腹部 コンパートメント 症候群。 コンパートメント症候群の予防とケア【いまさら聞けない看護技術】

2キロの便秘が原因で下半身麻痺!!??ヘタすりゃ多臓器不全で死の可能性も。|五本木クリニック院長ブログ

腹部 コンパートメント 症候群

CONTENTS• 便秘が原因で生命が脅かされることがあるのだろうか? ダイエット業界で使用される「宿便」という用語の怪しさについて、以前こんなブログを書きました。 宿便、宿便といって大量の便が排出されたとしても、それによって体重が減少したとしても数百グラム程度だろうなあ、と以前から考えていたのですが、私の考えは間違っていました。 なんと 腸に詰まっていた便の総量が2キログラム!! との症例報告を発見してしまったのです。 さらに、便秘くらいで死に至ることなんて通常ありえないよ、と考えてきたのも大間違い。 自分の医学知識の至らなさを反省しつつ、2キログラムにも及ぶ便秘が原因で生命さえ危うくなった人と記憶喪失になった人の原因と結果について述べさせていただきます。 生命の脅かす腹部コンパートメント症候群と便秘の関係 なんとなーく医学誌をパラパラめくっていて、「abdominal compartment syndrome」という病名が目に入ってきました。 これはなんだろう、と調べてみると日本語では「腹部コンパートメント症候群」と呼ばれているようです(この用語、本当に今まで全く記憶になく、知らなかったです)。 お腹の病気や症状を舐めてかかると痛い目に会うことは、医師の間では常識です。 この「abdominal compartment syndrome」というキーワードと便秘の英訳「constipation」や「case report」とかを組み合わせてネット検索をしてみると、出てくるわ、出てくる、世界中の便秘を拗らせたと思われる症例の論文が・・・。 その中でこんな論文を見つけました。 「Massive faecal impaction leading to abdominal compartment syndrome and acute lower limb ischaemia」( 、これフルテキストで読むと27. 60ユーロもかかってしまうので、この論文関連の記事を探したところ見つかったのがこれ!! この写真の元ネタは例の英国の東スポとも呼ばれている「The Sun」、医学情報ブログとしては症例写真としてアップすることによって、品位品質が問われそうだけど・・・。 この記事の一次ソースとなった前掲のBMJによれば腹部コンパーメント症候群によって動脈の閉塞や生命を脅かす腎障害になってしまった57才の男性が開腹手術をしたところ、なんと2キログラムの大便が摘出されたそうです。 画像の黒い部分が原因不明で詰まってしまった大便です。 一回の排便量は大体200グラム程度と考えられていますので、10回分のウンチが腸内に溜まっていたようです(これを宿便と呼ぶかは別問題だよ)。 腹部コンパーメント症候群とは 便秘、あるいは宿便(?)イコール腹部コンパーメント症候群ではありません。 腹部コンパーメント症候群とは 腹腔内大量出血,後腹膜血腫,腸管浮腫などによって腹腔内圧が上昇することで呼吸・循環障害を生じる病態の総称。 日本救急医学会サイトより なんらかの原因よってお腹の中の圧力が高まって、関連する臓器に障害が起きる総称が腹部コンぱーメント症候群の定義です(っていうか、今回の件で調べて知りましたけど)。 内臓の血液循環不全の原因が2キロにも及ぶ腸管に詰まった大便だったのが、今回の症例報告です。 宿便を排出することによってダイエットは可能か? ネット広告やテレビのCMや雑誌広告で見かけるダイエットサプリの多くは、腸内に働きかけてぽっこりお腹をスッキリさせることのよって、体重が減少してダイエット効果あり、というロジックがほとんどです。 しかし、今回のBMJのケースレポートにあったように、数キロにも及ぶ大便が体内に滞ってしまった場合、腹部コンパーメント症候群という緊急治療・緊急手術が必要な重篤な病状になっている可能性があります。 ダイエット効果が発揮されるくらい大便が腸内に溜まっているなら、サプリなんか注文しないで、さっさと医療機関を受診するべき!! と私は判断します。 ダイエット食品によって5キロ以上も減量が可能な人は腹部コンパーメント症候群の危険性は無いのでしょうか? 2キロの大便が詰まってしまって、命に関わる稀なケースとして権威ある医学専門誌に掲載されるくらいなんですから、このダイエット食品のダイエット成功症例(?)はぜひ医学専門誌に報告をお願いできれば、なんてことを考えてしまいます。

