、発熱、不安 6 、重度の慢性心不全患者の末期の苦痛症状として、呼吸困難、末梢の浮腫、認知機能低下、不安、睡眠障害、せん妄、衰弱、慢性疼痛、食事量低下 7 が報告されており、各非がん疾患の末期において、疼痛や呼吸困難、不安・興奮・混乱の症状は共通してみられている。 COPDの息切れへのオピオイドの効果については、メタアナリシスで有効性が認められ、慢性心不全の息切れへのモルヒネの効果についても有効性がみられたという報告 8 がある。 また、難治性の息切れのある患者への包括的なケアサービスにより、「病気につきあっていけると感じられるようになった」という報告 9 がある。 この場合の包括的ケアサービスとは、通常のケアに呼吸理学療法、作業療法、緩和ケアを集約した多専門職によるサービスを、窓口を1点にして提供するものとしている。 さらに、慢性心不全患者への包括的なケアサービスにより、健康関連 QOLが改善したという報告もある 10。 アドバンス・ケア・プランニング 以下 ACP ついては、患者の意思に沿ったケア、延命治療の抑制、ホスピス・緩和ケア病棟への入院、入院率、 QOL、ケアの質、満足度、患者家族の症状などに関して有効性を示す多くの報告がある 11。 このように非がん疾患末期の苦痛症状、オピオイド、包括的なケアサービスの効果、 ACPの有効性などの報告があるとはいえるが、対象が疾患の末期患者ということもあり、国内外通じて対象数の多いランダム化比較試験は少なく、また、ほとんどが国外からの報告で、国内からの報告は極めて少ない状況にある。 国内でのエンドオブライフ・ケアのあるべき姿を求めていくためには、さらなる国内のエビデンスが必要な状況にある。 高齢者における緩和ケア、エンドオブライフ・ケア推進に向けて WHO Europeは、2011年に高齢者を対象とした質の高い緩和ケアをめざした The Solids Facts:Palliative Care forOlder people : Better Practice 12 を公表している。 この中で、よりよい緩和ケア推進のための構成要素として、1. 病院、施設、在宅を含む地域全体での包括的なケア体制の構築、2. 患者に対する事前の意思決定支援 アドバンス・ケア・プランニング 、3. がん以外の 特に高齢者 の研究知見集積の重要性を示している 2 12。 に述べられているように、現在、日本全国で推し進められている地域包括ケアの流れの中で、エンドオブライフ・ケアの実践を行うという形が望まれる。 図2は患者本人の意思を尊重した地域連携モデルを示している。 患者に一番近い存在である、主治医 かかりつけ医 やケアマネジャーが患者の思いに寄り添い、在宅にいても、入院中であっても、施設に入所しても患者の思いがつながるような連携が望まれる。 に書かれている患者に対する事前の意思決定支援、すなわち ACPであり、地域包括ケアの仕組みを進めても、患者の意思を引き継がない連携では、「仏つくって魂入れず」の状態であり、本当の意味での連携は進まないように思われる。 図3のように、厚生労働省では2014年度から、患者の意思を尊重した人生の最終段階における医療の実現に向けた取り組みとして、「人生の最終段階における医療体制整備事業」を開始している。 当センターが評価医療機関として、相談員の研修テキスト作成、事業の進捗管理に携わった。 図3:平成26年度厚生労働省「人生の最終段階における医療体制整備事業」 厚生労働省ホームページ「患者の意思を尊重した人生の最終段階における医療体制について」資料から一部引用 2014年度のモデル事業の時のアンケート調査結果 図4 では、「相談員」が意思決定支援を行った患者へのアンケートで、「患者 自分 の希望がより尊重されたと思う」と回答した人が89%に達していた。 次に多かったのは、「家族の希望がより尊重されたと思う」 86% と「今までわからなかったことを理解することができた」 86% で、本人の不安軽減や家族間の話し合いにも役に立ったことが示された。 一方、「不安や心配がかえって強くなった」という人を10%に認め、より侵襲の少ないコミュニケーションスキルが必要と思われる結果であった。 図4:人生の最終段階における医療にかかる相談に対する患者の満足度 【相談に関するアンケート調査結果(回答率26. おわりに WHO Europeによる高齢者を対象とした質の高い緩和ケアをめざした指針は、国内でも十分に応用できると考えられる。 非がん疾患のエンドオブライフ・ケアについてのエビデンスが少なく、国内での研究の積み重ねが必要である。 また、地域全体で患者さんを支えるためには、国内で進められている地域包括ケアやACPの流れと歩調を合わせて、エンドオブライフ・ケアを促進する必要がある。 