この 世界 の 片隅 に 解説。 【解説レビュー】『この世界の片隅に』は、すべての人に観てほしい傑作

町山智浩 『この世界の片隅に』徹底解説

この 世界 の 片隅 に 解説

かるび( です。 【2017年12月9日最終更新】 話題のアニメ映画「この世界の片隅に」を見てきました。 制作費の大半を賄ったクラウドファンディングや、女優として再起をかける「のん」が主人公のすず役の声優を務めたことなど、口コミで話題が広がった作品です。 初日に行ってきたのですが・・・ 驚いたのは、 なんと終演後、フツーのシネコンなのに会場内から自然発生的に拍手が出てきたこと!その後、パンフレット購入に長蛇の列ができるなど、見終わった後のお客さんの反応や熱量も抜群でした。 早速、以下感想レポートを書いてみたいと思います。 1.映画の基本情報 <オフィシャル予告動画> 【監督】片渕須直 (「 」「マイマイ新子と千年の魔法」他) 【脚本】片渕須直 【原作】こうの史代( ) 【音楽】 映画作品では前作でカルト的人気を博した単館系作品、 以来、メガホンを取るのは7年ぶりとなった片渕須直が監督。 今作の製作途中で行われたクラウドファンディングによる資金調達では、短期間で4,000万円弱を集め、公開前からその期待は非常に大きかったのです。 のんこと能年玲奈への旧事務所および音事協の放送メディアへの圧力は「彼女を出演させるな」につきるので『この世界の片隅に』という作品そのものはいくら取り上げてもかまわないのに、テレビが全然扱わないのは単なるビビリの自主規制ですね。 — 町山智浩・告知用 TomoMachi 主役、すずの声を務めた能年玲奈ことのんに対する大手芸能事務所のあからさまなメディア締め出し(疑惑?)により、 十分な広告宣伝がテレビ・ラジオ等で行えなかったにもかかわらず、映画評論家をはじめ、見終わった人が絶賛するなど、ネット経由の口コミで人気が広がりました。 現在、公開6週目となりますが、お正月には公開館数が200館を突破するなど、一般への認知度も上がってきました。 すでに興収は10億の大台を突破。 まだまだ上映は終わる気配がありませんので、 最終的な興収予測は20億超えもありうるかもしれません。 2.主要登場人物とキャスト 北條すず(CV:のん) 本作の主人公。 のんびりマイペースで、天然キャラ。 誰からも好かれる憎めない性格で、北條家では控えめに振る舞う。 北條周作(CV:細谷佳正) すずの夫。 海軍の軍法会議所で録時として働いている。 運動神経は鈍く、優しく温厚な性格。 黒村径子(CV:尾身美詞) 周作の姉で、旦那と死に別れて離縁し、子供の晴美とともに北條家へ戻ってくる。 一人息子は下関の黒村家にいる。 すずには厳しくあたりがち。 黒村晴美(CV:稲葉菜月) 径子の娘。 径子とともに北條家へ来てから、すずになついている。 別れた兄の影響で、軍艦に詳しい。 白木リン(CV:岩井七世) 呉の繁華街の遊郭で働く。 すずが道に迷った際、すずに道案内して交流する。 小さい頃から叔母の家で座敷わらしと交流したり、街に出た時に人さらいおばけに出くわしたり、日常的に非現実的な出来事も多かった不思議系少女でもあった。 すずの特技は、絵を描くこと。 中学の時、クラスのガキ大将で幼馴染だった 水原哲 (CV:小野大輔)の代わりに描いた海の風景が、(水原哲の名前で)絵画コンクールで受賞したこともあった。 そんなすずに転機が訪れたのは18歳の時。 電車を乗り継いで広島から2時間程離れた呉の高台にある北條家の長男で、呉の鎮守府内の海軍軍法会議で「録時」として働く 北條周作(CV:細谷佳正)からの指名で、嫁入りすることに。 右も左も分からない中、祝言を挙げ、北條家へ嫁いだすず。 小姑である周作の姉である 径子(CV:尾身美詞)は性格からなのか、すずにきつく当たってくる。 慣れない中、頭にハゲができたりもするが、夫、周作のサポートなどもあり、すずは持ち前の明るさで、徐々に北條家にとけこんでいく。 夫の死後、離縁して実家に帰ってきた径子の連れ子、 晴美(CV:稲葉菜月)からはよくなつかれ、一緒に遊んだり、絵を描いたりと楽しく交流する毎日だった。 ある日、晴美が貴重な砂糖壺を水の中に流してしまったので、呉のヤミ市へ買いにでかけたすずは、その帰り道で道に迷ってしまう。 そこで遊郭の 白木リン(CV:岩井七世)とはじめて出会う。 別の日に、軍法会議所での勤務が終わった周作と呉の町中で合流し、たまの夫婦水入らずの夕方を過ごしたすずは、周作から「やせた」と指摘され、妊娠の疑いから病院へ検診に行ったが、結局ただの夏バテによる体調不良だった。 昭和20年になると、いよいよ軍事基地がある呉にも空襲が頻発し、周作も家を3ヶ月間離れることになった。 また、工廠で航空機エンジニアとして働く義父の 円太郎(CV:牛山茂)も空襲で大ケガをして、町の病院に入院しているという。 晴美を疎開させるため、切符を購入する待ち時間の間に、晴美を連れて円太郎の見舞いに出かけたすずだったが、その帰りに空襲に遭遇する。 すぐ近くの防空壕で晴美と難を逃れたが、空襲が終わって防空壕を出た時、時限爆弾が爆発し、晴美は死に、すずは絵を描くための大切な右手を失った。 径子からは「人殺し」となじられ、さすがのすずも自分を責め自暴自棄になる。 7月に入ると、さらに戦況は悪化する。 北條家にも焼夷弾が落ちたり、至近距離から機銃掃射による空襲を受けたり、常に命の危険にさらされながら、「帰りたい」と周作に訴えるなど、不安定な心のまま毎日をすごすすず。 そして8月6日の朝。 径子から、「人殺し」と非難されたことについて謝罪を受け、思いがけなく優しい言葉をかけられ、心がほぐされたすずだったが、和んだのもつかの間。 広島で原爆が落ち、ものすごい地響きとキノコ雲を見て不安になるすずだった。 そして、終戦。 一家そろって玉音放送をラジオで聞いた北條家。 「晴美・・・」と言って泣き崩れる径子。 自宅裏の畑で泣き崩れたすず。 終戦を区切りとして、その日、すずの義母、 サン(CV:新谷真弓)はとっておきの白米を一家に振る舞った。 終戦後、進駐軍が占領を開始すると、軍で働いていた円太郎と周作はお役御免となり、自宅へと帰ってきた。 浦野家では、原爆が落ちた日、母は即死、父は10月に病死。 生きていたのは放射能の後遺症で寝込んでいた すみ(CV:潘めぐみ)だけだった。 また、幼馴染の哲も無事に帰還していたが、その後姿をみかけたが、すずは敢えて声をかけなかった。 年が明け、街のベンチに座って握り飯を食べながら周作と話をしていると、ヨーコという小さな身寄りのない女の子が近寄ってきた。 握り飯をヨーコに分け与えるすず。 そのまま、ヨーコは二人のあとをついてきた。 北條家でヨーコが新しい家族として迎えられようとしていた。 片渕監督の抜擢理由が、 「コメディ演者としての自覚や表現へのこだわりが強く、生活感をフラットに出せる演者であったこと」とあったように、主人公すずのコミカルでおおらかな性格にぴったりフィットした抜擢は、大当たりでした。 4-2.戦時中を描くも、牧歌的でファンタジックな情景 本作は、 基本的に主人公すずを通して見えている世界を描き出した「私小説」に近い構成です。 すずを通して見えた戦時中の風景や心情を描き出しているため、物語前半部分は、緊迫した戦時下でもどこか牧歌的でのんびりとした柔らかく優しい情景が広がっています。 日常世界をどこか幻想的に映し出すパステル調のきれいな画像は必見。 抑えめの色使いで彩られた画面に癒やされます。 4-3.徹底した考証に支えられた精緻な描き込み すずの心の中を描写したような牧歌的なトーンで描かれる一方、描かれた内容は極めてリアルです。 で制作の舞台裏が取材されていますが、戦時下の呉の街並みや人々の生活風景、空襲の日時、その被害状況、被災場所など、徹底的なロケハン(下見等の現地調査)とヒアリングにより再現されました。 戦場シーンをリアルに描いたクライム・アクションアニメ で磨いた詳細な戦闘シーンの表現力を活かし、至近距離で爆発する焼夷弾や、機銃掃射、防空壕の中での振動や原爆が落ちた瞬間の描写は、鳥肌が立つほどリアリティがあります。 70年前の戦時中の日本の生活や風景は、まるで別世界のようでした。 4-4.厳しい戦時下でも日常生活を守ろうとする市井の人々 衣食住全てにおいて、配給制限や闇市での物資の高騰が生活を圧迫する中、人々が協力しあい、工夫して毎日の生活を少しでも充実させようと懸命に取り組むシーンが淡々と描かれるところに心を打たれました。 特に印象的なのは、北條家や浦野家の食事シーン。 終戦が近づくに連れ、どんどん劣化する一方の食事内容でも、身を寄せ合うように一つのカマのご飯を頂くカット(もちろん、まずい時は皆まずそうな顔をする)が何度も繰り返し描かれます。 そして、戦後の進駐軍の炊き出しを手に入れた径子とすずが、どうみてもねこまんまにしか見えないタバコのカスが入った洋風の雑炊を、「おいしい~」と肩を寄せ合って食べるシーンは印象的でした。 4-5.ジワジワと来る、大切な人が亡くなっていく厳しい現実 本作では、戦争の厳しさやつらさ、残酷さだけに焦点を当てたステレオタイプな描き方を脱し、 すずという「普通の」女性から見えた生活風景を淡々と精緻に描き出すことで、戦時中の厳しさが自然に際出つ演出が取られています。 そして、 戦局が悪化するにつれて、大切な人との死別が日常風景になり、天真爛漫なすずでさえ笑顔が消えていくような、暗いトーンへと落ち込んでいくのは見ていてつらかった。 幼馴染の水原の兄は、すずが幼少時、すでに海軍訓練中の海難事故で死亡しています。 嫁入り後、便りが絶えていた出征中の兄は、戦死して浦野家に「形だけの」遺骨が届きました。 さらに、空襲が激しくなると、軍工廠で働いていた周作の父が生死に関わる大怪我をし入院します。 ハイライトは、すずが時限爆発する焼夷弾に巻きこまれた事件。 不可抗力だったとはいえ、子供同様にかわいがっていた晴美を自らの不注意で失い、すず自身もアイデンティティとも言える右手を失い、大好きな絵を描くことができなくなりました。 さらに、畳み掛けるように、8月6日の広島への原爆投下です。 近所の刈谷さんの息子が自宅の前で座って亡くなっているシーン(しかも死が日常的すぎて親さえも気づいていない!)が描かれ、すずの広島の実家の母は原爆で即死、父は10月に病死(恐らく放射線の影響による)しました。 妹は原爆後遺症で寝たきりになりました。 戦局が悪化し、空襲が日常化するとともに、懸命に平静を保とうとするも徐々に壊されていく大切な家族や衣食住。 そして、多くの人が戦争で傷つき、亡くなって行くけれど、 戦時中なので「お国のために亡くなった英霊」に対して人前で泣くことすら許されない。 そんな残酷な展開が、あくまで「すずの生活感覚の中で」ニュートラルに描かれます。 ジワジワと染み入るように重苦しさが伝わってきました。 個人的にも、東日本大震災直後に実際に強く実感したことですが、 大切な人が健在であり、何気ない毎日の生活を平凡に送ることができることが、どれだけかけがえのないことであるのか、それを教えてくれる映画でもありました。 4-6.70年前の、「結婚」から始まる恋愛像 日常生活を描く一方で、この映画は、すずと周作の恋愛映画でもあります。 すずは、見ず知らずの家に就職面接をするかのように北條家へ嫁入りします。 好きかどうかも分からない中、徐々に周作に惹かれていくすず。 日常生活や苦楽をともに過ごす中で二人の関係が深くなり、本当の家族になっていくプロセスは、恋愛結婚が主流となった現代では想像しづらい展開です。 恋愛観ひとつ取っても、70年前と現代では全く違ってきているのだな、と感じさせられました。 一つの見どころです。 4-7.空襲で利き腕を失ったすずの心の変化 片渕監督の制作インタビューに 「すずさんという人は、小さな子どもの頃から家の仕事とか家事の手伝いとか、妹の面倒までいっぱいしてきて、どこか子どもとしての部分を発揮しきれなかった人なんじゃないか」とあります。 すずは幼少期からずっと、北條家へ嫁入りするまで、一貫して自分自身を抑えて慎ましく生きてきました。 思いを言葉で表現するのが不器用なため上手く自己主張できなかったのでしょう。 満たされない思いや感情は、「絵を描く」ことで上手く昇華され、ある意味「絵」の中に自分の居場所を見出していました。 空襲で利き手を失い、それまで北條家の嫁として家族の世話をする一方だったすずは、一転して世話をされる立場へと変わり、さらに「絵」に自分の感情のはけ口を求めることもできなくなります。 手を失ったことで、すずはようやく声に出して自分の思いを周りに伝え始めます。 逆らったことのなかった夫と口げんかをしたり、小姑の径子に甘えたり。 「絵」を描くための大事な片腕を失うという大きな代償は払いましたが、タイトル通り「この世界の片隅」にしっかりと自分の居場所を作れたのではないでしょうか。 これは、 通過儀礼として新婚初夜に夫婦が交わす、テンプレート的な「まくら言葉」だと解釈するのが自然だと思います。 