スポンサーリンク 夏いちごとは? そもそも、「夏いちご」とは何なのか? 1.端境期(夏秋)に生産される国産イチゴ 夏いちごとは、その名前のとおり、夏に採れるイチゴのこと。 夏から秋にかけて採れるので、「 夏秋(かしゅう)イチゴ」とよばれることも多い。 「あれ? いちごって夏や秋にも採れたっけ!?」 と農業に詳しい人なら気がついたかもしれない。 一般的に日本では、イチゴの旬は冬から春(12月から6月まで)。 なので、夏や秋にはいちごは出回らない。 その普通のいちごが出回らない端境期に、国内で生産され出荷されているのが夏秋イチゴ(夏いちご)。 夏や秋に国内でイチゴが生産されるようになったのは、ここ二十年くらいである。 端境期に輸入される海外イチゴ では昔は夏や秋に、日本からイチゴが完全になくなったかというと、そうでもない。 二十年以上昔から、夏や秋にはアメリカなどからイチゴを輸入していた。 一昔前は、夏に食べられるイチゴといえば、「外国産の輸入イチゴ」だったのだ。 アメリカ産の輸入イチゴは、 ・果実が硬く、 ・果実が大きく、 ・赤色が濃く、 ・果実の中心に空洞があり、 ・糖度が低いこと が特徴。 日本産のイチゴに比べて味の質は下がる。 しかし、夏から秋にかけては国内のイチゴが完全になくなり、希少性が高い時期。 なので 国産イチゴの倍の値段で売られていた。 今でも夏場になると高級スーパーでは、アメリカ産のイチゴが販売されている。 夏秋イチゴは最も儲かる農作物 その夏場の輸入イチゴに対抗する形で、生産されるようになったのが夏秋イチゴである。 理由はシンプルで、普通のイチゴの2倍の値段で売ることができて、めちゃくちゃ儲かるから。 そもそも、イチゴは収益性が高い(儲かる)農作物。 なので、新規就農者に人気の作物だった。 例えば、冬から春のイチゴの平均的な卸売価格は、 1キロ900〜1,500円程度。 それに対して、夏秋イチゴの平均的な卸売価格は、 1キロ2,000〜3,000円程度。 イチゴの中でも夏秋イチゴはさらに収益性が高い農作物になった。 なので、今では県や国が新規就農者向けに夏秋イチゴ栽培を振興している。 夏秋イチゴは現在の日本の農業の中で、もっとも儲かる農作物の一つといっていいだろう。 2.用途は業務用(ケーキ屋、アミューズメントパーク) なぜ、夏秋イチゴが儲かるのか? その理屈はかんたんだ。 夏秋イチゴが儲かる理由は、供給がほぼゼロになるのに需要があるから。 なので、普通より2倍の値段でも売れるからだ。 供給がなくなるのは、夏場にイチゴが収穫できないから。 イチゴは気温が高くて日長時間が長くなる夏には、花を咲かせることができない。 なので、夏には実も収穫できない。 そして、需要というのは、ケーキ屋さんやアミューズメントパークなどの業務用需要だ。 夏にはスイカ、ブドウ、梨などいろんなフルーツが旬をむかえる。 なので、わざわざイチゴを生で食べる必要はない。 ただし、イチゴを一年中必要としている人たちがいる。 それがショートケーキを作りたいケーキ屋さんや、イチゴを使ったスイーツを売りたいアミューズメントパークである。 イチゴが上に乗っていないショートケーキはショートケーキとは呼べない。 それに、ショートケーキが売っていないケーキ屋さんもありえない。 そのため、夏でもイチゴの需要は必ずあるのだ。 なので、みなさんも知らないうちに夏イチゴを口にしているはずだ。 7月から11月まで出回っているイチゴのほとんどは夏イチゴなので、ぜひ気にしてみてほしい。 ただし、夏にはいろんなフルーツが売られている。 なので、スーパーマーケットで夏秋イチゴが生食用として販売されることは稀だ。 3.夏イチゴの味は美味しいのか?糖度は? 夏秋イチゴがスーパーマーケットで生食として売られない理由は、もう一つある。 それは、夏秋イチゴの糖度が低く、冬場のイチゴと比べて味が美味しくないからだ。 最近では、 「 冬のいちごと同じくらいの糖度です!」 という宣伝文句で販売されている夏秋イチゴもあるが、それは過大広告だと思う。 旬のスイカや梨が安く食べられる時期に、わざわざ美味しくないイチゴを、2倍の金額を払ってまで食べたくないよね? なので、スーパーマーケットで夏秋イチゴが販売されることはほとんどない。 ただし、夏秋イチゴの産地の近くのスーパーや、品揃えが豊富なお店では店頭に並ぶこともある。 4.四季成り性と一季成り性イチゴ 「夏にイチゴは実をつけないのに、どうやって収穫するの?」 と疑問に思う人もいるだろう。 冬から春にかけて収穫されるイチゴは、「 一季成り性」とよばれる性質を持っているイチゴである。 それに対して、夏から秋にかけて収穫されるイチゴは、「 四季成り性」という性質を持っている。 実は、普通のイチゴと夏秋イチゴは、イチゴのタイプが違うのだ。 四季成り性と一季成り性の違い 一季成り性イチゴと四季成り性イチゴの違いは、 花芽分化(花を作る条件)の違いである。 葉の見た目や果実の見た目や味は、一季成り性も四季成り性も同じ。 花芽分化の条件を大雑把に説明すると、以下のような違いがある。 【気温に対する反応】 ・一季成り性:25度以上で花芽分化できない。 24度以下でも日長時間が長すぎると花芽分化できない。 ・四季成り性:30度以上で花芽分化できない。 【収穫できる季節】 ・一季成り性:冬、春だけ ・四季成り性:春夏秋冬すべて 一季成り性は冬と春しか収穫できず、それに対して四季成り性は春夏秋冬いつでも収穫できる。 四季成り性イチゴを一年中生産して、一年中四季成り性イチゴを売ることができる。 なのに、なぜ周年で生産しないのか? 【出回っているイチゴの種類】 ・春:一季成り性 ・夏: 四季成り性 ・秋: 四季成り性 ・冬:一季成り性 その理由は、さきほど説明したとおり、 四季成り性の味が一季成り性よりも美味しくないからだ。 現状日本では、冬と春は味が美味しい一季成り性を生産する。 そして、一季成り性が生産できない夏と秋には、四季成り性を生産している。 参考: 一季成り性イチゴを使った夏秋イチゴ生産 日本の夏秋イチゴのほとんどが、四季成り性イチゴを使っている。 ただしごく少数だが中には、一季成り性イチゴを使った夏秋イチゴ生産も行われている。 