参考文献• Izumi S, Nagae H, Sakurai C, Imamura E. Defining end-of-life carefrom perspectives of nursing ethics. Nursing Ethics. 2012;19:608-618. 長江弘子. 【保健医療社会学の研究動向と展望】 エンド・オブ・ライフケアの概念とわが国における研究課題. 保健医療社会学論集. 2014;25: 17-23. European Association for Palliative Care: White Paper on standards and norms for hospice and palliative care in Europe:part 1. European Journal of Palliative Care 16 6 :278-289, 2009. Mitchell SL, Teno JM, Kiely DK, et al. The Clinical Course of Advanced Dementia. New England Journal of M edicine. 2009;361: 1529-1538. De Roo ML, Albers G, Deliens L, et al. Physical and Psychological Distress Are Related to Dying Peacefully in Residents With Dementia in Long-Term Care Facilities. Journal of Pain and Symptom Management. 2015;50:1-8. 有田 健, 梶原 俊, 三戸 晶, 新田 朋, 粟屋 浩, 山崎 正. 在宅酸素療法を施行したCOPD 肺気腫型 における終末期の病態と緩和医療に関する検討. 日本胸部臨床. 2009;68: 856-866. Martin-Pfitzenmeyer I, Gauthier S, Bailly M, et al. Prognostic Factors in Stage D Heart Failure in the Very Elderly. Gerontology. 2009;55: 719-726. Johnson MJ, McDonagh TA, Harkness A, McKay SE, Dargie HJ. Morphine for the relief of breathlessness in patients with chronic heart failure - a pilot study. European Journal of Heart Failure. 2002;4: 753-756. Higginson IJ, Bausewein C, Reilly CC, et al. An integratedpalliative and respiratory care service for patients with advanced disease and refractory breathlessness: a randomised controlled trial. Lancet Respiratory Medicine. 2014;2: 979-987. Brannstrom M, Boman K. Effects of person-centred and integrated chronic heart failure and palliative home care. PREFER:a randomized controlled study. European Journal of Heart Failure. 2014;16: 1142-1151. Brinkman-Stoppelenburg A, Rietjens JAC, van der Heide A. The effects of advance care planning on end-of-life care: A systematic review. Palliative Medicine. 2014;28: 1000-1025. 筆者 三浦 久幸 みうら ひさゆき 国立長寿医療研究センター在宅連携医療部長 略歴: 1990年:ドイツゲッティンゲン大学研究員、1993年:名古屋大学大学院医学研究科修了、1994年:岡崎国立共同研究機構生理学研究所助手、1995年:名古屋大学医学部老年科医員、2006年:国立長寿医療センター外来診療部外来総合診療科医長、2012年より現職 専門分野: 老年医学、臨床倫理学、在宅医学。 医学博士 転載元 公益財団法人長寿科学振興財団 機関誌 Aging&Health No. 87 2018年10月発行.