民俗学で有名なのが 「柿の木問答」というやり取りがあり、九州~東北地方で昭和初期にはこんな初夜のかけあいがあったそうです。 男「あんたとこに柿の木あるの」 女「あります」 男「よく実がなりますか」 女「はい、よくなります」 男「わたしが上がって、ちぎってもよろしいか」 女「はい、どうぞちぎってください」 ちなみに、映画では、 「新(にい)なのを・・・」とすずが答えたら、周作はその傘を使って干し柿を取って二人で食べましたね。 想定と違う微笑ましい展開でしたが、ここでも柿が登場しており、祖母の イトがアドバイスした「傘」のやりとりは、この柿の木問答のバリエーションだとみなして良いと思われます。 5-2.座敷わらしの正体はリンだった そうだ、とは明言はされていないのですが、マンガ原作や映画中のリンとの交流で挿入される思い出の一コマや映画のエンドロール部分で強く示唆されているように、 幼少時、親戚の家に遊びに行き、昼寝をしている時に天井裏から出てきた座敷わらしは、リンだったと思われます。 リンがすずに 「芯ばかり食べていたけど、一度だけ女の子にスイカをもらって食べた」と語ったエピソードからもわかります。 エンドロールでは、少し成長したヨーコがすずから裁縫を教わり、すずと径子に赤い水玉柄のおそろいの服を作っていました。 汚く裸同然の恰好で拾われたヨーコが成長し、モンペや着物ではなく「洋服」をプレゼントする様は、象徴的に戦後の日本の復興と重ね合ってみえました。 また、「ヨーコ」は皆にとって特別な存在です。 子供ができないすずと周作にとっての娘代わりであり、晴美を空襲で失った径子にとっての子供でもあり、さらに、すずにとっては、恵まれない幼少時代を過ごしたであろうリンの生まれ変わり、生き写し的な意味合いもあったと思われます。 家族や故人との大切な繋がりや、戦後の復興への希望を象徴する特別の存在として、マンガ原作にはない後日譚をエンドロールで付加的に描かれていたのは、非常に感慨深いものがありました。 クオリティ高すぎです。 左手で描いたり、タッチをがらっと変えたり、 マンガならではの先鋭的な表現方法を貪欲に追求しつつ、映画よりさらに複雑な伏線を3巻構成できれいに回収する無駄のないストーリーに驚きました。 映画同様、何度でも読み返すたびに発見がある名作です。 6-1.原作では、リンと周作、すずは複雑な三角関係になっている! 映画では省略されましたが、 マンガ原作では、遊郭近くの海軍で働いていた周作が、すずと出会う前に遊郭でリンと出会い、熱を上げていた時期があったことが示唆されています。 遊郭の女に情がうつり、そこから連れ出して妻に迎えるというのは江戸時代からよくあるパターンですが、さすがに家族の反対に遭うわけですね。 周作は、リンを諦める代わりに、幼少時に街で出会った「浦野すず」という女性なら結婚してもいい、と無理気味のリクエストを家族に出します。 これを真に受けた家族が、四方手をつくし、すずを広島で見つけてきてしまい、祝言へと進んだのでした。 結婚後、祝言の仲人をつとめた伯父の小林家の疎開作業中に、すずがそれまで見たこともなかった 「りんどう柄」の茶碗が出てきます。 そこから周作に過去の縁談話を聞いたすずは、その直前にリンが見せてくれた大学ノートの切れ端や「りんどう柄」という共通項、周作とデートした時の周作のセリフ 「過ぎたこと、選ばんかった道、みな覚めて終わった夢と変わりはせんな」から、周作が過去に結婚しようとしていた人物がリンであることを割り出したのでした。 (そういうところは「女の勘」が鋭いすず) 6-2.より多彩な登場人物 映画では、一度きりの出会いとして描かれたリンとの関係ですが、 マンガ原作では、すずが呉の中心街に出るたびに交流する大切な友だちになります。 大空襲後、リンの勤めていた朝日遊郭は空襲でガレキの山になり、「りんどう柄」の茶碗のかけらが落ちていた描写から、リンは結局大空襲がで亡くなってしまったのだと思われます。 また、朝日遊郭でリン不在の時に テルという女性に会いますが、後日リンからテルの使っていた遺品の口紅をもらいます。 映画でも、何度かすずはこの口紅を非常に大切な機会に使っていますね。 (長期で家を離れる周作を、見送る時とか) 7.まとめ 日本人にしか製作できない「戦争もの」ジャンル映画ですが、一般市井の普通の女性の視点から、 「日常生活のかけがえのなさ」という普遍的なテーマを扱い、脚本もアニメ表現にもこだわり抜いて制作された作品です。 本作品は、「本当に作りたい映画を作り、結果を出したい」という片淵監督自身の自己実現の結果でもありました。 ファン、監督、スタッフみんなの想いがこもった、素晴らしい映画です。 かるび 8.映画を楽しむための小説やガイドなど 8-1.マンガ原作「この世界の片隅に」.

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町山智浩『この世界の片隅に』アメリカの観客・評論家の反応を語る

この 世界 の 片隅 に 解説

5億円 興行収入 27億円 (2018年11月12日時点) 『 この世界の片隅に』(このせかいのかたすみに)は、のを原作とする、監督・脚本、制作の長編。 19年()にからに18歳で嫁いだ主人公すずが、戦時下の困難の中にあっても工夫を凝らして豊かに生きる姿を描く。 配給は。 2016年に日本国内63館で封切られた後、公開規模を累計484館(時点)まで拡大し、2019年まで1133日連続でロングラン上映された。 この記録は、日本国内の映画館における中断日のない連続上映としては洋画・邦画含めて史上最長である。 累計動員数は210万人、興行収入は27億円を突破し、系作品としては異例のヒットを記録した。 また公共ホールなど約450の会場で上映会が行われ(2018年1月時点) 、日本国外では世界60以上の国と地域で上映される。 制作の足がかりとなる資金をで一般から調達したことでも知られる。 本作は第90回日本映画第1位、、第41回長編部門審査員賞、第21回大賞などを受賞した。 監督の片渕は、第90回キネマ旬報ベスト・テン日本映画監督賞、第59回監督賞、第67回文部科学大臣賞などを受賞。 またチームとして第65回を受賞した。 この他、約40分の新規場面を付け足した別バージョン作品(長尺版)として『 この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が2019年に公開された (参照)。 さらにこれと関連して、ドキュメンタリー映画『 <片隅>たちと生きる 監督・片渕須直の仕事』が同年に公開された(参照)。 「」を参照 1944年(昭和19年)2月、18歳のすずは広島から軍港のある呉の北條家に嫁ぐ。 戦時下、物資が徐々に不足する不自由さの中、すずは持ち前の性格で明るく日常を乗り切っていたが、翌年の空襲によって大切なものを失う。 広島への原子爆弾投下、終戦。 それでもすずは自分の居場所を呉と決め、生きていく。 原作との相違点 [ ] 映画は原作と以下のような相違点がある。 物語冒頭、幼少のすずが海苔を届ける途中で人さらいと遭遇するエピソードの時期が「昭和9年1月」から「昭和8年12月」へと早められた。 映画では演出プラン練り直しなど種々の経緯を経てこのエピソードの時期を昭和8年12月に設定したという。 映画ではクリスマス商戦で賑わう街の様子が描かれているが 、この年はクリスマスイブ前日の12月23日にの誕生という出来事があり 、その日から年明けまでは祝賀ムードが続いていたはずであることから 、物語冒頭のエピソードはそれ以前の日付であると設定された。 映画では嫁と小姑の関係にあるすずと径子の対比を主軸として、原作における主要な登場人物であった遊女のリンの登場場面が少なくなっており 、周作、リン、すずの三角関係にまつわるエピソードが描かれない。 これに伴い、原作においてすずとリンの再会を仲立ちする遊女のテルの登場場面は1カットのみとなり、はない。 ただし、すずの回想で名前が言及される場面があり、また原作ではテルの死後、リンを通じてすずに手渡されたことになっている遺品の艶紅を、映画でもすずが所持している描写がある。 映画では、女性の目線から描かれた原作を補う形で、艦船や戦闘機といった兵器のディテールや男性の登場人物の想いなど、男性的な目線の描写を追加したものになっている。 劇中の昭和20年3月(原作第26話)における最初ので、円太郎がすずと晴美を庇って伏せる場面では、米軍機と空中戦を繰り広げるに搭載されたに対する、円太郎の思い入れを語る台詞が追加されている。 また映画のこの場面では、すずが戦争の光景に見とれ、すずの想像の中でカラフルな爆煙が絵筆を用いて表現されるという、モノクロで描かれた原作にはない描写があるが、これも当時の軍艦のには識別のための着色弾が混じっていたという史実を踏まえたアレンジである。 日本の敗戦を伝えるを聞いたすずが激昂して家を飛び出した後、掲げられたを見て泣き崩れる場面の台詞が変更されている。 原作第39話では、すずは自分たちの信じていた正義が失われたと感じ、他国を暴力で従えていたからこの国は暴力に屈するのかと独白するが、映画では、自分は海の向こうから来た米や大豆で出来ているから暴力に屈しないといけないのかと独白する。 これについて片渕は、当時の日本の食料自給率が高くなく、海外から輸入される穀物に頼らざるを得なかった状況があり、原作と同じようなことを語るのに、ずっと炊事をやってきた生活人のすずが食料に絡めて反応をしたほうが彼女らしくていいと思ったと述べている。 「」も参照。 関連する描写として、すずが闇市を訪れる場面では、モブキャラクターが台湾米のことに言及する、原作にない台詞が追加されている。 登場人物・声の出演 [ ] 詳細は「」を参照 北條 すず - 本作の。 旧姓浦野。 広島市江波の海苔梳きの家で育ち、のちに呉の北條家に嫁ぐ。 絵を描くことが得意。 原作のすずが、内向的だが女の情念を秘めた大人の女性という意図で描かれていたのに対し、映画では少女と大人の境界線上で揺れる、素直だが芯のある女性という解釈で描かれている。 一方で原作における、一見地味な作風ながらもすずの女性としての魅力や色っぽさが描かれているという要素は、映画でも重視された。 北條 周作 声 - すずの夫。 の録事(書記官)。 子どもの頃に広島で一度だけすずに会ったことがある。 原作の周作は勉強家であれど堅物ではないが、映画版では秩序を重んじる生真面目な青年として描かれている。 また周作の昭和20年10月からの出張は原作では「反乱軍の制圧のため 」で命がけの任務であるが、映画版では出張時に軍服を着用しつつも服務内容が詳しく語られない。 水原 哲 声 - 小学校時代のすずの幼なじみ。 すずとは互いに憎からず想う間柄であったが結ばれず、のちに志願兵として海軍に入隊し、重巡洋艦「」の乗員としてすずと再会する。 映画では、兄の七回忌で江波に帰っていた際、すずに結婚を申込むため浦野家を訪れた帰りの周作と円太郎に電停への道を尋ねられ、わざと江波山の方角を案内して道に迷わせたことが語られており、見合いをせずに逃げ出したすずが、江波山で周作と邂逅するきっかけとなっている。 黒村 径子 声 - 周作の姉。 結婚して家を出ていたが、時計屋を営んでいた夫キンヤの病死後、によって黒村家が下関に引っ越すことを機に離縁、黒村の跡取りである息子の久夫を下関に残し、娘の晴美ともども北條家に戻ってきた。 黒村 晴美 声 - 径子の娘。 兄の久夫に軍艦の名前を教えてもらっており、幼いながらすずより軍艦の知識に詳しい。 母とともに北條家に同居し、すずに懐いている。 浦野 すみ 声 - すずの年子の妹。 として工場に動員されている。 北條 円太郎 声 - 周作の父(すずの舅)。 広海軍工廠技師。 開戦後はの発動機部に勤務している。 映画では原作の設定を史実上の第11海軍航空廠発動機部の状況と突き合わせ、1945年3月19日の呉軍港空襲で米軍機の迎撃に向かった紫電改に搭載されているの最終試験を担当していた技師である、という設定がされている。 北條 サン 声 - 周作の母(すずの姑)。 足を痛めているので普段は安静にしているが、瓶づき精米など座ってできる家事は手伝っている。 なお、新谷は広島出身で、キャスト用の広島弁ガイド収録も担当。 サン役に決まる以前に本作品の全台詞を録音している。 白木 リン 声 - 呉の朝日遊廓「二葉館」の遊女。 すずと同じく広島の出身。 闇市での買い物帰りに道に迷ったすずと偶然知り合う。 原作では、馴染みの客が周作で、結婚まで考えていたという過去が示唆され 、そのことですずを後々まで悩ませるが、映画では多くが語られない。 絵コンテの段階まではリンにまつわるエピソードを盛り込むことも予定されており 、原作第18話においてすずが周作とリンの関係に気がつくきっかけになった、裏表紙の一部が切り抜かれたノートを手に取る場面も映画で描かれているものの 、そこからすずが二人の関係に思い至る描写とその先の展開が描かれない。 