その場合には、苗の冷蔵処理や日長時間の短縮、ハウス室温やクラウン部の冷却が行われている。 5.海外にも夏秋イチゴはある? 「海外にも夏秋イチゴはあるの?」 という質問を受けることがある。 答えはNoだ。 そもそも、日本と韓国以外では、イチゴはビニールハウスを使わずに栽培されている。 気温が低い時期にビニールハウスで暖房機を使ってイチゴを栽培している国は、日本と韓国以外にはほとんどない。 (オランダやイスラエルなどは一部使っているけど) なので、海外ではイチゴの栽培に適した気候の土地で、一年中イチゴが屋外で栽培されている。 そして、同じ株から連続して 3年間から5年間くらいは収穫し続けている。 しかし、日本は同じ株から収穫する期間は 半年間だけである。 ただし、海外のイチゴ品種にも一季成り性品種と四季成り性品種があり、どちらも一年中栽培されている。 参考: 夏イチゴの主力品種(四季成り性) 次に、夏イチゴの主力品種(四季成り性)を紹介しよう。 1.ペチカ・シリーズ 日本を代表する夏秋イチゴといえば、北海道ののペチカ・シリーズ。 (ペチカ、ペチカサンタ、ペチカプライム、ペチカエバー、ペチカほのか) ホーブはイチゴの品種改良と夏イチゴの卸売をしている会社で、年間売上は52億円。 1995年に四季成り性品種ペチカを育成し、その後も品種改良を続けている。 ホーブはTBSの がっちりマンデーでも特集されていた。 ホーブのペチカが、日本の国産夏秋イチゴの礎を築いた。 しかもホーブは株式上場もしている。 2.すずあかね ここ数年、大人気なのがのすずあかね。 ホクサンは元は北海三共という会社名だったが、数年前に改名した。 最初に作った四季成り性は「HS138(商品名:夏実)」。 その夏実の改良品種として「すずあかね」が誕生した。 すずあかねの特徴は、植物の背が低く、果肉は白く、果実が大きい。 北海道や長野県に人気の品種である。 3.サマープリンセス 長野県のが育成した品種が、サマープリンセス。 サマープリンセスの特徴は、収穫量が多く、果実が白く、うどんこ病に弱く、白ろう果という果皮の着色異常が発生すること。 栽培は長野県内に限られているが、一時期は長野県中の夏秋イチゴ農家で栽培されていた。 また、サマープリンセスの改良品種であるサマーエンジェルは、流行らずに姿を消してしまった。 4.なつあかり が育成した品種が、なつあかり。 なつあかりの特徴は、収穫量が少ないが、果実糖度が高く味が美味しいこと。 ただし、自然条件では収穫量が少なすぎて、最近では見かけなくなった。 5.信大BS8-9 が育成したのが、信大BS8-9。 信大BS8-9の特徴は、果実糖度が高く美味しいことと、うどんこ病にかかりにくいこと。 ぼくはこのイチゴの「周年生産の研究」と「栽培マニュアルの作成」に、4年間携わっていた。 昔は長野県内でしか栽培できなかったが、今では北は北海道から南は九州まで栽培されている。 【苺コンサルのお仕事紹介】 長野県松本市で「真夏でも収穫できるイチゴ」を生産する企業と一緒に働いています。 — 宮﨑大輔🍓📷 JIBURl 【追記】6.ペチカほのか・夏瑞(なつみずき) 株式会社ホーブがペチカシリーズの後継として、品種名ペチカほのか(商品名:夏瑞、なつみずき)を開発した。 大玉、高糖度が売りの品種で、現在の生産地は北海道。 7月中旬に東京の百貨店で食べてみたが、本当に糖度が高くて驚いた! 夏イチゴのマーケット調査をしています。 昨年から栽培が始まった北海道産の新品種です。 素晴らしいクオリティで驚きました! — 宮﨑大輔🍓📷 JIBURl 【追記】7.長野県で新しい品種長・野53号が育成された 長野県の農業試験場で新しい四季成り性品種が育成された。 その名は、長・野53号(チョウヤ53ゴウ)。 こちらに情報をまとめたので、ぜひ見てほしい。 夏イチゴは商業的な作物なので、家庭菜園向けではない。 家庭菜園で四季成り性イチゴを育てたい場合には、一般的な栽培方法でよいので、こちらの記事を読んでほしい。 参考: 1.夏イチゴ栽培に必要な設備(高設栽培) まずは、夏イチゴの栽培に必要な設備をご紹介しよう。 イチゴ栽培には「土耕(どこう)栽培」と「高設(こうせつ)栽培」という二種類がある。 今回は新規就農者に人気の高設栽培を紹介する。 ビニールハウス まず、日本でイチゴ栽培をする場合には、ビニールハウスが必須。 素材は鉄骨ハウスでもいいし、直管パイプでもいい。 日本のいちご品種は果肉が柔らかく果皮が弱いので、雨よけがないと果実が痛んでしまうのだ。 自動灌水装置 高設栽培では自動灌水装置と給液チューブが必須。 灌水装置とドリップチューブは、各メーカーからいろんな種類が販売されている。 高設ベンチ 高設栽培は、いちごを高設ベンチの上で栽培する。 高設栽培とは栽培槽を腰から胸の高さくらいまで上げ、作業効率をよくすることが目的だ。 栽培容器 高設栽培に使う栽培槽は、いろんなものがある。 プランター型、発泡スチロール箱、トレイタイプ、シートタイプなど。 培地 日本のイチゴ栽培では、水耕栽培は一般的ではない。 イチゴの水耕栽培も可能。 でも、「養液土耕栽培」という土と液肥を使う栽培方法の方が、リスクが少なくメリットが多いからだ。 そのため、夏秋イチゴ栽培にも土ではなく、特殊な培地を使うことが多い。 肥料 高設栽培では肥料濃度を調整した液肥を流して、イチゴに必要な分だけ肥料を与える。 昔は農家の勘に頼っていた細かいコントロールを数値化できる。 なので、大規模栽培や新規就農者にも向いている。 農薬 夏秋イチゴ栽培には、殺虫剤や殺菌剤などの農薬が必要。 冬や春の時期よりも害虫の発生が多いので、その対策が大変だ。 業務用冷蔵庫 夏秋イチゴを収穫したら、まずは業務用冷蔵庫に入れて「予冷」という冷却作業を行う。 そして、そのあとに選別してパッキングして、出荷する。 自動読み上げ機能付き測り 夏秋イチゴ農家では毎日たくさんのイチゴを選果しないといけない。 なので、自動読み上げ機能付きの測りを使うことが多い。 イチゴをトレーから持ち上げると「 コレハ、Mサイズ、デス」と読み上げてくれるので、めちゃくちゃ便利。 出荷資材 夏秋イチゴの出荷先は主に、市場やケーキ屋さん。 