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エンド・オブ・ライフ 公開日:2016年7月25日 02時00分 更新日:2020年3月 4日 11時14分 エンド・オブ・ライフケアとは? 「エンド」は「おわり」、「ライフ」は「いのち」ですね。 誰でもいつかは訪れるいのちのおわりについて考える人が、最期までその人らしく生きることができるように支援するケアです。 年齢や健康状態や診断名を問いません。 体のつらさ、気持ちのつらさ、病気や体力の低下のために自分の役割が果たせなくなった時のつらさ、年を重ねるにつれ自分で判断することが難しくなった時つらさ、自分のいのちはもう最期かもしれないと感じる時のつらさ、家族に迷惑をかけたくないと考える時のつらさ、金銭的に困った時のつらさ、生活や医療における大切な選択をする時のつらさになど、いろいろなつらさに対してかかわり、いのちや生活の質の高めることを目指すケアです。 似ている言葉に緩和ケアがあります。 緩和ケアは、様々なつらさを和らげるケアです。 エンド・オブ・ライフケアとほとんど同じと考えて差し支えないです。 日本の緩和ケアは、制度上がんとエイズの患者さんを対象に発展してきた歴史がありますので、どうしても疾患を限定していると考えられがちですが、ケアの本質的な部分では診断名を問わないエンド・オブ・ライフケアとほとんど同じです。 エンド・オブ・ライフケアについてよくある質問は? 質問1 エンド・オブ・ライフケアの対象は、慢性呼吸器疾患や慢性心不全のような臓器障害をもつ患者さん、認知症や虚弱な高齢の患者さんで、緩和ケアの対象は、がんとエイズの患者さんなのでしょうか。 回答1 いいえ、違います。 エンド・オブ・ライフケアも、緩和ケアも診断名に関係なく提供されるケアです。 がん、エイズ、慢性呼吸器疾患、慢性心不全、慢性腎不全、慢性肝臓病、認知症、虚弱、神経難病の患者さん等、診断名に関係なく提供されます。 質問2 エンド・オブ・ライフケアや、緩和ケアでは、本人だけでなく、ご家族にもケアが提供されますか。 回答2 はい、その通りです。 ご家族のケアは患者さん本人のケアにもつながります。 質問3 エンド・オブ・ライフケアと緩和ケアは、残された余命が短くなってから受けるケアですか。 回答3 いいえ、違います。 エンド・オブ・ライフケアも緩和ケアも、診断がついた時やいのちについて意識し始めた時に提供されるケアです。 年単位で長期的に提供されるケアです。 もちろん、半年、月単位、週単位、日にち単位といった限られた最期にも提供されるケアです。 エンド・オブ・ライフケアで大切な考え方とは? 終活(しゅうかつ)です。 就職活動のことを「就活」と言いますが、それをもじった造語で、自分の人生の終末のためにする活動のことを指します。 当初は自分の葬儀などついて生前に準備することを指しましたが、しだいに、医療やケアについての要望も含まれるようになりました。 医療やケアの領域では、「意思決定の3本柱」や「アドバンスケアプランニング」が、「終活」に近い考え方です。 意思決定支援の3本柱とは何ですか? その時に「大切な選択」を話し合う道標です。 特に、認知症等でご本人による意思決定が難しくなった時に役に立つ考え方です。 3本柱は、「本人の意思」、「家族の意向」、「医学的判断」です。 「本人の意思」は、「現在」、「過去」、「未来」の3つの時間の流れで構成されます。 意思決定支援の3本柱 意思決定支援の3本柱とは「本人の意思」、「家族の意向」、「医学的判断」である。 中でも、本人の意思は、「現在」、「過去」、「未来」の3つの時間軸で捉えている。 「現在」は、患者の発するわずかなサインに耳を傾ける。 「過去」は、アドバンス・ケア・プランニングのプロセスが開始されていないか(リビングウィルが残されていないか)を確認する。 「未来」は、未来に得られるその人の最善の利益を考える中で、本人の意思を推定する。 例えば、施設に戻ると点滴はできないが、点滴をすることよりも住み慣れた施設に戻ることを患者は望むだろうと推定される場合などがこれにあたる。 これら「意思決定の3本柱」を念頭に意思決定支援を行うのである(図)。 図:意思決定支援の3本柱 大切な選択 大切な選択には、次が挙げられます。 「アドバンス」は「事前に・予め・前もって」、プラニングは「難しい判断に関連してケアの在り方を話あうこと」ですね。 直訳では、事前ケア計画、意訳では、事前意思決定支援計画ですね。 一番重要なことは話あうプロセスですが、話し合った内容を書面に残すことも重要です。 アドバンス・ケア・プランニングの結果を記載する世界的に有名な書面に「5つの願い」があります。 アドバンス・ケア・プランニング アドバンス・ケア・プランニングの結果を記載する世界的に有名な書面である「5つの願い」とは?.