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2キロの便秘が原因で下半身麻痺!!??ヘタすりゃ多臓器不全で死の可能性も。|五本木クリニック院長ブログ

腹部 コンパートメント 症候群

日本医科大学大学院医学研究科 救急医学分野 准教授 松本 尚 腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome:ACS)とは、外傷外科、消化器外科の領域において留意しなければならない重要な術後合併症の一つで、腹腔内圧(intra-abdominal pressure:IAP)の急激な上昇によって生ずるいくつかの病態の総称です 1)2)3)。 重症の腹部外傷や腹部大動脈瘤破裂、汎発性腹膜炎などの周術期には、出血傾向や炎症の波及によって腹腔内や後腹膜への液体貯留が起こります。 また、出血性ショックや敗血症性ショックに対応するための術前、術中の大量輸液により、腸管と腸間膜には著しい浮腫を生じます。 これらの結果として、腹腔内容積は極端に大きくなりIAPの上昇をもたらします。 実験によれば、IAPの上昇によって副腎を除く腹腔内臓器の血流は著しく低下すると言われています。 臨床的には、下大静脈が圧迫され静脈還流量が減少するために心拍出量が低下し、これに伴って尿量も減少します。 腹部は膨満するので横隔膜が挙上し、気道内圧が上昇するとともに換気量は低下します。 IAPの上昇によって起こるこのような一連の呼吸・循環動態の変化がACSです。 IAPは膀胱内圧とほぼ相関するので、ベッドサイドで容易にモニターできます。 膀胱内に50~100cc程度の水が入っていれば、膀胱壁を介して腹腔内圧を感知できるからです。 尿道留置バルーンカテーテルを使用して測定される膀胱内圧が、12mmHg以上であれば腹腔内圧が上昇していると判断され、20mmHg以上であれば臨床症状がなくてもACSと診断されます 4)。 IAPの上昇は再開腹を行うことで容易に減圧できます。 減圧直後から気道内圧は低下し、高炭酸ガス血症の改善、心拍出量の増加による血圧の上昇と尿量の回復などが得られます。 再開腹による減圧でACSの病態は劇的に改善されるため、ACSと診断した際には減圧術の決断を躊躇してはいけません。 問題となるのは再開腹した後の、open abdominal managementといわれる腹壁創の管理です。 かつては高カロリー輸液用の輸液バッグを用いて、皮膚に連続縫合するsilo closureがよく行われていましたが、最近ではvacuum-assisted wound closureを行うことが多くなっています 5)(図1)。 この方法は、腹腔内と外界の確実な遮断と浸出液の持続吸引が同時に可能な点で、silo closureより優れています。 腹壁の閉鎖は循環動態が安定し、腸管の浮腫が消退する時期を見計らって行います。 一度に閉腹できなければ、腹腔内洗浄と仮閉腹を行いながら1~2週間ほどかけて徐々に閉腹していきます。 図1:vacuum-assisted wound closure 文献 1)Whelan JF, et al : Abdominal compartment syndrome, Open abdomen, Enterocutanenous fistulae. Peitzman AB, et al, eds, The Trauma Manual : Trauma and Acute Care Surgery, 4th ed. Lippincott Williams and Wilkins, Philadelphia, 529-534 2013 2)Schein M, Ivatury R : Intra-abdominal hypertension and the abdominal compartment syndrome. British J Surg, 85, 1027-1028 1998 3)Cheatham ML, et al : Results from the International Conference of Experts on Intra-abdominal Hypertension and Abdominal Compartment Syndrome. Recommendations. Intensive Care Med, 33, 951-962 2007 4)Balogh Z, et al : Secondary abdominal compartment syndrome : a potential threat for all trauma clinicians. Injury, 38, 272-279 2007 5)Kirkpatrick AW, et al : Intra-abdominal hypertension and the abdominal compartment syndrome : updated consensus definitions and clinical practice guidelines from the World Society of the Abdominal Compartment Syndrome. Intensive Care Med, 39, 1190-1206 2013.