冬のイチゴのようにスーパーでパック売りされることはほとんどない。 代わりにダンボールの出荷資材に入れられて出荷される。 2.夏秋イチゴ農家を始めるのに必要な資金 夏秋イチゴ農家を始めるために必要な資金は、面積ややり方にもより大きく変わる。 最低でも1,000万円以上は必要だろう。 日本でよく利用されている新規就農者の個人の融資の額は 3,000万円で、法人だと 1億円だ。 日本で夏秋イチゴを始める場合には、3,000万円くらいの資金があるとよい。 イチゴ栽培の場合には、「高設栽培をするか、土耕栽培をするか」で費用が変わってくる。 3.高設栽培のメリット・デメリット イチゴで新規就農者するときに悩むのが、栽培方法だろう。 そこでまずは、高設栽培のメリットとデメリットを紹介しよう。 高設栽培のメリット ・作業効率が良い ・培地を使えば土壌汚染の心配がない ・肥料や水分をコントロールできる ・マニュアル化が楽 ・新規就農者や大規模化に向いている ・無理をすれば二段ベッドも作れる 高設栽培のデメリット ・土耕栽培よりも費用が増える ・土入れや片付け作業が大変 ・メンテナンスにもお金がかかる 4.土耕栽培のメリット・デメリット 次は、土耕栽培のメリットとデメリット。 土耕栽培の方が歴史が長く、古い農家は土耕栽培。 新しい農家は高設栽培を導入している事が多い。 土耕栽培のメリット ・導入コストが安い ・ランニングコストが安い ・経験やノウハウが蓄積している ・うまく作れば、高設栽培よりも味が良くなる (場合によるが) 土耕栽培のデメリット ・腰を丸めた状態で作業しないといけない ・土壌汚染の可能性がある ・経験や勘に頼った部分が多い ・マニュアル化や大規模化しにくい 5.栽培スケジュール 次に、夏秋イチゴの栽培スケジュールをお教えしよう。 4月定植 夏秋イチゴの定植は4月頃が多い。 ただし、東北地方では前年の秋に定植する農家も多い。 5月株育成期 5月は株を育てる時期なので、出てきた花房は取って捨てよう。 6月花上げ期 6月からは出てきた花房を残しておいて、花を咲かせよう。 この時期からはハウスにミツバチを用意して、授粉させよう。 7月収穫開始 夏秋イチゴの収穫のピークが7月。 Lサイズのイチゴがたくさん採れる時期なので、あらかじめ売り先を確保しておこう。 夏秋イチゴ農家は、この時期がめちゃくちゃ忙しくて寝る時間がなくなる。 8月中休み 8月に入ると収穫のピークが終わり、収穫量が減ってくる。 この時期に摘花や栽培管理をしっかりしよう。 9月収穫 9月になり暑さの峠が超えると、イチゴも元気を取り戻してくる。 秋の収穫のピークを迎える。 10月収穫 10月になると果実の成熟にかかる日数が増えて、果実の糖度が増してくる。 高標高地では10月末で収穫が終わる。 11月収穫終了 11月になるとイチゴの果実が巨大化し、糖度も冬いちご並に美味しくなる。 ただし、一季成り性品種が市場に出回り始めるので、四季成り性品種の生産はここで終了。 12月片付け 来年度の栽培のために、苗を切り取ってハウスの片付けを行う。 これで夏秋イチゴの1シーズンが終わり。 育苗にはいろんな方法があるが、今回はナイアガラ方式を紹介する。 8月翌年の栽培株数決定 まずは8月に、翌年栽培する苗の数を決める。 すべての苗が元気に育つとは限らないので、例えば2万株必要な場合には、2万4千株くらいは苗作りをしよう。 9月ランナー出し 9月になったら必要な苗数分が採れるだけの親株から、ランナーを出させる。 おおまかな数を数えて、翌年栽培分の苗数までランナー子苗を増やそう。 10月採苗 10月になったらランナー子苗を切り取って、ポットか育苗トレイに挿して、「挿し苗」を作ろう。 発根を促すために自動ミスト装置があると便利。 11月育苗 11月は育苗期間。 農業には「苗半作(なえはんさく)」という言葉がある。 それくらい育苗は重要で難しいので、気をつけてほしい。 12月から2月屋外で管理 12月から2月は雪の下で管理すればOK。 この期間はすることがないので、翌年栽培用の準備かバカンスを楽しもう。 夏秋イチゴ農家はこの時期に海外旅行に出かけたり、出稼ぎにでかけたり、毎日パチンコしている。 3月追肥 3月になると苗が生育を再開させるので、追肥を与えよう。 IB化成を使うと楽ちん。 4月定植 そして、4月に苗を定植して、新しいシーズンが始まる。 7.夏イチゴ栽培の課題と対策 次は、夏秋イチゴの課題と対策について。 高温期のなり疲れ 夏秋イチゴの問題といえば、高温期のなり疲れだ。 イチゴは果実が実ると光合成で生産したエネルギーのほとんどを果実に送ってしまう。 なので、根や葉がエネルギー不足になり弱ってしまう。 そのため、生育速度が遅くなったり、次に採れる果実が小さくなってしまう。 また、気温が高すぎて四季成り性品種でも花芽分化できないことがある。 俗に「花がとぶ」とよばれる現象が起きる。 そうならないように、摘花をしたり、電照処理をしたりしないといけない。 果実の糖度が低い 夏秋イチゴの最大の問題は、ずばり不味いこと! 果実の糖度を上げる方法は、成熟日数を伸ばすことや、光合成をしっかりさせること。 ただし、根本的な解決のためには、 糖度が高い品種を選ぶことである。 果皮に傷がつく 夏秋イチゴの出荷でのトラブルで多いのが、果皮の傷。 イチゴは果皮がデリケート。 なので、収穫するときや選別するときの接触で、果実に傷がついてしまう。 なので、果実を扱うときには細心の注意を払おう。 また、出荷資材を検討して、輸送時の痛みも減らそう。 白ろう果実の発生 サマープリンセスやすずあかねには、白ろう果という着色異常が発生する。 白ろう果の発生には日射不足が関与しているという研究報告があった。 しかし有効な対策は見つかっていない。 なので、白ろう果の発生が少ない品種を選んだ方がリスクは少ない。 果実の小玉化 夏秋イチゴは7月のピークをすぎると、果実がどんどん小さくなってしまう。 これは株の栄養条件が関与しているので、適正な液肥管理と摘果処理を心がけよう。 また、果実サイズには品種の影響も強いので、大玉の品種を選択しよう。 病害虫の多発 夏秋イチゴが栽培される4月から11月は、病原菌や害虫にとっても快適な環境。 