これらの展開は、もし映画の企画段階で十分な予算があれば、本編に盛り込まれていたはずの内容であるとされる。 なお、エンディングロールの終盤でクラウドファンディングの支援者一覧が列挙される箇所では、原作第41話で描かれたリンの生い立ちが描かれており 、森田家の座敷童子がリンであったこと、周作のノートから切り抜かれた裏表紙で作った名札のことも描写されている。 浦野 十郎 声 - すずの父。 かつては海苔養殖に従事していたが、海の埋め立てにより廃業し、埋立地に建てられた工場に勤めている。 浦野 キセノ 声 - すずの母。 娘を大事にしている。 浦野 要一 声 - すずの兄。 腕白ぶりから恐れられる、通称「鬼(おに)いちゃん」。 陸軍軍人としてニューギニアに出征していたが戦死の知らせが届く。 原作で描かれた劇中漫画「鬼イチャン」のエピソードは、映画では終盤、原爆症に伏せる妹すみとの会話の中で言及されている。 森田 イト 声 - すずの祖母。 広島県西部の古江から嫁ぎ、草津に住む。 マリナ 声 - すずの叔母。 母と同居し夫妻で草津で海苔梳き業を営んでいる。 夫(森田の叔父)は10年8月を最後に登場しない。 千鶴子 声 - 森田夫妻の娘(すずの従妹)。 小林の伯父・伯母 声 - (伯父)、(伯母) すずと周作の仲人を務めた。 昭和20年7月1日の空襲で自宅を無くし、以降北條家に同居することになる。 知多さん 声 - 近所の主婦で北條家と同じ。 元看護婦。 刈谷さん 声 - 近所の主婦で北條家と同じ隣保班。 夫につづき息子も出征することとなる。 堂本さん 声 - 近所の主婦で北條家と同じ隣保班。 ばけもん 声 - 物語冒頭と結末に登場。 幼少時に広島の街中()へとおつかいに出たすずと周作をさらおうとしたが、で逃げられる。 原作では虚実の定まらない形で描かれていたエピソードだが、映画では、幼少のすずが自分の体験を元に、妹のすみに見せるために描いた紙芝居の中の出来事という体裁になっている。 原作の劇中漫画「鬼イチャン」では、戦死したはずの兄、要一のなれの果てという設定になっている。 映画では物語の結末で再登場した際に、「鬼イチャン」のエピソードを反映してワニの入った篭を背負って登場しており、絵を描く右腕の負傷と共に喪失していたすずの想像力が不意に現れた と解釈できる描写になっている。 憲兵 声 - 高台にある北條家の畑で海岸線と停泊中の軍艦を写生していたすずを「間諜行為」と叱責し、すずが愛用するスケッチブックを押収する。 なお、栩野はほかに闇市の老婆と玉音放送の声と、広島弁監修を担当している。 行進する女学生たち 声 - 荻野沙織、桜奈里彩、、、() 下関に避難するために駅へ向かう途中のすずらの前で行進していた女学生たち。 当時、大空襲に遭った女学生たちが海岸線近くの壕に避難したが、爆撃で壕が壊れ海水が浸入し、全員が溺死したという出来事があった。 当時、中学生で、彼女たちを人工呼吸した男性から、映画化に際して彼女たちのエピソードを盛り込むように要望された片渕監督は、時間的な制約がある中で行進する姿を描き、悲劇を示唆させている。 女性アナウンサー 声 - (アナウンサー) 原爆投下日、朝のラジオで情報を伝える。 この件は事実であり、従来は男性アナウンサーが伝えていたが、戦況の悪化する中で寄せられた「男性の声だと危機感を煽りすぎる」という市民からの意見を取り入れ、女性アナウンサーが起用された経緯を基にしている。 監督である片渕の解説によると、この件はの社史に記載されており、原爆投下当日の放送を担当したこの女性アナウンサーは原爆投下後、脱出に成功して生き延びたとのこと。 駅の警官 声 - (特別出演) 駅で手荷物検査をする警察の経済課員。 要一の葬儀の帰り、呉駅で夫婦喧嘩するすずと周作を諌める。 スタッフ [ ]• 原作:『この世界の片隅に』(刊)• 監督・脚本:• 音楽:• 企画:• 監督補・画面構成:• キャラクターデザイン・作画監督:• 美術監督:林孝輔• 色彩設計:坂本いづみ• 動画検査:大島明子• 撮影監督:熊澤祐哉• 編集:木村佳史子• 音響効果:• 録音調整:小原吉男• プロデューサー:• 後援:、• 助成:文化芸術振興費補助金• 法務:• 配給:• アニメーション制作:• 製作統括:• 製作:「この世界の片隅に」製作委員会(、、、、東京カラーフォト・ウィングス、東京テアトル、、、、マック、MAPPA、ジェンコ) 音楽 [ ] 片渕監督の前作映画『』(2009年)にコトリンゴが主題歌を提供していた縁で、まずコトリンゴのアルバム『picnic album 1』に収録されていた「」を本作の予告編にすることが決まり、続いて本編の主題歌やもコトリンゴが手掛けることになったという。 以下はボーカル曲を劇中使用順に挙げる。 物語冒頭、幼少のすずが海苔を届けるために広島市中心部を訪れる場面で、前における爆心地周辺の街並みを描写した後に流れる。 特報や海外版トレーラーでは『picnic album 1』に収録されたバージョンが使用されている。 『picnic album 1』に収録されたバージョンは権利問題からそのまま映画に使うことができなかったものの 、アレンジを作品の世界観やヒロインのすずのイメージに寄せたいというコトリンゴの意向が反映された。 にまつわるエピソードである原作の第4話では、展開に沿って1番から4番までの歌詞が全文引用されており、映画でも原作と同じ場面で実際の歌曲が流れる。 原作では注釈として、楽曲の背景と共に、この曲が戦後の『』の主題曲の原曲でもある旨の解説があり、楽曲と共にコントのような展開が繰り広げられる。 同様に原作最終話の場面で歌として流れる。 劇中においてすずの右手は、世の中と繋がる手段や、好きな絵を描くことで表現される想像力やユーモア、子供時代の想い出などを象徴する役割が与えられているが 、すずは物語の途中から空襲による負傷で右手を喪失し、右手が象徴する過去からの自立を余儀なくされる。 この楽曲はすずを見守る、(擬人化された)右手の歌という意味づけになっている。 歌詞の元となっている原作のモノローグは、擬人化されたすずの右腕から「いま此れを讀んだ貴方」 に宛てた手紙という体裁になっており、劇中に登場する「」を模した導入に始まり結びの挨拶で終わるが 、原文そのままでは尺に収まらず、監督の片渕が詩を編集して最終的な形が決まった。 すずや、劇中にも登場するタンポポの綿毛をイメージした曲。 制作に関わったスタッフの一覧と平行して、原作の結末の後日談となる、広島から孤児の少女を連れ帰った後のすずたちが明るく暮らしていく姿が描かれる。 ここでは晴美の兄である久夫と、晴美・久夫の祖父(径子の義父)も登場する。 制作 [ ] 「」も参照 2010年8月、片渕自身がこの作品のアニメーション映画化を企画し、こうのに許諾を請う手紙と自作『』のDVDを送った。 こうのはに放送された片渕のテレビアニメ『』にあこがれ、「こういう人になりたい、こういうものが作りたいと思う前途にともる灯」として捉えていたため、アニメ映画化は「運命」と喜び、この手紙を枕の下に敷いて寝たという。 片渕は2010年5月から何度もで広島に通い 、後知恵を徹底的に排除した上で、多くの写真を集めたり、70年前の毎日の天気から、店の品ぞろえの変化、での時刻に至るまで、すべて調べ上げてをさらに重ね、原作の世界にさらなるリアリティを加えた。 「理念で戦争を描くのではなく実感できる映像にしたかった」とディテールにこだわり、広島弁と呉弁の微妙なの違いから 、の着色弾の色彩の再現のほか 、劇中で登場するの入港 、及び艦上でのの内容も解読できるように作られている。 アニメーションの手法としては、人物の動作を緩慢に描き、動きの幅が小さな動作にもの作画枚数を割くことで、嘘臭さのない生活感を表現することが試みられている。 通常のでは、もっと動きにメリハリをつけて作画枚数を省略しつつ見栄えを良くする手法が用いられるが、本作の作風には合わなかったため、敢えて手間のかかる表現が用いられた。 また映画の後半、すずが空襲で目の前で家族の命を奪われ、自らも負傷して絵を描くための右手を喪失し生死の境をさまよう場面は、フィルムに直接傷を書き込んで作画する(フィルムスクラッチ)と呼ばれる手法を模した表現になっているが 、これはカナダの映像作家の作品『線と色の即興詩』のオマージュで、原作漫画の該当場面で多彩かつ実験的な手法が用いられていることを踏まえた表現である。 2012年8月17日ににて制作発表、翌日より第一弾ポスターが広島県・山口県を中心に展開された。 アニメーション制作は、本作が原作のあるアニメ映画製作が初となる。 ポスターの作画は。 制作状況は、監督によってのコラムで連載された。 または2011年からロケハン案内、資料収集、録音などの制作サポートを行った。 片渕の熱意は周囲を感化し、広島を中心にアニメ化を望む声は高まっていったが、資金調達のめどは一向に立たなかった。 その打開策となったのがであった。 2015年3月9日からはスタッフの確保やの制作を目的に、クラウドファンディングを開始し 、当初目標の2000万円を8日後の3月18日午前2時50分に達成。 最終的に5月末まで日本全国47都道府県3374人の支援者から、3912万1920円の支援金を集めた。 支援者数は国内クラウドファンディングの過去最高人数で、支援金額も映画部門では国内最高記録であった。 片渕は原作の要素の大部分を盛り込んだ150分のプログラムを予定していたが、4億円とされる製作費の調達は困難だったため、プロデューサーとの話し合いの末いくつかのエピソード(おもにリンに関するもの )を省略することにより、120分のプログラムに変更し、製作費を2億5000万円まで抑えた。 これにより2015年6月3日にが正式に発足 、が配給することとなった。 ネットニュースなどで広く報じられ、同日「『この世界の片隅に』を支援する呉・広島の会」が発足した。 主人公の起用は、片渕がすずの非常に喜劇的な部分と繊細な内向性を持つキャラクターが絞られてくると思っていた矢先に『』を観て、イメージにぴったりと、のんにオーディションの参加を依頼。 後日、のんから手紙で「私がすずさんをやりたい! 」と気持ちが詰まった返事が来て、それを読み、映画を必ず完成させると決意した。 収録は2016年7月下旬に始まり8月中ごろまで続いたが、のんは毎日、を収録した台詞とテープを聞き、友人との会話でも広島弁を使っていたという。 のんの広島弁は違和感なく、すずに命を吹き込んだなど、称賛された。 広島弁の指導はのんも含めて広島出身の北條サン役と呉出身のが行った。 公開 [ ] に第29回にてワールドプレミアが行われ、同年に日本国内で封切られた。 公開時のキャッチコピーは「昭和20年、広島・呉。 わたしはここで生きている。 」「日本中の想いが結集!100年先も伝えたい、珠玉のアニメーション」。 封切り日の公開館数は63館であったが、規模を徐々に拡大し、累計484館に達し(時点。 最大同時公開劇場数は301館(~)) 、2019年12月19日まで1133日連続上映された(翌12月20日に『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が公開(参照)。 2017年5月には、映画館以外でも全国各地の公共ホール、小学校から大学までの各種学校、野外などでの上映会が企画され、上映されるようになった。 公共ホールなどでは2018年1月までに約450の会場で上映会が行われた。 英語字幕版の上映も行われた。 ロングラン上映に関して、特に茨城県土浦市に所在する映画館『』は2017年2月18日からの上映開始であるものの、当劇場での上映だけでも連続上映日数が1035日を記録し、ファンからも一種の「」として扱われており、片渕自身も当作品について語る際には土浦セントラルシネマズを引き合いに出すことが多い。 なお『土浦セントラルシネマズ』は『』を公開初日から上映を開始することに伴って先作の上映を2019年12月19日で終了したため、連続上映日数が上述のように1133日で途切れることとなった。 この1133日という記録は、日本国内の映画館における中断日のない連続上映としては洋画・邦画含めて史上最長である。 なお、この枠外では、『』の1382日 、『』の1192日 という記録の情報もある。 封切りから1年となる2017年以降の上映は、一般発売用ブルーレイディスク・DVDの為に細かな作画や彩色など一部修正したバージョンに切り替えられた。 なお、2017年に封切られたフランスの上映には、当初から同バージョンが使用されていた。 公開拡大の経緯 [ ] 公開直前に開催された広島国際映画祭2016でヒロシマ平和映画賞を受賞したが 、この時点ではマスメディアで扱われることはほとんどなかった。 一方で、公開前の早い時期から試写後の反応で「本年度ナンバー1」との呼び声も上がり、多くの評論家・著名人・アーティスト・クリエーターから高い支持を受けていた。 