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看護実践|看護の視点で支える慢性疾患患者のエンドオブライフ

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看護実践 終末に至る軌跡を描くこと ~ケアのタイミングをはかる 図1は、死に至るまでのプロセスの、異なるパターンを示しています。 死に至る軌跡が異なることを理解することにより、患者の局面の特徴を踏まえたよりよい死を迎えるための個別的ケアを考えることができます(図2)。 呼吸不全や慢性心不全患者の軌跡のパターンは、増悪と寛解を繰り返し終末に至ることが特徴的です。 慢性疾患患者が入院しているときは増悪時です。 回復して少し安定しているときは自宅などの生活の場に戻っています。 この時期は、今後も急性増悪を繰り返す可能性が高いからこそ、患者のQOLを高めるためのケアを行う重要なタイミングとなります。 看護師の悩み 病院看護師の調査によると、エンドオブライフ期慢性疾患患者のケアで看護師が困るのは、• 患者の死の不安に向き合うこと自体が不安。 患者のこだわりが強く、なぜそうするのかが理解しがたい。 患者の意向がわかりにくいうえ、時と場合で変わってしまう。 しなければならない処置や清潔ケアに対して患者が抵抗したり暴言を吐いたりする。 患者の苦痛に対して、対応方法がわからない。 主治医の方針と患者家族の意向がずれている。 患者背景や問題が複雑で、患者をとりまくケアチームの関係性も常態化して、諦め感が漂っている。 死生観や職業意識は看護師もいろいろなので、協力を申し出にくい。 十分にケアに費やす時間と人出も足りない。 退院先の受け入れ施設の条件に医療管理の方法が決まっている場合に、患者の意向を優先できない。 病院で慢性疾患患者のエンドオブライフケアを実践するには、看護師の死生観の醸成、療養経過が長い患者の理解、慢性状態による身体反応の把握、緩和ケア技術、スタッフ間コミュニケーション、多職種の価値の相互理解、看護業務の調整、施設間連携、などが課題となっているようです。 Acvance Care Planning ACP)とは ACPとは、『自分が将来受けたいエンドオブライフケアについて、話し合うコミュニケーションのプロセス』です。 Advance Care Planning ACP)の背景 個人の権利や自律について強調される欧米において、医療ケアは、本人の意思で受けるもの、選択できる自由を保障することが重要です。 米国では、1980年~1990年代の延命治療中心を巡る裁判により、Patient Self-Determination Act (PSDA が制定され、事前指示書(Advance Directive;AD が義務化されました。 その後、大規模研究(SUPPORT の結果、人々が尊厳が保持されない状態で亡くなっていることが明らかになり、ADの記載を義務化しただけでは駄目、自分が判断できなくなったときどのような医療ケアを受けたいかを周囲の人と話し合うプロセスが必要である、ということになり、注目されるようになちました。 ACPは、米国では、2016年にメディケアの診療報酬対象になり、イギリスではNational Health Systemの一貫に位置づけられています。 他に、オーストラリア、シンガポール、カナダなどの先進諸国で取り組まれています。 日本の状況 日本では、2014年から開始した人生の最終段階における医療体制整備事業の一貫に、ACPのプロセスが含まれており、検証が試みられています。 人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドラインを実質化していくための、医療者のエンドオブライフディスカッションの能力を高めることが、現段階では目指されているといえるでしょう。 ACPにおける看護師の役割.

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