なので、病害虫の被害が問題になる。 トラップシートを使って発生を即座に発見し、早期防除・予防的防除を徹底しよう。 特にホコリダニや炭疽病が発生すると、イチゴが全滅する危険性もある。 8.夏秋イチゴの販路 次は、夏秋イチゴの販路について。 地元のケーキ屋 夏秋イチゴの主な販路は、まずは地元のケーキ屋さん。 中規模の洋菓子屋と夏場に契約できれば、毎週いちごを出荷できる。 製菓製造メーカー 製菓製造メーカーと契約できれば、大量のイチゴを出荷できる。 ただし、納期や量を守らないといけないので個人では難しく、農家グループで出荷するのが現実的。 都市部の青果市場 夏場でも大量のいちごをさばけるのは、都市部の青果市場だ。 大口の販路として市場の卸売企業を抑えておくと安心。 直売所、スーパー 近所に直売所やスーパーがあれば、そこに少量だけ生食用として卸すのもおすすめだ。 夏場のいちごは大量に売れることは望めないが、物珍しさから少しは売れるだろう。 9.夏秋イチゴの六次産業化 次は、夏秋イチゴの六次産業化について。 農林水産省は「 農業の六次産業化」を推進する立場を取っている。 なので、六次産業化をすれば補助金が取りやすい。 参考: 夏場のいちご狩りで観光農園化 夏いちご農家ではあまり先行事例がないが、冬いちごでは観光農園化が一般的だ。 大型の観光バスが停められる駐車場を用意して、観光ツアーを誘致できれば収益源になる。 最近では外国人観光客もいちご狩りに夢中だそうなので、夏場でも面白いかもしれない。 ただし、夏場のビニールハウスの中はサウナ状態なので、観光農園化には工夫が必要だ。 ソフトクリームと合わせて販売 苺は乳製品との相性が良いので、ソフトクリームなどの乳製品と合わせて販売している農園もある。 近くに牧場があればコラボするのもいいだろう。 ジャム加工 イチゴを栽培していると、どうしても売れない「クズイチゴ」が発生する。 一般的にはこのようなクズイチゴは、冷凍されジャムに加工されることが多い。 冷凍イチゴのかき氷、ドリンク 冷凍イチゴを使ったドリンクやかき氷の販売も可能だろう。 夏イチゴの産地 最後に、夏イチゴの産地について紹介しよう。 夏イチゴを育てるためには、 夏季冷涼な気候が必須。 なので、主に 北海道、東北地方、長野県で栽培されている。 1.北海道 多くの農作物と同じように、夏秋イチゴの最大産地もやはり北海道。 もう、北海道の面積はずるくない? 栽培方法 北海道では、主に高設栽培で夏秋イチゴが栽培されている。 主要品種 北海道の主要品種は、株式会社ホーブのペチカ・シリーズと、ホクサン株式会社のすずあかね。 売り先 北海道からは全国へイチゴが出荷されている。 2.東北地方(青森、秋田、山形、宮城) 東北地方の中でも、夏秋イチゴが盛んな県は 青森、秋田、山形、宮城。 栽培方法 東北地方では、土耕栽培がメイン。 新規就農者は高設栽培を選択することが多い。 主要品種 東北地方の主要品種は、ペチカ・シリーズやすずあかねなど。 売り先 主に東京などの関東圏へ出荷されている。 長野県 長野県も夏季冷涼な気候を生かして、夏秋イチゴ栽培が盛んだ。 栽培方法 長野県のほとんどの夏秋イチゴ農家が、高設栽培を取り入れている。 特に栽培面積が大きいのは、 東信地域にある佐久、野辺山地域。 主要品種 長野県の主要品種は、すずあかね、サマープリンセス、そして信大BS8-9。 長野県の夏秋イチゴの強みはなんといっても、品種の質の高さだ。 売り先 長野県産の夏秋イチゴは、主に関西圏へ出荷されている。 その他の夏秋イチゴ産地 小規模ではあるが、北海道、東北地方、長野県以外にも夏秋イチゴを育てている地域がある。 富士山麓の山梨県、静岡県 山梨県から静岡県にまたがる富士山麓の高標高地でも、夏イチゴが生産されている。 西日本(四国、九州)の高標高地 四国や九州の標高が高い地域では、涼しい気候を生かして夏イチゴが栽培されている。 【追記】イチゴの養液栽培のECについて イチゴの養液栽培のECについて、間違った認識が広がっているので書きました。 こちらを参考にしてください。 プロの農家の人も、家庭菜園をしている人も参考になると思います。 166• 126• 1 アーカイブ•
次の1,イチゴの収穫時期 ビニールハウスなどで栽培時期をコントロールせずに自然とイチゴが育った場合のイチゴの収穫時期は4月~6月である。 イチゴが春の果物と言われるのはこのような理由からである。 一方、日照や気温をビニールハウス内でコントロールしたイチゴは 12月のクリスマスシーズンなどに向けて貯蔵されたり需要に合わせて収穫される。 12月のイチゴが甘いイメージがないのは、イチゴの甘みは朝の低温に晒されることで増すからだ。 12月以降にさらに寒さが厳しくなるため、春先のイチゴは甘いのです。 イチゴを研究していた私の好みを教えると、 ずばり、3月が一番甘くて美味しい時期だと思います。 2,自然に育ったイチゴの方が味がよい? 最近ではビニールハウスなどの時期をコントロールするイチゴの栽培方法も向上したため、 このような育て方でもイチゴは十分に美味しく感じられる。 しかしやはり時期コントロールによって出荷されたイチゴは 時おり葉っぱが茶色っぽくなっていたり、味も少々、酸味が強い場合もある。 これはこの時期に合わせて保存されたりしたためである。 これはクリスマスケーキなどを食べる際にイチゴはあくまでもケーキを引き立てる役であり、 ある程度の美味しさ以上はイチゴのみの販売より求められないからかもしれない。 このように時期を操作して作ったイチゴは大量な需要に応えるために生産されているので、 イチゴそのものを売りにしている露地栽培よりは味が落ちることも場合によってはあるだろう。 3,家庭菜園のイチゴの収穫時期について 最近ではベランダで野菜を育てたりする園芸愛好家が増えている。 イチゴもその中の一つである。 主に園芸用のイチゴには一年に一回(4~6月)だけ収穫できる一季成りのものと、 年に数回(4月~7月、9月~10月)収穫できる四季成りの物に分けられる。 少し前までは四季成りの方が一季成りに比べて味が落ちると言われていたが、 最近では改良により四季成りも味が良くなっている。 最近では11月から6月まで収穫できるようになった。 いかがだったろうか? 収穫時期はかなりイチゴの味にやはり少なからず影響しているようだ。 露地栽培のイチゴとそうではないイチゴを食べ比べてみると違いが分かるかもしれない。 人気の記事:.