こうして迎えた公開初日には主要劇場で全回が満席となり、上映終了後には拍手が沸き起こった。 配給元・の直営館であるでは1か月以上連日満席・立ち見となり(立ち見すら売り切れて札止めになるというあまりないことが続いたという) 、同館の過去10年間の週間興収で最高記録を塗り替えた。 一方で、地方の劇場ではガラガラのところもあり、は作品の評判をきちんと広げる必要があると述べている。 本作のの拡散・口コミ効果について、は「SNSによる口コミ効果が爆発的に広がっている作品」と紹介し 、は「本作の人気の沸騰ぶりは尋常ではない。 事前に作品を観た著名人や批評家らが軒並み絶賛してネットに拡散」と分析した。 アンケート調査では、鑑賞後に不特定多数へ向けてSNS等に感想を投稿した割合が22. 興行成績 [ ] 興行成績 は、小規模公開ながら初登場10位にランクイン。 公開2週目は初週の興行収入・動員をさらに上回り、3週目・4週目もさらなる右肩上がりを記録。 4週目には異例のジャンプアップとなる4位に浮上した。 こうして公開初週から15週にわたり週末興行成績のトップ10入りを果たした。 その後、公開216日目となる2017年に累計動員数200万人を突破した。 2018年11月12日時点の累計動員数は210万人、興行収入は27億円。 これにより東京テアトル配給の劇場用映画としての史上最高記録を更新した(従来の記録は5. 2億円 )。 『この世界の片隅に』日本国内の動員数・興行収入の推移 動員数(万人) 興行収入(億円) 備考 週末 累計 週末 累計 1週目の週末 11月12日・13日 10位 3. 2 3. 2 0. 47 0. 47 2週目の週末 11月19日・20日 10位 4. 0 11. 7 0. 57 1. 63 3週目の週末 11月26日・27日 6位 4. 4 22. 0 0. 65 3. 06 4週目の週末 12月3日・4日 4位 4. 6 32. 8 0. 68 4. 51 5週目の週末 12月10日・11日 7位 - 43. 9 0. 67 6 6週目の週末 12月17日・18日 10位 - 52. 1 0. 45 7. 08 7週目の週末 12月24日・25日 10位 3 60 0. 45 8. 2 8週目の週末 12月31日・1月1日 9位 3 - 0. 37 9. 37 9週目の週末 1月7日・8日 10位 5. 7 86 0. 77 11 10週目の週末 1月14日・15日 8位 - 100. 8 0. 91 13. 4 11週目の週末 1月21日・22日 7位 7 110 0. 93 15 12週目の週末 1月28日・29日 9位 - - 0. 68 17. 4 13週目の週末 2月4日・5日 7位 - 144. 7 - 18. 96 14週目の週末 2月11日・12日 8位 4 156. 6 0. 62 20. 46 15週目の週末 2月18日・19日 9位 - 166. 7 - 21. 67 16週目の週末 2月25日・26日 圏外 - 171. 8 - 22. 35 17週目の週末 3月4日・5日 圏外 - 181. 5 - 23. 57 18週目の週末 3月11日・12日 圏外 - 186. 85 - 24. 24 19週目の週末 3月18日・19日 圏外 - 191. 4 - 24. 82 20週目の週末 3月25日・26日 圏外 - 193. 3 - 25. 07 2018年11月12日時点 - - 210 - 27 出来事 [ ]• 本作の異例のヒットを受けて、2016年11月22日のでは、東京テアトルの株価が急上昇。 映画を通して呉に興味を持ったのん自身の提案により 、のんが作品の舞台である広島・呉市の映画ゆかりの地を巡る写真集を2016年12月16日に発売。 の映画館では、手違いで2016年12月30日上映回から約1か月半にわたって最終完成前のバージョン(背景の一部や色合い、エンドロールに流れる絵の数などが完成版と異なる)が上映されていたことがわかった。 既に別の映画館で何度も鑑賞していたファンが気付き、片渕にで問い合わせたことから発覚した。 監督の片渕は、観客との交流を全国各地で精力的に行っている。 本作の舞台挨拶は、公開274日目となる2017年8月12日に渋谷で行ったものが100回目となった。 舞台挨拶は、2019年11月12日までに167回を記録した(海外、上映のないトークイベント、映画祭などの授賞式、また監督過去作での舞台挨拶は除く。 本作のヒットを受け、呉市は、主人公すずが嫁いだ北條家があったとされる場所を「すずさんに逢える丘」として整備する(2018年度に予定)。 北條家のモデルはこうのの親族宅で、今は更地になっているが、こうのがこの土地を呉市に寄贈していた。 2018年7月24日、原作を同じくする(2018年7月期、TBS「」)がクレジットに「special thanks to 映画『この世界の片隅に』製作委員会」との表記を行ったのに対し、同委員会側は「当該ドラマの内容・表現等につき、映画に関する設定の提供を含め、一切関知しておりません」との発表を行った。 2018年8月6日、のんが片渕、真木と共に広島を訪れ、の被災者支援のため、映画の収益から義援金を広島県に贈った。 ネット配信 [ ]• 各ネット配信サービスにおけるセルスルー(売り切り)形式またはレンタル形式(2017年5月10日) 、定額制(2018年3月15日) で配信された。 では、最も多く視聴された作品のランキングにて、2019年上半期のアニメ映画部門にて1位であった。 2019年8月、NHKの放送終了直後からや等いくつかの動画配信サービスでも期間限定無料配信された(エンドロールを含め完全ノーカット) [ ] ディスク媒体 [ ]• 特装限定版、Blu-ray通常版、が販売された(、2017年9月15日)。 2017年11月までに10万枚以上の売り上げを記録した。 テレビ放送 [ ]• 2018年3月18日、・日曜邦画劇場枠において、テレビ初放送された。 本編放送前後に片渕監督のインタビューも併せて放送。 また、特設サイトも設けられた。 2019年8月3日、・地上波テレビ初放送。 本編上はノーカットで放映された。 片渕須直監督によると、「地上波で、プライムタイムで、全国放送で、ということにこだわりました」。 放映前に片渕須直監督により「一か所だけ違うバージョン」であることが予告され、実際は第二EDがカットされ、その代わりにEDの最後から2番目のクレジット(監督名の直前)に「クラウドファンディングで支援してくださった皆様」とNHKで追加して放映された。 平均視聴率は8. 3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だった が、地上波テレビ放送に伴いNHKでは2019年8月に2020年8月の終戦75年に向けて、大型キャンペーンである「 あちこちのすずさん」プロジェクトとして始動し本プロジェクトの中核番組として放送した。 日本国外 [ ] 日本国外へのセールスは、ロンドンに拠点を置くアニマツ・エンタテインメントが代理人を務める。 世界60以上の国と地域で上映される [ ]。 英語版のキャッチコピーは『Torn apart by war. Brought together by love. 』(戦争によって引き裂かれた。 愛によって結ばれた。 劇場用に字幕版の他、タイ語 、スペイン語(メキシコ) 、スペイン語(スペイン) 、ドイツ語 、英語 、フランス語 、イタリア語 、ロシア語 の吹き替え版が制作された。 の機内配信においては、すずの妹・すみが風呂に入るシーンの1カットがトリミングされている。 2016年11月22日、「映画『この世界の片隅に』の海外上映を盛り上げるため、片渕監督を現地に送り出したい」と題したクラウドファンディングが開始された。 目標金額は1080万円であったが、開始して1日経たずに支援金額が約1500万円に到達し、新規の支援を控えてもらう異例の呼びかけが行われる中 、最終的に約3200万円に到達した。 この支援を受けて、片渕は、2017年2月にメキシコ、3月に香港、6月にフランス、7月に米国、9月に再びフランス、10月に韓国、11月と翌2018年2月に再び米国、3月にモロッコとフランスへ渡航し、現地の映画祭等の上映会で舞台挨拶を行うとともに、現地メディアからの取材に応じた。 2017年10月7日・8日、メキシコでは(国立フィルムセンター)とすず役のErika Langaricaが、9月に発生したの被災者を支援するためにチャリティ上映会を行った。 2018年3月15日、によるネット配信が日本国外では、アメリカ、カナダ、バングラディッシュ、ブータン、グアム、インド、ラオス、ニューカレドニア、北マリアナ諸島、モルディブ、マーシャル諸島、モンゴル、ミャンマー、ネパール、パキスタン、サイパン、スリランカ、東ティモール、ロシア、トルコ、クロアチア、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、スロベニア、ポーランド、チェコ、スロバキア、そのほか一部地域で開始された。 評価 [ ] 観客による評価 [ ] 第90回の読者選出日本映画ベスト・テン第1位 /映画レビューサイト(フィルマークス)の2016年満足度ランキング第1位(平均スコア4. 39点/5点満点) /の2016年映画満足度ランキング 第1位(満足度95. 2点は歴代でも上位となる。 ) /Yahoo! 映画「映画ファンが選ぶ!ベストムービー2017」の「泣ける」年間ランキング第1位及び「切ない」年間ランキング第1位 とそれぞれ発表された。 劇場や地方紙などの一般投票によるランキング企画では、「スタッフ&お客様が選ぶ2016年に観た映画ベストテン」第1位 /ベストテン2016邦画第1位 /2016BEST10選出 /「ファンが選ぶ映画ベスト3」(2016年11月~2017年10月)の日本映画第2位 /佐賀上映作品歴代1位(2017年12月実施) /発表の第63回県民が選ぶ映画ベストテン日本映画第1位 /2017年ベストテン第1位 /2017年人気投票第1位 /横浜2017年ベストテン第1位 /山形の2017年公開作品ベストテン日本映画第1位 /神戸2017年他館上映作品第1位 とそれぞれ発表された。 が企画され、、、らが本作への想いを漫画やイラスト、文章など、様々な形で表現する他、、らが本作への想いを寄稿文や対談、インタビューなどの形で表現するなど、合わせてが同書に参加した。 批評家による評価 [ ]• は、、の映画評を掲載し、それぞれ「世界の片隅で生きる一人の平凡な女性の戦中から戦後への暮らしが、普遍的な輝きを帯びて浮かび上がる」「水彩画的な画面のタッチと主人公の絵心がマッチして、極上の効果」「戦中が特別なのではなく、戦前も戦後も継続した時間にすぎないという忘却された自明の理を個人の視点から見事に映しだす。 『』と双璧の秀作が誕生」と評価、全員が満点となる星5つを付けた。 映画監督のは「いま生きている現実と地続きで戦争をイメージできる傑作」と評した。 ミュージシャンのはの連載コラムの中で「今までにないタイプの戦争映画ですね。 これは文句なしの傑作」と評した。 映画評論家としても活動するラッパーのは、自身のラジオ番組で本作を、普通に見て楽しい作品であると同時に帰る時にはドスンと来る、『』と『火垂るの墓』の鬼の二本立て を完全に融合した恐ろしい一本であり、日本映画史に残る大傑作となるのではないかと評し 、シネマランキング2016の第1位に選出した。 は、日本アニメ誕生100周年を機に実施した、アニメに造詣の深い批評家30人の投票に基づく日本アニメ史上ベスト作品ランキング において、本作を第5位と発表した。 本作の第5位は、映画作品の中では、最上位となる第4位の『』(1988年)に次ぐ順位である。 映画秘宝は、2019年5月号に平成の映画史を総括する「平成の傑作映画100!」特集を掲載し、本作を平成映画ベスト10の第10位に選出した。 一方で次のような否定的評価もある。 『』の副編集長・小川修司()は同誌にて、「なるほど、これはや、、、、も同系統の実写作品を作っていたが、このポップな感覚は革命的である。 悪い映画ではない」とした上で、「重い・不穏な映画特有の毒がまったくなく」「薬膳料理のような世界観がダラダラと2時間以上も展開する」「連続テレビ小説のような作りでもあり、テレビドラマが嫌いな者には退屈極まりない」と評し、本作に2つ星(満点は5つ星)を与えた。 庶民に戦争責任は無いのか。 戦争で手を失った田中裕子が天皇の戦争責任を言う映画があり、戦時下の日常を描いた実写映画があり、加害を描いた映画もあったのに、もう忘れたのか。 いま、客が一番悪い」と、作品のみならず、映画を鑑賞する観客の姿勢をも批判した [ ]。 なお本作は、映画野郎の2016年ベストテンでは第2位 、映画芸術の2016年日本映画ベストテンでは第1位に選出された。 