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コンパートメント症候群の原因と症状。急性期と慢性期の治療と手術について

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日本医科大学大学院医学研究科 救急医学分野 准教授 松本 尚 腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome:ACS)とは、外傷外科、消化器外科の領域において留意しなければならない重要な術後合併症の一つで、腹腔内圧(intra-abdominal pressure:IAP)の急激な上昇によって生ずるいくつかの病態の総称です 1)2)3)。 重症の腹部外傷や腹部大動脈瘤破裂、汎発性腹膜炎などの周術期には、出血傾向や炎症の波及によって腹腔内や後腹膜への液体貯留が起こります。 また、出血性ショックや敗血症性ショックに対応するための術前、術中の大量輸液により、腸管と腸間膜には著しい浮腫を生じます。 これらの結果として、腹腔内容積は極端に大きくなりIAPの上昇をもたらします。 実験によれば、IAPの上昇によって副腎を除く腹腔内臓器の血流は著しく低下すると言われています。 臨床的には、下大静脈が圧迫され静脈還流量が減少するために心拍出量が低下し、これに伴って尿量も減少します。 腹部は膨満するので横隔膜が挙上し、気道内圧が上昇するとともに換気量は低下します。 IAPの上昇によって起こるこのような一連の呼吸・循環動態の変化がACSです。 IAPは膀胱内圧とほぼ相関するので、ベッドサイドで容易にモニターできます。 膀胱内に50~100cc程度の水が入っていれば、膀胱壁を介して腹腔内圧を感知できるからです。 尿道留置バルーンカテーテルを使用して測定される膀胱内圧が、12mmHg以上であれば腹腔内圧が上昇していると判断され、20mmHg以上であれば臨床症状がなくてもACSと診断されます 4)。 IAPの上昇は再開腹を行うことで容易に減圧できます。 減圧直後から気道内圧は低下し、高炭酸ガス血症の改善、心拍出量の増加による血圧の上昇と尿量の回復などが得られます。 再開腹による減圧でACSの病態は劇的に改善されるため、ACSと診断した際には減圧術の決断を躊躇してはいけません。 問題となるのは再開腹した後の、open abdominal managementといわれる腹壁創の管理です。 かつては高カロリー輸液用の輸液バッグを用いて、皮膚に連続縫合するsilo closureがよく行われていましたが、最近ではvacuum-assisted wound closureを行うことが多くなっています 5)(図1)。 この方法は、腹腔内と外界の確実な遮断と浸出液の持続吸引が同時に可能な点で、silo closureより優れています。 腹壁の閉鎖は循環動態が安定し、腸管の浮腫が消退する時期を見計らって行います。 一度に閉腹できなければ、腹腔内洗浄と仮閉腹を行いながら1~2週間ほどかけて徐々に閉腹していきます。 図1:vacuum-assisted wound closure 文献 1)Whelan JF, et al : Abdominal compartment syndrome, Open abdomen, Enterocutanenous fistulae. Peitzman AB, et al, eds, The Trauma Manual : Trauma and Acute Care Surgery, 4th ed. Lippincott Williams and Wilkins, Philadelphia, 529-534 2013 2)Schein M, Ivatury R : Intra-abdominal hypertension and the abdominal compartment syndrome. British J Surg, 85, 1027-1028 1998 3)Cheatham ML, et al : Results from the International Conference of Experts on Intra-abdominal Hypertension and Abdominal Compartment Syndrome. Recommendations. Intensive Care Med, 33, 951-962 2007 4)Balogh Z, et al : Secondary abdominal compartment syndrome : a potential threat for all trauma clinicians. Injury, 38, 272-279 2007 5)Kirkpatrick AW, et al : Intra-abdominal hypertension and the abdominal compartment syndrome : updated consensus definitions and clinical practice guidelines from the World Society of the Abdominal Compartment Syndrome. Intensive Care Med, 39, 1190-1206 2013.

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