次のイチゴとして流通しているものは、ほぼ全てオランダイチゴ系である。 広義には Fragaria 全体を指す。 でのストロベリーはこの範囲である。 バラ科オランダイチゴ属の半落葉性草本であり、のに広く分布しているほか、や(の)中南部にも分布している。 さらに最広義には、同じバラ亜科で似た実をつける、 Rubus や属 Duchesnea を含める。 これらを、 ノイチゴ、と総称することもある。 オランダイチゴ属のの種にも、この総称に含まれているものがある。 から広く日本国内各地で生産されるようになったオランダイチゴ属は、では「苺」と表記される場合が多い。 ベスカやダルトニアナなどがある。 モウピネンシスやオリエンタリスなどがある。 特徴 [ ] である。 可食部はの発達したものであり、表面に分布する粒々がそれぞれである。 このような形態をとるものを()という。 独特の芳香があり、属名の由来にもなっている。 属名の Fragariaはで「香る」の意。 が豊富である他、として知られるの一種であるや抗作用のあるを含む。 生食の他、に加工されることも多い。 すると花托の肥大が始まるが、一部受精していないがあるとその部位の肥大が弱くなる。 したがって形の整った果実を作るためには、全てのがするようにする。 しかし、実際の栽培においては雌しべの先端部が未熟なまま開花するため 、均一な成長が行われるために花芽形成期の施肥と温度管理が行われる。 語誌 [ ] 「いちご」の語源ははっきりしない。 古くは『』(918年頃)や『』(934年頃)に「以知古」とある。 『』には「伊致寐姑(いちびこ)」、『』には「一比古(いちびこ)」とあり、これが古形であるらしい。 『本草和名』では、蓬虆の和名を「以知古」、覆盆子の和名を「加宇布利以知古」としており、近代にが舶来するまでは「いちご」は野いちご全般を指していた。 漢字には「苺」と「莓」がある。 これらはで「苺」がである。 辞典によっては「莓」が見出しになっていて、「苺」は本字としていることがある。 現代日本では「苺」、現代では「莓」を普通使う。 英語の strawberry(ストロベリー)は「 straw の berry 」と解釈できるが、そう呼ぶ理由ははっきりしない。 「藁を敷いて育てた」「麦藁に包まれて売られていた」「が麦藁に似ている」という説があり、さらに、 straw は藁ではなく、散らかす・一面を覆うを意味する strew の古語だという説もある。 近代栽培イチゴ(オランダイチゴ) [ ] 歴史 [ ] 北半球では古くから各地で野生イチゴの採集と利用が行われていた。 のトゥワン遺跡で出土した紀元前3830年から3760年頃ののからはイチゴの痩果が発見されている。 イチゴの栽培はでは既に行われており、14世紀から16世紀にはいくつかのが栽培されていた。 近代栽培イチゴであるオランダイチゴは、にの農園で、産のバージニアイチゴ F. virginiana とチリ産のチリイチゴ F. chiloensis のによって作られた。 北米原産のバージニアイチゴは探検家や植民者によって16世紀前半から18世紀半ばにかけて、度々ヨーロッパに持ち帰られた種で、を通じてヨーロッパ各地に普及した。 一方、チリ原産のチリイチゴはなどのによって長年栽培されてきた品種である。 チリイチゴは18世紀初頭から19世紀半ばにかけてヨーロッパに持ち帰られた種で、こちらも植物園を通じてヨーロッパ各地に普及した。 栽培 [ ] イチゴは土地にあった特有の栽培法を用いることで世界各地で栽培が行われている。 中国・・・日本は多雨湿潤気候に属しており、本来はイチゴの栽培に好適な気候ではないが、ビニール被覆による保温と雨除けを用いた栽培技術が普及している。 アジアのやの地域でもイチゴの栽培が行われている。 イチゴの摘み取り作業は色の判断と実を傷つけない繊細な動きが求められることから機械化が難しく、長らく手作業で摘み取られていた。 では露地栽培が主流であるため中腰での作業が長時間続く重労働であり、外国人労働者の仕事であった。 しかし不法移民の取締まり強化や人手不足で賃金が上昇しているため、中腰にならずに済むハウス栽培が増加しているほか、摘み取りからパック詰めまでを単独でこなすの開発が行われている。 利用 [ ] チョコレートイチゴ 生食が定番となっており、またはをかけたもの、イチゴ、イチゴなどの材料として利用され、やに練り込まれることも多い。 他には、、などのの装飾・や、などのの材料としても用いられる。 させたものを、などで包んだ菓子も作られている。 なお、の、、などのいちご味のものの多くはイチゴの成分を全く含まず、、などを配合して作ったイチゴと赤いで表現していることが多い。 などには製造過程において要する熱殺菌時にの崩壊とともに型崩れを起こすため不向きとされ、この理由から缶詰は造られてはいない。 イチゴにはが約350mgと豊富に含まれている。 また、(ビタミンC)にも富む。 日本での栽培 [ ] 日本にはにオランダ人によってもたらされた。 イチゴが一般市民に普及したのは1800年代であり 、本格的に栽培されたのは1872年(5年)からである。 イチゴ栽培が一つの産業として行われるようになったのはさらに遅く後少し経ってからである。 イチゴは1963年の農林水産統計表の品目に初めて登載された。 日本での生産量は年間約20万であり、そのほとんどは温室型の促成栽培で11月から翌年4月までに生産される。 5月から10月の生産量は1万トン以下であって、5に過ぎない。 冬から春に実をつける一季成りイチゴに対し、夏から秋にも実の成る品種は 四季成りイチゴと呼ばれ、 夏イチゴとも呼ばれている。 一季成り性品種と四季成り性品種では、花芽分化に関する特性が異なる。 温室型による促成栽培と露地栽培があり収穫時期と期間が異なる。 一季成り性品種の露地栽培の場合の収穫期は主に3月から4月頃。 があり 1年から4年で圃場を移動する。 