日本国外 [ ]• 正真正銘の傑作」と評した。 イギリスの映画誌は本作に満点である5つ星を与え、「失われたものへの強烈な観念を呼び起こす、爆弾投下前の広島の精妙な肖像」と評した。 映画情報サイトHeyUGuysは本作を「まさに胸が張り裂けるほど美しい、深遠で圧倒的な物語」と評した。 アイルランドの映画監督(『』(2014年))は「美しくて力強い、映画作りと手描きアニメーションの使い方 — 私の中にずっと残る作品」「驚くべき洞察に、アニメーションにしか為し得ない、巧妙で独創的なテクニックを結び付けた」と評した。 スペインの娯楽誌は、本作に95点(2017年公開映画における最高点 )を与えて2017年アニメーション映画第1位に選出し 、「シンプルな外観を通して魅了する宝石である。 実は全編にわたり途方もない感動と人生の教訓を秘めている」「あたたかく、エレガントで、喜びを与えるものである。 要するに、傑作である」と評した。 日本の登場人物の閉鎖的視点を通して描かれるが、しかし同時に、表現されたものの普遍性により地理的な境界を超越し、タイトルに含有された双対性を成す」「アニメーション映画史上の画期的な作品であるとともに、映画一般という観点でも今年を代表する作品のひとつとなる」と評した。 この激しくて詩的なリアリズムは完璧な均衡を見つけ、心をかき乱すと同時に元気づけるものとなる」と評し 、2017年ベスト映画10作品のひとつに選出した。 米国の娯楽業界誌は本作を「戦争の破滅的な時流におかれた民間人の営みが詰まった、物憂げで郷愁を誘うタイムカプセル」と評した。 日刊紙は「ごくありふれた状況に備わる魔法に光をあてる」「すずの物語は観る者と深く繋がり、映画の最後に手が振られると、私たちはまるで友人に対してそうするかのように思わず手を振り返したくなる」と評した。 映画批評サイトは、本作について集積した批評に基づいて「しばしば劇化の題材となる時代について、他に類を見ない地上の視座を提示する。 全国紙は「スペクタクル性を断固として拒み、日々の根気強さの中に、この世界の揺るぎない愛の秘密を見出す」「見逃してはならない」と評した。 このほか、(フランス芸術・実験映画館協会)が若年層カテゴリーの支援対象に選定 、日刊紙が約400作品の中から2017年ベスト映画20作品のひとつに選出 、娯楽情報サイトフランスが2017年ベスト映画第5位に選出した。 イタリアの日刊紙は「この主人公の空想的な捉え方は、言葉では言い表せない戦争の恐怖を<正常化>するものであるが、この正常化はほとんど真逆の効果をもって戦争の恐怖をあらわにする」「この片渕作品は本当にうれしい驚きであり、近年公開された戦時中を舞台にした長編映画の中で最も成功した作品のひとつである。 長く語り継ぐことになる作品である」と評した。 オーストラリアの映画誌は、本作に満点である20点を与えて2017年ベスト映画のトップ3作品のひとつに選出し、「映画作品という枠を超えている」「おそらく最大の勇気が示されるのは、生き残った人たちが日々ゆっくりと前に進むラストである。 失われたものは元に戻すことができないが、生きている我々は生き続けなければならない。 そして、もしかしたら生きているうちにある日、生きるに値する世界が訪れるかもしれない。 我々でなければ次の世代に」と評した。 中国の映画情報サイトは「このアニメをもっての引退を受け入れることができる」「結局のところ、罪と罰や善と悪についての歴史的結論はこの映画が語りたいことではなく、この映画の物語にあるのは政治化された視点ではなく完全に市民の視点である。 歴史の節目に道徳上の判断を下すのではなく、普通の人々の情感と悲劇を真に表現するものである」と評した。 映画賞・映画祭による評価 [ ] 本作は最優秀アニメーション作品賞、第90回日本映画第1位、第71回日本映画優秀賞・、第21回大賞を受賞するとともに、日本国外では第41回長編部門審査員賞、第19回長編部門グランプリを受賞し、第45回、第21回アニメーション映画賞にノミネートされた。 監督の片渕は、第67回文部科学大臣賞、第59回監督賞、第90回キネマ旬報ベスト・テン日本映画監督賞などを受賞した。 またチームとして第65回を受賞した。 キネマ旬報ベスト・テンにおいてアニメーション映画が日本映画ベスト・テン第1位に選出されるのは、監督『』以来28年ぶり2度目である。 また、ブルーリボン賞、キネマ旬報ベスト・テンにおいてアニメーション映画の監督が監督賞を受賞するのは、それぞれ史上初である。 第67回芸術選奨は、本作について「緻密な映像・音響設計で映画ならではの深い感動を観客に体験させる。 すずや家族の慎ましい生活の細部、そして、時間的、空間的な距離感がリアルに迫る。 戦争を知らない世代が戦争の恐怖とともに、世界の片隅にある何気ない日常の大切さ、そして希望までを観(み)る者に静かに感じさせる」、また片渕の業績について「綿密な取材と丁寧な作画で日本映画史に残る傑作を生み出した」と評した。 第31回は、ホリゾント賞 を監督の片渕と主演声優ののんに贈賞し、「時代を伝えること、世界を広げること、を可能にする懐の深い映画であった。 企画・構成・演出・手法 あらゆる面で、この先の日本映画に一筋の光を照らした作品となった」「ゆったりと朗らかに発話するのんさん演じるすずに、私たちはその世界に心地よく誘われ、また諭された」と評した。 第71回毎日映画コンクールは、大藤信郎賞の贈賞について「全編、温かみのある水彩画風の美術世界と細やかな動きで彩られ、時に切り紙やフィルムに描くシネカリ技法のタッチを取り入れるなど、アニメーションでしか表現し得ない美しさと楽しさに満ちた、まさに絵に命が吹き込まれた珠玉作である」と評した。 第65回菊池寛賞は、「戦時下の広島・呉を舞台に、市井の日常を、緻密な時代考証と見事なアニメーション表現で活写。 商業ベースに乗りにくいテーマを資金集めに苦心しながらも制作、大ヒットに結びつけた。 」と評した。 第22回AMDアワードは、本作の制作に対して年間コンテンツ賞「優秀賞」を贈賞し、「クラウドファンディングの導入やSNSでの感動の広がりは新時代を象徴していた。 大ヒットとなった実績とともに、その熱意とアイデアを高く評価」と評した。 第21回文化庁メディア芸術祭は、アニメーション部門の大賞を本作に贈賞した。 審査委員の横田正夫は、贈賞理由として次のように評した。 『この世界の片隅に』は、刺激的で動きの激しいアニメーションの多い中、日常動作に動きの美しさを見出している点で特筆すべき作品と思われる。 肩に掛かる荷物の重さや、持ち上げる時の動作のように、日常の当たり前の、普通ならば何気なく見過ごしてしまうものに、その動作を行う個人の人格の表れを見せてくれている。 そうした人格を持つ個人が、実は数多く存在し、日常のこまごまとしたことに、ささやかな喜びを見出している。 食事の用意から近所付き合いなど、日常がごく平凡に過ぎてゆくことが大事なのだと教えてくれる。 この教えが切実なものと感じられるのは、背後に戦争という現実があるからでもある。 しかし翻ってみると、われわれの周辺には、大きな災害がいきなり襲い掛かってくることもある。 『この世界の片隅に』の描いている現実は決して遠い過去のことではなく、まさに今の日本にもあり、かえってより切実となっているとも言えるのであろう。 特別選定(対象:青年向き、成人向き、家庭向き)• 文部科学省選定(対象:少年向き)• 特別推薦(対象:小学生以上・家庭・一般)• 年少者映画審議会推薦作品 各方面からの反応 [ ] 本作は、以下のように様々な分野の研究者などによる考察ないし議論の対象となっている。 者であるは、姉妹、虫たちの営み、食事の支度など様々な観点から本作を考察し、「アニメーション版『この世界の片隅に』を捉え直す」と題して全18回にわたってウェブサイトに記事を掲載した。 者であるは、社会学的見地から「映画『この世界の片隅に』は我々の大規模定住社会が立ちゆかなくなる理由を示す」と論じた。 デザイン評論家であるは、すずが絵を描くことに焦点を当て、「映画『この世界の片隅に』を観ながら、絵を描くことの意味を考えてみる」と題した記事を公表した。 アニメーション評論家であるは、映画は原作のストーリーを忠実に再現しつつも、突然の結婚によって少女でいられなくなったすずが、最終的に自分自身を見つけ直すに至るまでの物語として再構成されており、そうした構成を浮かび上がらせることを意図した台詞の変更やエピソードの追加が行われていると分析した。 反戦映画としての評価 [ ] 本作、及びこうの史代の原作漫画に寄せられた評価の中には、「声高な反戦のメッセージ性がないからこそ素晴らしい作品である」「反戦作品ではない」「左翼的でないから良い」という趣旨のものも少なからずあった。 こうした意見はネット上で交わされる言論に多く見られ 、による漫画『』のような、反戦をテーマにした従来の作品との比較の中で立ち現れることが多い。 また、同様の評価は原爆投下後の広島を舞台にしたこうのの前作『』に対しても寄せられている。 一方、そうした意見に対しては少なからず反論もある。 ・を自称する漫画評論家のは、こうのによる原作漫画を、反戦をテーマにした過去の漫画作品と比較することで「反戦漫画ではない」という言説を検証し 、原作漫画について、過去の反戦作品で脈々と語られてきたテーマを「戦争による居場所の喪失」などといった独自の切り口で語り直したものと位置づけ、戦後日本の平和運動や反戦思想と無縁の作品ではないと評した。 また、映画評論家の小野寺系は、本作に対する「反戦映画でないから良い」というような一部の見解は、それまで戦争映画をあまり観たことがなかったような観客層が抱く「戦争映画はひたすら陰鬱で面白味のない作風で描かれているものばかり」という先入観によるものであるとし 、監督による1954年の映画『』などを例に、戦争を俯瞰せず生活者の実感という目線で描くことや、そこにユーモアを交えること自体は古くから今まで数多くあるテーマであり、本作を従来の戦争映画の流れに沿ったものであるとした。 大衆文化研究者の森下達は原作漫画について、原作者のこうのが「紛れもない生活(ギャグ)漫画」と称していることを踏まえつつも、原作が日常に重きを置いていることは社会的な広がりを欠いていることを意味しないとし、戦争という大きな歴史の流れが、別々の人生を歩んできた登場人物たちを一様に巻き込み、日常を侵食していく様子を描いていることを指摘した。 映画では、終戦の日を迎えたすずがを見て泣き崩れる場面の台詞が原作から変更されており(詳細は「」を参照)、原作ではのことを示唆する台詞であったものが 、映画では輸入米の話になっている。 監督の片渕は映画におけるすずの台詞を、自分が食べていた米が朝鮮米であることに思い至る描写で 、日本の支配〔〕 について直接触れる台詞であるとしており 、すずが泣き崩れるのも、今まで国を挙げての戦争を肯定していた自分を薄みっともなく思って泣いたのだという解釈で描いたと述べている。 映画評論家のによれば、終戦の前年は朝鮮半島では災害による大飢饉があったにもかかわらず、日本は朝鮮から希少な米を取り上げて本土へと送っており、すずの台詞にはそのような歴史的背景があるとしている。 一方、映画では原作と比べて太極旗の意味が分かりにくいものになっており 、産経新聞はこの場面を「原作通りに旗を出したが、そこに政治的な意図を込めたくなかった」のであろうと評した。 監督の片渕は、映画版での台詞が植民地支配 について触れるものであることに気がついてくれる人はあまりおらず 、そこに言及してくれたのは町山くらいであったとも述べている。 終戦の日に掲げられた太極旗の描写について、観客の間では解釈を巡る論争があった。 一方には、これをすずたちが住む呉でもが日本人と共に戦火に巻き込まれながら暮らしていたことを表すもので 、植民地支配 からようやく解放されたという意味で掲げたものだと解釈する意見がある。 アニメ評論家のは、終戦の際に太極旗を掲げた家が、映画ではそれ以前の場面にも兵士を送り出す舞台として登場していることを指摘し 、これを原作にあった「暴力で従えとった」というすずの台詞をさりげなく補完するものだと評している。 『日本会議の研究』などの著作で知られ、かつて「」に参加した過去もある著述家のは映画について、「銃後の小市民」たちが戦争の被害者であると同時に加害者でもあるという、これまでの戦争を扱った従来の日本映画に欠けていた視点を鋭くえぐり出す作品であるとして高く評価した。 一方、の准教授で在日韓国人の文化を専門分野とする社会学者のは、原作は読んでいないとしつつも映画版の感想として、日本人の加害者性に関して何の伏線もなく登場する太極旗は、単なるエクスキューズ(言い訳)に留まるものであり、悪しきの例とも言うべき蛇足なものとして批判した。 他方、Twitterに寄せられた感想の中にはこの太極旗を、「」などが実在を主張している(=朝鮮人による武装蜂起)に関連した描写として解釈し、それを「単なる(左翼的な)反戦作品ではない」理由に挙げて賞賛する意見もあった。 このようなネット上の解釈を否定的に取り上げたニュースサイト『』の記者酒井まどは、徹底的な時代考証の元で制作された本作が、が広めた朝鮮進駐軍なる真偽の怪しいを採用するはずがないとし 、原作にもあった太極旗の描写は、こうのの前作『夕凪の街 桜の国』に対して寄せられた「日本人の不幸しか描かれていない」という批判に対する回答であろうと推察した。 なお本作の原作漫画で戦争責任の問題がはっきり描かれていない理由について、原作者のこうの自身が語るところによれば、当時の人々を悪しざまに描けば、読者は「この時代の人はこういうことをやっているからダメなんだ」と他人事のように受け取ってしまうと考え、特定の誰かを糾弾する描写を排除したためであるとし、庶民が罪の意識も責任感も持たないまま簡単に戦争に転じていく様子を現代に伝える意図があったとしている。 原作漫画で日本人による中国人や韓国人に対する差別が描かれていないのも、被差別者に対して優しい主人公を免罪符のように描けば、読者に対して「自分だけは悪くない」という逃げ道を与えてしまうことになるため、そのような描写を避けた結果であるとしている。 アニメ評論家でありインターネットと保守にまつわる問題も専門としている文筆家のは、中沢による漫画『はだしのゲン』を本作と比較し、『はだしのゲン』における主人公・ゲンの主張は正論ではあるものの、原爆症を克服し社会と戦うゲンの姿があまりに超人的に描かれているために感情移入できず、他人事の主張として認識してしまうため、戦後教育を受けながらも戦争を美化して捉えているような層には主張が伝わらなかったと批判し、それに対して本作の主人公すずは、自分たちと同じ皮膚感覚を持った人間として感情移入できるとして称賛した。 漫画家・漫画評論家のは、『はだしのゲン』と本作を二者択一で評価するような論調には違和感を感じるとしつつも、戦争の描き方としては対照的であるとした。 いしかわは、『はだしのゲン』の場合は執筆当時の作者にとって戦争の記憶が生々しく、自身の戦争体験を咀嚼して作品に反映する余裕がなかったのに対し、本作の場合は原作者のこうの自身が戦争を体験していなかったために、ストレートに主張をぶつけるような形で戦争を描くことこそできなかったが、それゆえに多くの人々に伝わる作品になったのだと分析した。 一方、フランス文学者で漫画研究家の中田健太郎は、前述の本作における戦争責任の問題に関連したこうのの発言を引きつつ、『夕凪の街 桜の国』などのこうの作品が声高でない戦争批判に見えることは、戦争批判が控えめであることを意味せず、資料を駆使して作者自身が直接体験したことがない時代の人間像に迫り、敵と味方を分けて政治を論じるような安易な言説を潜り抜けて書くことこそが、こうのの作品全般における政治性であり、譲れない願いを込めた戦争批判なのだと評した。 漫画『』などを手掛けた漫画家のは、原作者であるこうのとの対談の中で、原作漫画が「反戦」「平和」といったわかりやすい題材に加えて「戦争の面白さ」も扱っているとしつつも、それが空襲によって完膚なきまでに破壊されてしまう末路まで描いていることを指摘し、一周回って共感する部分が多いとした。 こうのは西島との対談の中で、戦争の悲惨さだけを語っても悲惨な話が好きな人にしか伝わらず、人間が戦争に惹きつけられてしまう理由を描くには、戦争の魅力も同時に描かなければならないのだとした。 テレビアニメ『機動戦士ガンダム』などを手掛けたアニメ監督のは、本作の監督である片渕との対談の中で終戦の場面にも触れる中、主人公・すずの言動が戦争の窮状に伴って右翼的になっていくことを指摘しつつ、こうした状況は各国の戦争で見られるものであるとし、女性も男の論理をもって戦わざるを得ないという状況に至るまでの統治や国際関係について、考えたり議論したりする叩き台として優れた映画であると評した。 内容の普遍性 [ ] 本作は、が運営するオピニオンサイト『iRONNA』で「この作品の魅力をとことん語り尽くす」として取り上げられる一方 、で「主人公「すず」の健気さが胸に迫る作品」として取り上げられるなど 、政治的スタンスを異にする各メディアから好意的に取り上げられた。 日本国外では、上述したように、米国映画批評サイトで肯定的評価の認証を受けるとともに 、中国メディアから「結局のところ、罪と罰や善と悪についての歴史的結論はこの映画が語りたいことではなく、この映画の物語にあるのは政治化された視点ではなく完全に市民の視点である。 歴史の節目に道徳上の判断を下すのではなく、普通の人々の情感と悲劇を真に表現するものである」と受けとめられた。 また本作は、の広島市連絡協議会が開催したイベントでトークショーのテーマとして取り上げられ、「われわれの存在がはかない分、いとおしさを感じさせられた」と評される一方で 、 JAPAN(・メディア協議会)から日本カトリック映画賞を受賞し、「映画を観たとき、今という時間や生活、そして一人ひとりを大切にしなければと思いました。 一人ひとりのうちに秘められた尊さをもっと大切にしたい」と評されるなど 、宗教観を異にする各宗教団体から好意的に評価された。 なお、監督の片渕は、米国公開に際して「この映画は政治的には中立的で、国籍や思想に関係なく見てもらえると思う」と述べている。 『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』 [ ] この世界の(さらにいくつもの)片隅に In This Corner and Other Corners of the World 監督 脚本 片渕須直 原作 『』 製作 製作総指揮 出演者 音楽 制作会社 製作会社 2019「この世界の片隅に」製作委員会 配給 公開 上映時間 168分 製作国 言語 『 この世界の(さらにいくつもの)片隅に』(このせかいのさらにいくつものかたすみに)は、『この世界の片隅に』に対して、当初の絵コンテを見直しながら復活させるほか、新たなカットも加えることにより、約40分間の映像(250カット超 )が追加されるバージョン。 『この世界の片隅に』では描かれない秋の季節のエピソードなどが加わり、主人公すずの人間的な側面がより浮き彫りになるという。 新たなタイトルは、従来のバージョンとは主題が異なる「もう一本の映画」としての意図を込めたもので 、片渕の案をこうのが承諾したものである。 上映時間168分 という長さはアニメーション映画としては史上最長記録である。 『この世界の片隅に』の興行収入が10億円を達成すれば、当初の絵コンテに沿った長尺版を制作することがプロデューサーの真木により示唆されていた。 条件の達成を受けて、長尺版の制作準備が2017年8月に開始され 、2017年11月12日、公開1周年の舞台挨拶上で製作が正式に発表された。 2018年7月26日、長尺版のタイトルが『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』となり、2018年12月に公開されることが発表され 、ティザーサイト が公開された。 2018年10月19日、当初の想定以上に制作に時間を要しているため、公開時期を2019年に延期することが発表された。 2019年3月29日、都内で行われたイベント内で公開日を2019年12月20日とすることが発表された。 公開に先立って、11月4日に第32回にてワールドプレミアが行われ 、11月22日に広島国際映画祭2019のオープニング作品として上映された(特別先行版/英語字幕。 上映時間は159分。 一般公開版では、さらに3つほどのシーンが加わる。 12月18日に一般公開版によるチャリティー試写会が行われた。 この会には、、が一家で出席し、片渕、のんと並んで座り鑑賞した。 『この世界の片隅に』の制作時に11歳であったが演じる黒村晴美の声は、稲葉のを見越して、本作で追加する台詞も『この世界の片隅に』の制作時に録音されていた。 登場人物・声の出演(追加) [ ] 詳細は「」を参照 『この世界の片隅に』と共通する登場人物は参照。 テルちゃん - すずが遊郭で出会う九州出身の女性。 スタッフ [ ]• 原作:『この世界の片隅に』(刊)• 企画:• 監督補・画面構成:• キャラクターデザイン・作画監督:• 音楽:• プロデューサー:• 監督・脚本:• 製作統括:• アニメーション制作:• 配給:• 後援:・/• 製作:2019「この世界の片隅に」製作委員会(朝日新聞社、AT-X、Cygames、TBSラジオ、東京カラーフォト・ウィングス、東京テアトル、東北新社、バンダイナムコアーツ、ビーエスフジ、双葉社、マック、MAPPA、ジェンコ) 興行成績 [ ] 42館で公開された初週は、動員ランキング14位であった。 『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』日本国内の動員数・興行収入の推移 動員数(万人) 興行収入(億円) 備考 週末 累計 週末 累計 1週目の週末 12月21日・22日 14位 - 1. 6 - 0. 23 評価 [ ] 映画レビューサイトFilmarks(フィルマークス)の2019年12月第3週公開映画の初日満足度ランキング第1位(平均スコア4. 48点/5点満点) /の2019年12月20日、21日公開の映画初日満足度ランキング第1位(満足度95. 3点は『この世界の片隅に』の95. 2点を上回る) とそれぞれ発表された。 は、、の映画評を掲載し、それぞれ5点、3点、5点(5点満点)を与えた。 年少者映画審議会推薦作品。 『<片隅>たちと生きる 監督・片渕須直の仕事』 [ ] <片隅>たちと生きる 監督・片渕須直の仕事 監督 製作 ナレーター 出演者 音楽 コトリンゴ 撮影 製作会社 「片隅たちと生きる」製作委員会 配給 公開 上映時間 95分 製作国 言語 『 <片隅>たちと生きる 監督・片渕須直の仕事』(かたすみたちといきる かんとくかたぶちすなおのしごと)は、『この世界の片隅に』から約3年わたって監督を追ったドキュメンタリー映画。 12月13日より劇場公開され、12月18日よりネット配信が開始された。 テーマ曲「かんとくさん」はによる書き下ろし。 スタッフ [ ]• 監督:• 音楽:• 語り:• 撮影:• 製作:• 制作協力:• プロデューサー:、• 共同配給:、ジェンコ 関連商品 [ ] 音楽 [ ]• 劇場アニメ「この世界の片隅に」オリジナルサウンドトラック (作曲:、発売元:、販売元:、2016年11月9日)• ピアノミニアルバム 映画「この世界の片隅に」<公式楽譜集>(、2017年3月17日)、• 「この世界の片隅に」さらにいくつものサウンドトラック(作曲:コトリンゴ、発売元:フライングドッグ、販売元:ビクターエンタテインメント、2019年12月18日) 書籍 [ ] 公式資料など [ ]• 『この世界の片隅に』公式アートブック (、2016年9月14日)、• 『この世界の片隅に』劇場アニメ公式ガイドブック (、2016年10月30日)、• 『この世界の片隅に』劇場アニメ絵コンテ集(双葉社、2016年11月4日)、• 『この世界の片隅に』劇場アニメ原画集(双葉社、2017年11月10日)、• 『、へ。 2泊3日の旅』〜「この世界の片隅に」すずがいた場所〜 (双葉社、2016年12月16日)、• 『ありがとう、うちを見つけてくれて』「この世界の片隅に」公式ファンブック(双葉社、2017年7月28日)、• 著: 他• 寄稿など:、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、こうの史代、のん、、、、、、、、、、、、• 『この世界の さらにいくつもの 片隅に 公式アートブック さらにいくつもの増補』(宝島社、2019年12月7日)、• 『この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]上巻』(スタイル、2019年12月20日)、• 『この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]下巻』(スタイル、2019年12月20日)、• 『この世界の さらにいくつもの 片隅に』劇場アニメ公式ガイドブック(双葉社、2020年1月30日)、• 『この世界の(さらにいくつもの)片隅に 美術画集(仮)』 (、2020年7月20日)、 小説 [ ] 蒔田陽平による版が発売されている。 映画版の脚本、絵コンテ、および原作漫画を元にした小説化作品。 物語冒頭のできごとが「昭和8年12月22日」と設定されたり、昭和20年3月19日における呉軍港空襲でカラフルな対空砲火を目撃したすずの心理描写が描かれたりするなど、映画版の設定や描写が取り入れられている一方(「」を参照)、映画版では描かれない、原作漫画のリンにまつわる一連のエピソードが取り入れられている。 