温室型による促成栽培の場合の収穫期は10月下旬 - 翌年5月頃。 ハウス栽培ではも行われる。 通常は足下の高さの盛り土()に作付けするが、屈んだ作業となり従事者へ肉体的負担が大きいため、置き台などを利用し苗の高さを腰まで上げ負担を軽減するなどの工夫もみられる。 夏秋取り栽培の場合は、遮光栽培も行われる。 日本の路地栽培の場合、栽培が可能な程度の温暖な地域では開花期は3月から5月で、開花から約1カ月すると収穫可能となる。 7-9月 苗育成• 10-11月 植付け• 3-5月 開花• 4-5月 収穫• 「」も参照 一季成り性品種の苗は花芽分化後に低温と日長の休眠期を経ないと成長と開花が行われない。 つまり、秋から春に収穫するためには夏に苗を「冷蔵庫に入れる」「高原などの冷涼地で育てる」などの方法で低温処理()と遮光で休眠(強制的に 冬を)経験させる。 この休眠打破処理により開花時期と収穫時期をずらすことが可能になる。 この方法を経ないと一季成り性品種で10月下旬 - 翌年5月頃の収穫は行えない。 また、新しい苗を毎年植え替えなければならない。 促成栽培に最適な休眠温度条件や日長に対する感受性は品種により異なり、土中の分の条件でも変化する。 四季成り性品種では、人工的な休眠は行われない。 日本の主な商業栽培品種 [ ] 2009年2月2日の時点では登録品種は157種。 2016年11月14日の時点では、登録品種は258種、そのうち登録維持されているのは129種。 日本の主な商業栽培品種 品種名 (一般名) 品種登録年 特徴 外部リンク とよのか 1984年 この品種は、(旧・野菜試験場久留米支場)(福岡県)において、昭和48年(1973年)に「ひみこ」に「はるのか」をし、以後、選抜を重ねて育成したものである。 1980年から 3カ年系統適応性検定試験および特性検定試験を行い、1983年5月農林水産省育成農作物新品種として登録された。 なお、出願時の名称は「イチゴ久留米42号」であった。 酸味が少なく大粒で甘い(粒が大きいほうが甘い)。 九州を中心に広く栽培される。 1980年代から1990年代後期までは「 東の女峰、西のとよのか」と呼ばれるほどで、二大勢力の一つであった。 2017年現在では売れ筋こそ後続のより大粒な品種に奪われているが、等でよく目にできる定番の品種である。 女峰 (にょほう) 1985年 栃木県農業試験場によって九州の「とよのか」に対抗して、「麗紅」に変わる品種を育成する目的で「はるのか」「ダナー」「麗紅」を交配。 に因んで名付けられた。 糖度が極めて高く酸味も適度にあり、甘酸っぱい味が特徴。 さらには色が鮮やかで外観が良いといった見栄えする点から、ショートケーキ等に向けた業務用イチゴとしても使われていた。 の名に因んで名づけられている。 の耐性はやや高。 主にで栽培されている。 章姫 (あきひめ) 1992年 萩原章弘()が、「女峰」と「久能早生」を交配。 女峰の酸味、病害抵抗性などの問題点を解決するため改良された。 品種名は、品種改良者の章の字に因んで命名されている。 女峰より大きく、細長い形をしている。 は高く(10度以上)、酸度は少ない(0. 5-0. 6程度)。 休眠が浅く、暖地での施設栽培に向く。 雷峰 (らいほう) 1992年 円雷と女峰の自殖系。 とのバランスが良く、食味良好で、果肉が硬く、日持ちが良い。 の加工用に多く用いられる。 一年を通して栽培。 主な産地は宮城県、北海道、山形県、長野県など。 レッドパール 1993年 愛媛県の生産者が「とよのか」と「アイベリー」を交配。 両者の特徴に加え、とちひめ同様中まで赤い。 生産量が少ない種。 ケーキ、高級菓子用。 アスカウェイブ 1994年 が「久留米促成 3号」「宝交早生」「ダナー」「神戸1号」を交配。 アスカルビーが開発されるまで、同県での主力品種。 赤みが強く、甘みと酸味のバランスがよい。 当初は「アスカエース」と呼ばれていた。 出願時の名称は「愛知 2号」。 かつて徳島県の30数軒の農家で主に栽培されていたが、現在は栽培されていない。 奈良県や愛知県、福岡県等で手に入れることができる。 などで人気である。 「ももいちご」の別称は大粒での形に似ていることから名前が付いたとされる。 栽培が広がる過程で「愛知2号」の名称だったため、奈良県の生産者達がそう呼び始めたのが最初である。 一季成。 越後姫 (えちごひめ) 1996年 で「ベルルージュ」「女峰」「とよのか」を交配。 糖度が高く、種子が果肉に埋もれることから美しい外観を持つ反面、果肉が柔らかいため輸送性に劣り、その大半が県内で消費される。 新潟県内で生産される生食向けいちごの大半は越後姫である。 とちおとめ 1996年 により「とよのか」と「女峰」を交配し、さらに「栃の峰」を交配。 女峰より粒が大きく甘さも強い、日持ちが良い品種。 従来の二大勢力であった「とよのか」「女峰」に代わり日本一の生産量を誇る(2019年現在 )。 アスカルビー 2000年 が「アスカウェイブ」と「女峰」を交配。 果実は円錐形で赤く艶があり甘みも強い。 宝石のように見えることからこの名が付いた。 登録前の名称は「奈良 7号」。 奈良県内の他、近年は全国各地での生産も多いが、別のブランド名になっているものが多い。 さちのか 2000年 農研機構が「とよのか」と「アイベリー」を交配。 糖度(平均糖度10度)が高くて、酸度は低い(平均酸度0. 59)。 果実は硬めで日持ちがよい。 さがほのか 2001年 佐賀県で「大錦」と「とよのか」を交配。 佐賀県生産の 9割のシェアを持つ。 とちひめ 2001年 栃木県で「栃の峰」と「久留米49号」を交配。 中まで色が赤く甘さが強い、果実が軟らかいため観光イチゴ狩り用。 アマテラス 2002年 福岡県の農家が「とよのか」と「鬼怒甘(女峰の種)」を交配。 果実は円錐形でかなり大きい。 大型の施設栽培に向く品種である。 ネット通販などで人気である。 福岡S6号 (あまおう) 2003年 で「久留米53号」に出願者所有の育成系統を交配。 「あ」かい、「ま」るい、「お」おきい、「う」まいの頭文字をとって名づけられた品種。 福岡県では栽培品種が「とよのか」から急速に「あまおう」に置き換わっている。 