昭和20年8月15日の玉音放送の場面は、の歌声を耳にしたすずが、映画版の台詞に原作漫画の台詞を続けるという、映画版と原作漫画を折中した描写となっている。 『ノベライズ この世界の片隅に』原作 こうの史代、ノベライズ 蒔田陽平 (、2016年10月13日)、• 『ノベライズ この世界の片隅に』原作 こうの史代、ノベライズ 蒔田陽平 (、2016年12月22日)、 アニメ絵本 [ ]• 『この世界の片隅に』(徳間アニメ絵本、、2019年3月8日)、 作品評・作品分析 [ ]• 『』2016年11月号「特集=こうの史代」 (、2016年10月27日)、• 『今日を生き延びるためにアニメーションが教えてくれること』佐分利奇士乃 著(学芸みらい社、2018年12月25日)、• 『』2019年4月号【巻頭特集】模型で読み解く『この世界の さらにいくつもの 片隅に』(大日本絵画、2019年2月25日)• 『「この世界の片隅」を生きる ~広島の女たち~』堀和恵 著(郁朋社、2019年7月24日)、• 『「この世界の片隅に」こうの史代 片渕須直 対談集 さらにいくつもの映画のこと』(、2019年11月29日)、• 『片渕須直』(文藝別冊、、2019年12月19日)、 その他 [ ]• 「この世界の片隅に」すずさんボイス付きスタンプ (作画:浦谷千恵、演出:片渕須直、声:のん)• 「この世界の片隅に」公式カレンダー 2017(、2016年12月31日)、• 「この世界の片隅に」公式カレンダー 2018(クロブルエ・ジェンコ、2017年12月30日)、(4月始まり )• 「 すずさん」(、発売:2018年4月、公式オンラインショップでの予約受付:2017年10月24日~11月22日)• miniQ「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」コレクション(、2019年11月) 脚注 [ ] 注釈 [ ]• 劇中では具体的な日付には言及されないが、ノベライズ版では昭和8年12月22日の出来事であると描写されている。 原作では昭和20年5月に武官に転属されて以降、7月の海兵団での訓練中止後も戦後の海軍解体まで武官のままである。 一方、映画版では訓練中止後に一時文官に戻っている。 「つぶやき数」は、映画レビューサイトcocoによる独自集計により、Twitter上で該当作品が1週間のうち何回言及されたかをカウントした延べ数。 『』— 15. 発表の全国映画動員ランキングによる。 映画館以外の上映は対象外。 2015年公開の『』の記録。 参加番組は『』・『』・『』・『』(以上NHK総合)・『』()・『』(ラジオ第一・)の6番組である。 上部の作品情報欄を参照。 映画館で作品を観終わった観客に聞き取り調査を行い、満足度調査を実施。 近年の満足度ランキング1位は、2012年『』93. 9点、2013年『』94. 4点、2014年『』93. 9点、2015年『』94. 4点、2016年『この世界の片隅に』95. 2点、2017年『』94. 公開当時、『となりのトトロ』と『火垂るの墓』は二本立てで上映された。 『となりのトトロ』のような楽しいアニメを見ようと映画館を訪れ、楽しいトトロを見た後に『火垂るの墓』を見て、衝撃を受ける、涙が止まらない、茫然自失で席から立ち上がれない観客が続出したという。 「日本アニメ100年の歴史の中で、もっとも重要だと思われる10作品をお挙げください」に対する回答を集計。 2作品同時の大賞受賞は2001年の『』『』以来16年ぶり2度目。 第41回報知映画賞において、本作は邦画作品賞にノミネートされたが、アニメーション映画として史上初の受賞とはならなかった。 キネマ旬報ベスト・テンにおいてアニメーション映画が日本映画ベスト・テン第1位に選出されたのは、監督『』以来28年ぶり2度目である。 キネマ旬報ベスト・テンにおいてアニメーション映画の監督が監督賞を受賞したのは史上初である。 毎日映画コンクールにおいてアニメーション映画が日本映画大賞又は日本映画優秀賞を受賞するのは、第56回日本映画大賞を受賞した宮崎駿監督『』以来15年ぶりである。 第71回毎日映画コンクールにおいて、主演声優ののんが女優主演賞に異例のノミネートをされたが、アニメーション映画の声優として史上初の受賞とはならなかった。 ベストテン1位、ワーストテン8位。 ベストテン1位は、素点からワーストテン8位の点数を差し引いた結果。 東京スポーツ映画大賞においてアニメーション映画が作品賞に選出されたのは、監督『』以来21年ぶり2度目である。 ブルーリボン賞においてアニメーション映画の監督が監督賞を受賞したのは史上初である。 以外の配給映画が本賞を受賞したのはの『』()以来7年ぶりである。 日本カトリック映画賞にアニメーション映画が選出されるのは、監督『』以来28年ぶり3度目である。 理論と実践を結びつけた創作活動をはじめとする、アニメーション研究への貢献に対して。 「自身が研究会で得た視覚心理学の知見に基づく実践を、2016年に公開された作品『この世界の片隅に』の制作において積極的に試み、成果をあげた業績は特筆に値する」と評した。 『』で第41回の最高賞を受賞した監督との同時表彰。 アニメーション監督が表彰されるのは、短編アニメーション『』で第81回に輝いた監督(2009年表彰)以来、8年ぶりとなる。 『アニメーション映画「この世界の片隅に」の応援を通したロケ地広島の魅力発信』• 「一同」には、原作のこうの史代、片渕須直監督、制作・製作スタッフ、声優、クラウドファンディングに参加した者が含まれるという。 日本作品は、海外の子ども映画祭関係者や映画祭ディレクターら国際特別審査員6名により選定。 同一作品が2年連続部門賞を受賞するのは、史上初である。 (公開から2年を対象とする規定による。 アヌシー国際アニメーション映画祭における審査員賞は準グランプリにあたる。 第23回ロサンゼルス映画祭では、全部門において本作が唯一のアニメーション映画の出品である。 第71回エディンバラ国際映画祭では、最優秀外国長編映画賞において本作が唯一のアニメーション映画のノミネートである。 本作は審査外部門(感官嘉年華 Sensations)への出品であるが、観客投票は全部門(160作品余り)が対象である。 本作の第4位は、台湾以外の作品の中で最上位となる。 第66回メルボルン国際映画祭では全357作品が上映される。 長編部門は審査されないが、本作を含む6作品が"Animation"に分類され、他の長編作品とともに観客投票の対象となる。 『』と同時受賞。 審査員は高校生による。 「」を参照。 産経新聞の記事では「植民地支配」という表現を用いているが 、当時の日本の支配地域が植民地と呼べるものであったかどうかについては議論もある。 「」を参照。 らの検証によれば、「」(在特会)が配布したチラシに掲載されている写真は、実際には武装した日本人の警察官を写した写真に、「銃を所持した在日朝鮮人」という趣旨の、事実と異なったキャンプションをつけたものであるとされ 、またチラシ本文の「GHQによれば約4,000人の日本人が在日朝鮮人の武装集団によって殺害された」とする内容も裏付けが取れず、実際にあった事件とも実態が異なるとしており 、実態のないであるという疑いが持たれている。 一方、在特会の支持者やその主張を鵜呑みにした人々の間では歴史的事実として語られ、ブログなどを通じて拡散されている。 詳細は「」を参照。 出典 [ ] []• Official Website. 2017年7月17日閲覧。 Encore Films 2017年6月9日. 2017年6月12日閲覧。 2017年11月4日. 2017年11月18日閲覧。 The Reel Bits. 2017年8月25日閲覧。 ANIMEGUIDEN. 2017年7月20日閲覧。 ORICON NEWS. 2017年4月15日閲覧。 CINEMA Life! 2017年2月28日. 2017年5月20日閲覧。 DODY KUSUMANTO 2017年6月7日. 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映画『この世界の片隅に』ネタバレ感想・解説・考察!反戦映画ではない?世界に居場所を見つけるための物語

この 世界 の 片隅 に 解説

かるび( です。 【2017年12月9日最終更新】 話題のアニメ映画「この世界の片隅に」を見てきました。 制作費の大半を賄ったクラウドファンディングや、女優として再起をかける「のん」が主人公のすず役の声優を務めたことなど、口コミで話題が広がった作品です。 初日に行ってきたのですが・・・ 驚いたのは、 なんと終演後、フツーのシネコンなのに会場内から自然発生的に拍手が出てきたこと!その後、パンフレット購入に長蛇の列ができるなど、見終わった後のお客さんの反応や熱量も抜群でした。 早速、以下感想レポートを書いてみたいと思います。 1.映画の基本情報 <オフィシャル予告動画> 【監督】片渕須直 (「 」「マイマイ新子と千年の魔法」他) 【脚本】片渕須直 【原作】こうの史代( ) 【音楽】 映画作品では前作でカルト的人気を博した単館系作品、 以来、メガホンを取るのは7年ぶりとなった片渕須直が監督。 今作の製作途中で行われたクラウドファンディングによる資金調達では、短期間で4,000万円弱を集め、公開前からその期待は非常に大きかったのです。 のんこと能年玲奈への旧事務所および音事協の放送メディアへの圧力は「彼女を出演させるな」につきるので『この世界の片隅に』という作品そのものはいくら取り上げてもかまわないのに、テレビが全然扱わないのは単なるビビリの自主規制ですね。 — 町山智浩・告知用 TomoMachi 主役、すずの声を務めた能年玲奈ことのんに対する大手芸能事務所のあからさまなメディア締め出し(疑惑?)により、 十分な広告宣伝がテレビ・ラジオ等で行えなかったにもかかわらず、映画評論家をはじめ、見終わった人が絶賛するなど、ネット経由の口コミで人気が広がりました。 現在、公開6週目となりますが、お正月には公開館数が200館を突破するなど、一般への認知度も上がってきました。 すでに興収は10億の大台を突破。 まだまだ上映は終わる気配がありませんので、 最終的な興収予測は20億超えもありうるかもしれません。 2.主要登場人物とキャスト 北條すず(CV:のん) 本作の主人公。 のんびりマイペースで、天然キャラ。 誰からも好かれる憎めない性格で、北條家では控えめに振る舞う。 北條周作(CV:細谷佳正) すずの夫。 海軍の軍法会議所で録時として働いている。 運動神経は鈍く、優しく温厚な性格。 黒村径子(CV:尾身美詞) 周作の姉で、旦那と死に別れて離縁し、子供の晴美とともに北條家へ戻ってくる。 一人息子は下関の黒村家にいる。 すずには厳しくあたりがち。 黒村晴美(CV:稲葉菜月) 径子の娘。 径子とともに北條家へ来てから、すずになついている。 別れた兄の影響で、軍艦に詳しい。 白木リン(CV:岩井七世) 呉の繁華街の遊郭で働く。 すずが道に迷った際、すずに道案内して交流する。 小さい頃から叔母の家で座敷わらしと交流したり、街に出た時に人さらいおばけに出くわしたり、日常的に非現実的な出来事も多かった不思議系少女でもあった。 すずの特技は、絵を描くこと。 中学の時、クラスのガキ大将で幼馴染だった 水原哲 (CV:小野大輔)の代わりに描いた海の風景が、(水原哲の名前で)絵画コンクールで受賞したこともあった。 そんなすずに転機が訪れたのは18歳の時。 電車を乗り継いで広島から2時間程離れた呉の高台にある北條家の長男で、呉の鎮守府内の海軍軍法会議で「録時」として働く 北條周作(CV:細谷佳正)からの指名で、嫁入りすることに。 右も左も分からない中、祝言を挙げ、北條家へ嫁いだすず。 小姑である周作の姉である 径子(CV:尾身美詞)は性格からなのか、すずにきつく当たってくる。 慣れない中、頭にハゲができたりもするが、夫、周作のサポートなどもあり、すずは持ち前の明るさで、徐々に北條家にとけこんでいく。 夫の死後、離縁して実家に帰ってきた径子の連れ子、 晴美(CV:稲葉菜月)からはよくなつかれ、一緒に遊んだり、絵を描いたりと楽しく交流する毎日だった。 ある日、晴美が貴重な砂糖壺を水の中に流してしまったので、呉のヤミ市へ買いにでかけたすずは、その帰り道で道に迷ってしまう。 そこで遊郭の 白木リン(CV:岩井七世)とはじめて出会う。 別の日に、軍法会議所での勤務が終わった周作と呉の町中で合流し、たまの夫婦水入らずの夕方を過ごしたすずは、周作から「やせた」と指摘され、妊娠の疑いから病院へ検診に行ったが、結局ただの夏バテによる体調不良だった。 昭和20年になると、いよいよ軍事基地がある呉にも空襲が頻発し、周作も家を3ヶ月間離れることになった。 また、工廠で航空機エンジニアとして働く義父の 円太郎(CV:牛山茂)も空襲で大ケガをして、町の病院に入院しているという。 晴美を疎開させるため、切符を購入する待ち時間の間に、晴美を連れて円太郎の見舞いに出かけたすずだったが、その帰りに空襲に遭遇する。 すぐ近くの防空壕で晴美と難を逃れたが、空襲が終わって防空壕を出た時、時限爆弾が爆発し、晴美は死に、すずは絵を描くための大切な右手を失った。 径子からは「人殺し」となじられ、さすがのすずも自分を責め自暴自棄になる。 7月に入ると、さらに戦況は悪化する。 北條家にも焼夷弾が落ちたり、至近距離から機銃掃射による空襲を受けたり、常に命の危険にさらされながら、「帰りたい」と周作に訴えるなど、不安定な心のまま毎日をすごすすず。 そして8月6日の朝。 径子から、「人殺し」と非難されたことについて謝罪を受け、思いがけなく優しい言葉をかけられ、心がほぐされたすずだったが、和んだのもつかの間。 広島で原爆が落ち、ものすごい地響きとキノコ雲を見て不安になるすずだった。 そして、終戦。 一家そろって玉音放送をラジオで聞いた北條家。 「晴美・・・」と言って泣き崩れる径子。 自宅裏の畑で泣き崩れたすず。 終戦を区切りとして、その日、すずの義母、 サン(CV:新谷真弓)はとっておきの白米を一家に振る舞った。 終戦後、進駐軍が占領を開始すると、軍で働いていた円太郎と周作はお役御免となり、自宅へと帰ってきた。 浦野家では、原爆が落ちた日、母は即死、父は10月に病死。 生きていたのは放射能の後遺症で寝込んでいた すみ(CV:潘めぐみ)だけだった。 また、幼馴染の哲も無事に帰還していたが、その後姿をみかけたが、すずは敢えて声をかけなかった。 年が明け、街のベンチに座って握り飯を食べながら周作と話をしていると、ヨーコという小さな身寄りのない女の子が近寄ってきた。 握り飯をヨーコに分け与えるすず。 そのまま、ヨーコは二人のあとをついてきた。 北條家でヨーコが新しい家族として迎えられようとしていた。 片渕監督の抜擢理由が、 「コメディ演者としての自覚や表現へのこだわりが強く、生活感をフラットに出せる演者であったこと」とあったように、主人公すずのコミカルでおおらかな性格にぴったりフィットした抜擢は、大当たりでした。 4-2.戦時中を描くも、牧歌的でファンタジックな情景 本作は、 基本的に主人公すずを通して見えている世界を描き出した「私小説」に近い構成です。 すずを通して見えた戦時中の風景や心情を描き出しているため、物語前半部分は、緊迫した戦時下でもどこか牧歌的でのんびりとした柔らかく優しい情景が広がっています。 日常世界をどこか幻想的に映し出すパステル調のきれいな画像は必見。 抑えめの色使いで彩られた画面に癒やされます。 4-3.徹底した考証に支えられた精緻な描き込み すずの心の中を描写したような牧歌的なトーンで描かれる一方、描かれた内容は極めてリアルです。 で制作の舞台裏が取材されていますが、戦時下の呉の街並みや人々の生活風景、空襲の日時、その被害状況、被災場所など、徹底的なロケハン(下見等の現地調査)とヒアリングにより再現されました。 戦場シーンをリアルに描いたクライム・アクションアニメ で磨いた詳細な戦闘シーンの表現力を活かし、至近距離で爆発する焼夷弾や、機銃掃射、防空壕の中での振動や原爆が落ちた瞬間の描写は、鳥肌が立つほどリアリティがあります。 70年前の戦時中の日本の生活や風景は、まるで別世界のようでした。 4-4.厳しい戦時下でも日常生活を守ろうとする市井の人々 衣食住全てにおいて、配給制限や闇市での物資の高騰が生活を圧迫する中、人々が協力しあい、工夫して毎日の生活を少しでも充実させようと懸命に取り組むシーンが淡々と描かれるところに心を打たれました。 特に印象的なのは、北條家や浦野家の食事シーン。 終戦が近づくに連れ、どんどん劣化する一方の食事内容でも、身を寄せ合うように一つのカマのご飯を頂くカット(もちろん、まずい時は皆まずそうな顔をする)が何度も繰り返し描かれます。 そして、戦後の進駐軍の炊き出しを手に入れた径子とすずが、どうみてもねこまんまにしか見えないタバコのカスが入った洋風の雑炊を、「おいしい~」と肩を寄せ合って食べるシーンは印象的でした。 4-5.ジワジワと来る、大切な人が亡くなっていく厳しい現実 本作では、戦争の厳しさやつらさ、残酷さだけに焦点を当てたステレオタイプな描き方を脱し、 すずという「普通の」女性から見えた生活風景を淡々と精緻に描き出すことで、戦時中の厳しさが自然に際出つ演出が取られています。 そして、 戦局が悪化するにつれて、大切な人との死別が日常風景になり、天真爛漫なすずでさえ笑顔が消えていくような、暗いトーンへと落ち込んでいくのは見ていてつらかった。 幼馴染の水原の兄は、すずが幼少時、すでに海軍訓練中の海難事故で死亡しています。 嫁入り後、便りが絶えていた出征中の兄は、戦死して浦野家に「形だけの」遺骨が届きました。 さらに、空襲が激しくなると、軍工廠で働いていた周作の父が生死に関わる大怪我をし入院します。 ハイライトは、すずが時限爆発する焼夷弾に巻きこまれた事件。 不可抗力だったとはいえ、子供同様にかわいがっていた晴美を自らの不注意で失い、すず自身もアイデンティティとも言える右手を失い、大好きな絵を描くことができなくなりました。 さらに、畳み掛けるように、8月6日の広島への原爆投下です。 近所の刈谷さんの息子が自宅の前で座って亡くなっているシーン(しかも死が日常的すぎて親さえも気づいていない!)が描かれ、すずの広島の実家の母は原爆で即死、父は10月に病死(恐らく放射線の影響による)しました。 妹は原爆後遺症で寝たきりになりました。 戦局が悪化し、空襲が日常化するとともに、懸命に平静を保とうとするも徐々に壊されていく大切な家族や衣食住。 そして、多くの人が戦争で傷つき、亡くなって行くけれど、 戦時中なので「お国のために亡くなった英霊」に対して人前で泣くことすら許されない。 そんな残酷な展開が、あくまで「すずの生活感覚の中で」ニュートラルに描かれます。 ジワジワと染み入るように重苦しさが伝わってきました。 個人的にも、東日本大震災直後に実際に強く実感したことですが、 大切な人が健在であり、何気ない毎日の生活を平凡に送ることができることが、どれだけかけがえのないことであるのか、それを教えてくれる映画でもありました。 4-6.70年前の、「結婚」から始まる恋愛像 日常生活を描く一方で、この映画は、すずと周作の恋愛映画でもあります。 すずは、見ず知らずの家に就職面接をするかのように北條家へ嫁入りします。 好きかどうかも分からない中、徐々に周作に惹かれていくすず。 日常生活や苦楽をともに過ごす中で二人の関係が深くなり、本当の家族になっていくプロセスは、恋愛結婚が主流となった現代では想像しづらい展開です。 恋愛観ひとつ取っても、70年前と現代では全く違ってきているのだな、と感じさせられました。 一つの見どころです。 4-7.空襲で利き腕を失ったすずの心の変化 片渕監督の制作インタビューに 「すずさんという人は、小さな子どもの頃から家の仕事とか家事の手伝いとか、妹の面倒までいっぱいしてきて、どこか子どもとしての部分を発揮しきれなかった人なんじゃないか」とあります。 すずは幼少期からずっと、北條家へ嫁入りするまで、一貫して自分自身を抑えて慎ましく生きてきました。 思いを言葉で表現するのが不器用なため上手く自己主張できなかったのでしょう。 満たされない思いや感情は、「絵を描く」ことで上手く昇華され、ある意味「絵」の中に自分の居場所を見出していました。 空襲で利き手を失い、それまで北條家の嫁として家族の世話をする一方だったすずは、一転して世話をされる立場へと変わり、さらに「絵」に自分の感情のはけ口を求めることもできなくなります。 手を失ったことで、すずはようやく声に出して自分の思いを周りに伝え始めます。 逆らったことのなかった夫と口げんかをしたり、小姑の径子に甘えたり。 「絵」を描くための大事な片腕を失うという大きな代償は払いましたが、タイトル通り「この世界の片隅」にしっかりと自分の居場所を作れたのではないでしょうか。 これは、 通過儀礼として新婚初夜に夫婦が交わす、テンプレート的な「まくら言葉」だと解釈するのが自然だと思います。 民俗学で有名なのが 「柿の木問答」というやり取りがあり、九州~東北地方で昭和初期にはこんな初夜のかけあいがあったそうです。 男「あんたとこに柿の木あるの」 女「あります」 男「よく実がなりますか」 女「はい、よくなります」 男「わたしが上がって、ちぎってもよろしいか」 女「はい、どうぞちぎってください」 ちなみに、映画では、 「新(にい)なのを・・・」とすずが答えたら、周作はその傘を使って干し柿を取って二人で食べましたね。 想定と違う微笑ましい展開でしたが、ここでも柿が登場しており、祖母の イトがアドバイスした「傘」のやりとりは、この柿の木問答のバリエーションだとみなして良いと思われます。 5-2.座敷わらしの正体はリンだった そうだ、とは明言はされていないのですが、マンガ原作や映画中のリンとの交流で挿入される思い出の一コマや映画のエンドロール部分で強く示唆されているように、 幼少時、親戚の家に遊びに行き、昼寝をしている時に天井裏から出てきた座敷わらしは、リンだったと思われます。 リンがすずに 「芯ばかり食べていたけど、一度だけ女の子にスイカをもらって食べた」と語ったエピソードからもわかります。 エンドロールでは、少し成長したヨーコがすずから裁縫を教わり、すずと径子に赤い水玉柄のおそろいの服を作っていました。 汚く裸同然の恰好で拾われたヨーコが成長し、モンペや着物ではなく「洋服」をプレゼントする様は、象徴的に戦後の日本の復興と重ね合ってみえました。 また、「ヨーコ」は皆にとって特別な存在です。 子供ができないすずと周作にとっての娘代わりであり、晴美を空襲で失った径子にとっての子供でもあり、さらに、すずにとっては、恵まれない幼少時代を過ごしたであろうリンの生まれ変わり、生き写し的な意味合いもあったと思われます。 家族や故人との大切な繋がりや、戦後の復興への希望を象徴する特別の存在として、マンガ原作にはない後日譚をエンドロールで付加的に描かれていたのは、非常に感慨深いものがありました。 クオリティ高すぎです。 左手で描いたり、タッチをがらっと変えたり、 マンガならではの先鋭的な表現方法を貪欲に追求しつつ、映画よりさらに複雑な伏線を3巻構成できれいに回収する無駄のないストーリーに驚きました。 映画同様、何度でも読み返すたびに発見がある名作です。 6-1.原作では、リンと周作、すずは複雑な三角関係になっている! 映画では省略されましたが、 マンガ原作では、遊郭近くの海軍で働いていた周作が、すずと出会う前に遊郭でリンと出会い、熱を上げていた時期があったことが示唆されています。 遊郭の女に情がうつり、そこから連れ出して妻に迎えるというのは江戸時代からよくあるパターンですが、さすがに家族の反対に遭うわけですね。 周作は、リンを諦める代わりに、幼少時に街で出会った「浦野すず」という女性なら結婚してもいい、と無理気味のリクエストを家族に出します。 これを真に受けた家族が、四方手をつくし、すずを広島で見つけてきてしまい、祝言へと進んだのでした。 結婚後、祝言の仲人をつとめた伯父の小林家の疎開作業中に、すずがそれまで見たこともなかった 「りんどう柄」の茶碗が出てきます。 そこから周作に過去の縁談話を聞いたすずは、その直前にリンが見せてくれた大学ノートの切れ端や「りんどう柄」という共通項、周作とデートした時の周作のセリフ 「過ぎたこと、選ばんかった道、みな覚めて終わった夢と変わりはせんな」から、周作が過去に結婚しようとしていた人物がリンであることを割り出したのでした。 (そういうところは「女の勘」が鋭いすず) 6-2.より多彩な登場人物 映画では、一度きりの出会いとして描かれたリンとの関係ですが、 マンガ原作では、すずが呉の中心街に出るたびに交流する大切な友だちになります。 大空襲後、リンの勤めていた朝日遊郭は空襲でガレキの山になり、「りんどう柄」の茶碗のかけらが落ちていた描写から、リンは結局大空襲がで亡くなってしまったのだと思われます。 また、朝日遊郭でリン不在の時に テルという女性に会いますが、後日リンからテルの使っていた遺品の口紅をもらいます。 映画でも、何度かすずはこの口紅を非常に大切な機会に使っていますね。 (長期で家を離れる周作を、見送る時とか) 7.まとめ 日本人にしか製作できない「戦争もの」ジャンル映画ですが、一般市井の普通の女性の視点から、 「日常生活のかけがえのなさ」という普遍的なテーマを扱い、脚本もアニメ表現にもこだわり抜いて制作された作品です。 本作品は、「本当に作りたい映画を作り、結果を出したい」という片淵監督自身の自己実現の結果でもありました。 ファン、監督、スタッフみんなの想いがこもった、素晴らしい映画です。 かるび 8.映画を楽しむための小説やガイドなど 8-1.マンガ原作「この世界の片隅に」.

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