一粒40gにもなる。 なお「あまおう」はのである。 紅ほっぺ (べにほっぺ) 2002年 静岡県が「章姫」と「さちのか」を交配。 章姫と比較し、果心の色が淡赤・花房当たりの花数が少ない。 「さちのか」と比較して小葉や果実が大きく、花柄長が長い。 色や光沢の良い夏イチゴ(四季成)。 しかし、実が軟らかいため、輸送に向かない。 エッチエス138 (夏実) 2004年 の育成品種。 実肉が硬く暑さに強い、日持ち性・輸送性に優れる夏イチゴ。 四季成り性品種。 夏娘 (カレイニャ) 2004年 北海道の生産者による「みよし」と「サマーベリー」の交配種の実生選別種。 糖度は高いが、表皮の色が斑で光沢が少なく軟らかい夏イチゴ(四季成)。 酸度はやや低い。 やよいひめ 2005年 によって育成された品種。 特長としては、果実が大果でかつ果肉がしっかりして日持ちが良いことが挙げられる。 食味は酸味まろやかで、糖度は高くジューシーである。 果色は明るく、高温期に黒ずむことがない。 ペチカ (ペチカプライム) 2007年品種登録出願 株式会社ホーブ(北海道)が「大石四季成2号」と「サマーベリー」を交配。 甘みが控えめで見栄えのよい四季成りイチゴ。 夏場の端境期に出荷され、香りが多くケーキ用として輸入品に対抗。 かおり野 2010年 が開発したイチゴ新品種。 果実が大きく、酸味が低めで、爽やかな甘さが特徴。 イチゴの最重要病害「」に対して抵抗性を持つという、全国のイチゴにない長所を持つ。 和田初こい (初恋の香り) 2009年 果皮の色は淡紅。 熟しても赤くならないイチゴ。 時に偶然発見された。 実は大きく、香り高いのが特徴。 同じく白いイチゴであると混同されやすいが、異なる。 桜桃壱号 (桜桃苺) 2015年 福岡県の生産者による「アマテラス」と「紅ほっぺ」の交配種の選別種。 果実の大きさは極大。 果実の縦横比は同等、果実の形は円錐形。 ネット通販などで人気である。 千葉S4号 (チーバベリー) 2015年 で1996年に「みつる」と「章姫」を交配後、2012年までに「栃の峰」「とちおとめ」と交配し、選別を繰り返して出来た種。 大粒で果汁が多く、に強い。 「チーバベリー」という愛称は公募。 ダイアモンドベリー 2002年品種登録出願 福岡の生産者による、「さがほのか」と「久留米54号」の交配により育成。 実は大きめで促成栽培に向いている。 咲姫 (サキヒメ) 2014年品種登録出願 2017年品種登録 佐賀県のイチゴ農家が、「やよいひめ」と「さがほのか」の交配により育成。 果実は大果で、糖度が高く酸味が少ないため、のようなジューシーな味わいが特徴。 「さがほのか」に代わる新たなブランド品種として期待されている。 大分6号 (ベリーツ) 2017年 「大分中間母本」と「かおり野」の交配品種。 極早生性で果実は鮮やかな赤色で、糖度が高い。 過去の商業栽培品種 宝交早生 不明 「八雲(幸玉)」と「タホー」を交配したものを、が1960年に発表。 で生れたため「宝交」と命名された。 新品種が登場する1980年代まで、イチゴを全国に普及させた代表的品種であった。 寒冷地の露地栽培に向く。 甘みが強く、果実が軟らかい。 アイベリー 不明 交配データ不明。 愛知県の愛三種苗が作出。 普通のイチゴの2~3倍の大きさがある。 愛知県で育成されたことから、この名前が付いた。 ダナー種 を中心に広く栽培された。 2017年時点、主流の品種に比較すると酸味があり甘みは弱く、小粒。 終戦後、より導入され、昭和50年代頃まで栽培されていたが新種に淘汰された。 日本の主な産地 [ ]• 北海道• 青森県• - などでは寒冷に強い品種を端境期に合わせて栽培している。 宮城県 - 主産地のがによるに伴うなどにより打撃を受け、大きく収穫量を落としていたが、後に最先端の栽培システムなどの集約型農業で再生、2017年には再び全国10位以内にランクインした。 2008年頃からは寒冷に強い県独自の品種「もういっこ」の栽培面積が増えている。 福島県• (旧、旧、旧)、など• 茨城県 - 収穫量国内上位。 「いばらキッス」という新品種を売り出している。 また、首都圏への近接性から摘み取り園も多い。 (旧、旧)、(旧、)、(旧)、(旧)、(旧)• 栃木県 - 収穫量1位を半世紀維持しており、2019年に「いちご王国・栃木検定」をスタートした。 二宮町(現・)が全国で初めてウォーターカーテンによる栽培法を確立した。 かつては「女峰」が知られ、後に「とちおとめ」が主流となったが、福岡産の「あまおう」に対抗するためブランドイチゴ「スカイベリー」を開発。 真岡市(旧二宮町、旧真岡市)、、、、(旧西方町、旧都賀町)、、、、、など• 群馬県• 、、、など• 埼玉県 - 収穫量国内上位。 かつては全国1位になったこともある。 「とちおとめ」「やよいひめ」の栽培が盛ん。 (旧菖蒲町)、、、(旧)• 千葉県 - 収穫量国内上位。 旭市や山武市などが主産地。 県内独自品種「チーバベリー」の栽培を推進している。 (旧旭市、旧飯岡町)、、(旧)など• 神奈川県• 長野県• 岐阜県• (旧)、• 静岡県 - 収穫量国内上位。 の栽培がよく知られ、「章姫」などが有名であったが、今日では人気品種の「紅ほっぺ」栽培に切り替わっている。 また、「きらぴ香」栽培も増えている。 (、)、(旧)、(旧)、(旧掛川市、旧大東町)、、• 愛知県 - 収穫量国内上位。 (旧立田村)、、(旧吉良町)、(旧御津町)、、、、(旧)、• 三重県• 、(旧小俣町)、• 奈良県 - 随一のイチゴ産地。 「アスカルビー」「古都華」などのブランド品がある。 加えて、奈良県農業研究開発センターが作出した新品種「珠姫」の販売が始まっている。 和歌山県• (旧、旧)• 岡山県 - 品種「おいCベリー」を県産統一ブランド「晴苺」として売り出している• 徳島県 - の「ももいちご」「さくらももいちご」が知られる。 、、佐那河内村• 香川県• 愛媛県• (旧)• 福岡県 - 収穫量国内2位。 かつては「とよのか」の産地で知られ、県独自ブランド品種「あまおう」の産地として知られる。 (旧黒木町、旧八女市、旧立花町)、、、、、、(旧)、• 佐賀県 - 収穫量全国上位。 県の主要品種「さがほのか」が知られ、県外許諾を行ったため、産地はやなどにも広がっている。 (旧唐津市、旧肥前町、旧浜玉町)、(旧白石町、旧有明町、旧福富町)、、、ほか• 長崎県 - 収穫量国内上位。 「さがほのか」の主産地の一つでもあり、県独自品種「ゆめのか」の栽培も推進している。 雲仙町(国見町)、、、(旧瑞穂町)、(、北有馬町、)、(旧有家町)ほか• 熊本県 - 収穫量国内上位。 沿岸が主産地で、玉名市などが一大産地。 県独自品種「ゆうべに」の栽培を推進している。 (旧、旧、旧玉名市)、(旧竜北町)、、(旧、旧山鹿市)、(旧)• 大分県• 宮崎県• 鹿児島県• (旧有明町)、(旧) 日本での流通 [ ] 本来は初夏(5 - 6月)が露地栽培品のであるが、1990年代以降はの材料としての需要が高まる12月から年末年始にかけて出荷量が最も多くなる傾向がある。 逆に、5月を過ぎると流通量と生産量は減る。 秋口は露地栽培品とハウス栽培品は端境期であるため、生食用のイチゴはほぼ全量を輸入に頼っているが時間や鮮度の問題があるため、青森県の下北地方では端境期を狙ったイチゴ栽培が盛んになっている。 日本の生鮮イチゴの主な輸入元はで、ついで、である。 冷凍イチゴの主な輸入元はで、その他、、、などから輸入されている。 生鮮イチゴ、冷凍イチゴの輸出国世界1位はであり、生鮮イチゴの1年の輸出量は20万トン、冷凍イチゴの輸出高は8400万ドルに及ぶ。 も主な輸入先だったが、後述する事件の余波もあり、今日では輸入量は激減している。 韓国における日本産品種の無断栽培問題 [ ] 2000年代のでのイチゴ生産の多くは、日本で開発されたレッドパール、章姫などといった品種であった。 これらの品種は UPOV によりの概念が導入されており、該当品種栽培が権利化された国で販売する場合、栽培者はその品種の開発者に対して栽培料 ロイヤリティー を支払うこととなっている。 しかし韓国の生産者はロイヤリティーを支払わずに韓国で生産した日本産品種を日本に逆輸入させていた。 これらはいずれも韓国の一部の生産者に許諾が与えられたものが、無断で増殖されたものである。 日本政府はロイヤリティーの支払いを強い姿勢で求めたため、韓国では章姫、レッドパール、とちおとめ等を交配して、雪香、苺香、錦香等が開発さた。 韓国のは「韓国で開発したイチゴ新品種の国内栽培比が日本品種を追い越した」「国内品種の栽培率が高まったのは、日本品種に比べておいしい上に収穫量が多く、病害虫に強くて栽培技術も安定化されたため」と報じた。 実際、2010年代の韓国産品種の輸出量は日本産品種の輸出量を圧倒しており、は日本産品種を交配して作られた韓国産品種がアジア市場に流れたことにより、日本のイチゴ業界は5年間で最大220億円分の輸出機会を失ったと推計している。 植物工場での栽培 [ ] がに完全制御型による1万株規模のいちご栽培を国内で初めて成功させたのち、栽培設備を各地の事業所に導入して生産を拡大させた。 2013年には新潟の建設会社が「いちごカンパニー」を設立 、2014年にはが参入 、2018年には・NTTスマイルエナジーがトライアルを開始 するなど、業者が拡大している。 アメリカにも日本系の「Oishii Farm」がに初のイチゴ植物工場を設立した。 参考画像 [ ]• 米倉浩司・梶田忠 2003-. 2013年10月25日閲覧。 田中敬一. くだもの・科学・健康ジャーナル. 2012年4月30日閲覧。 科学/植物(2019年12月31日閲覧)• 『』2019年12月8日(フード面)2019年12月31日閲覧• 869-879, :• 吉田裕一、大井美知男、藤本幸平「」『園芸学会雑誌』1991年 59巻 4号 p. 727-735, :• George McMillan Darrow 1966. The Strawberry: History, breeding and physiology. New York: Holt, Rinehart and Winston. 農山漁村文化協会 編『イチゴ大事典』農山漁村文化協会、2016年、11頁。 (歴史博物館所蔵)• 新須利則、小川義雄、樋口泰三「」『九州病害虫研究会報』1977年 23巻 p. 43-47, :• 吉原泉, 矢田部健一, 村上文生,「」『栃木県農業試験場研究報告』 46号, 栃木県農業試験場, 1997年12月, p. 43-48, ,• 光畑雅宏「マルハナバチ普及の現場から--ポリネーターとしての利用の現状と将来」『ミツバチ科学』第21巻第1号、玉川大学ミツバチ科学研究所、2000年2月、 17-25頁、 、。 2009年2月2日. 2009年2月2日時点のよりアーカイブ。 2012年4月30日閲覧。 農林水産省、品種登録データ検索での検索結果。 2016年11月14日時点。 統計情報検索 品目別取扱実績(いちご類)• ニュース(2019年3月8日)2019年4月10日閲覧。 『』2020年1月24日(食品・日用品・サービス面)2020年1月25日閲覧• さんデジ(2019年12月18日)2020年2月8日閲覧• 이은파 2009年10月20日. 韓国語. Yonhapnews. 2012年4月30日閲覧。 『』朝刊2017年12月18日• OPTRONICS ONLINE 2013年6月5日. 2019年3月4日閲覧。 『』 2018年9月27日. 2019年3月4日閲覧。 LED NEXT STAGE(日経メッセ) 2014年9月4日. 2019年3月4日閲覧。 NTTスマイルエナジー - ~みんなで創る笑顔のエネルギー社会を目指して~ 2018年12月13日. 2019年6月14日閲覧。 プラスパラビ 2019年2月26日. 2019年3月4日閲覧。 関連項目 [ ] ウィキメディア・コモンズには、 に関連するメディアがあります。 ウィキメディア・コモンズには、 に関連するメディアがあります。 ウィキスピーシーズに に関する情報があります。 に関連の辞書項目があります。
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