いつも『ファントム オブ キル』をプレイしていただいてありがとうございます。 プロデューサーの今泉です。 『ファントム オブ キル』の今後の計画を、さらに分かりやすく具体的にお伝えしていくことで、より皆様が安心してゲームをお楽しみいただけるよう「プロデューサーレター」を配信させていただきます。 今月は2020年の開幕ということで恒例の賀正イベントを開催したほか2017年5月以来の『あの花』コラボを復刻しています。 ユニットは賀正バージョンのティファレトに人気投票一位カシウスとゴッドキラーズの新バージョンが登場。 インテグラルキラーズもマサムネにパラシュ、さらにレーヴァテインが実装されました。 またイミテイトキラーズのフライシュッツは槍ユニットになっての登場になりました。 引き続き育成要素の強化はもちろん、ゲーム内のイベントやキャンペーンも盛りだくさんで計画していきますのでご期待ください。 「混沌霊装」は「混沌創造」という新システムで作成できます。 今後もより奥深く、より遊びやすくするためのアップデートを予定しております。 その中でキラーメイルはキル姫のプロトタイプとして生まれた存在で、キル姫、ファンキルの世界を語るうえで重要な位置付けのキャラクターです。 ファンキルの設定をさらに広げて深みを与える存在であり、地上編だけでなく、ロストラグナロク、インテグラルノアにも登場しています。 そこで「よりファンキルの世界をお楽しみいただきたい」という意図で今回のキラーメイル実装になりました。 それでもファンキル=今のキル姫の世界とお考えの方もいると思います。 そこで入手方法については「プロジェクトZERO」の経緯を踏まえながら検討に検討を重ね、専用クエストをクリアしたマスターだけが獲得できる形にしました。 同時にキラーズメモリーも獲得できて、キラーメイルに興味を持っていただいているマスターだけが入手・育成できるような形にしています。 ユニットは地上編のイラスト、海外版の3Dモデル・3Dモーションを使って実装しています。 もう1点、ガチャにキル姫と混在させるのではと心配されているマスターもいらっしゃるようですが、こちらも行いませんのでご安心いただければと思います。 ) 3位: デュリン 4位: ラグナロク・神令・ユグドラシル 5位: リサナウト・針枷・クロノス(クリスマスver. ) 6位: ソロモン・聖鎖・アテナ(ウェディングver. ) 7位: ティルフィング(制服ver. ) 8位: 暁美ほむら(ドレスver. ) 9位: カシウス・獣刻・ウロボロス(人気投票ver. 新コマンドキラーズではフォルカス以外、今回紹介するヒョウハのように完全新規のキャラクターです。 ユニットとしての性能だけでなく、新たなキャラクターたちの個性やストーリーにもご注目ください。 plug・ルシファー、アスカロン・D. plug・レヴィアタンや専用武具の登場、また過去のバレンタインイベントの復刻も行います。 2月8日(土)から2月14日(金)までの期間に、対象のバレンタインバージョンのキル姫のスクリーンショットをホワイトデーにお返ししたい内容と指定のハッシュタグを付けツイートした方に抽選で20名にキル姫のメッセージ付バレンタインカードをプレゼントします。 《対象のバレンタインver. キル姫》 フェイルノート・D. plug・ルシファー、アスカロン・D. plug・レヴィアタン、ヘレナ・D. plug・ロキ、オティヌス・D. plug・オセ、ティルフィング、ペルーン、グラーシーザ、フライシュッツ、アスクレピオス、ムラマサ(学園)、ピサール(学園)、八咫鏡(学園) 詳細は後日公式Twitterにてご案内させていただきます。 plug・ルシファー(バレンタインver. plug・レヴィアタン(バレンタインver. ) アスカロン・D. plug・レヴィアタン(バレンタインver. )は、リリースと同時にクラスチェンジ(Vertex1)を実装予定です。 ご期待ください。 今回のコラボでは「ヴェーダ十戒衆」のツヴァイとズィーヴァにフォーカスしたクエストやイベントを実施いたします。 『誰ガ為のアルケミスト』のストーリーで評判のキャラクターたちなのでぜひ注目してください。 最終回は関西方面で事前募集形式の公開生放送を想定しており、 同時に長岡、奈良のマスターリンクツアーに続く新たなツアーイベントやラジオの公開収録も予定しています。 公開生放送の募集については詳細が決まり次第、公式Twitter等でご案内します。 ぜひご応募ください。 2月3日週、10日週ではゲストとしてティファレト役の「須田裕莉香」さんが出演します。 準レギュラーの鷲見友美ジェナさんとともに2月3日週は『タガタメ』4周年記念としてタガタメトークを2月10日は「節分」をテーマとしたチャレンジを行います。 さらに2月8日と9日には「今、会いに行きます」のロケでDJシゲリンの故郷、山形へ行ってきます。 放送は3月になってしまいますが、こちらもご期待ください。 番組では『ファンキル』『タガタメ』への質問や提案も募集中です。 Twitterで「 今Pラジオ」でツイートいただくか以下応募フォームからご投稿ください。 最新ユニットはもちろん、既存ユニットも含めて対象ユニット全ての強化に繋がることが神器で特に力を入れているポイントです。 そのうえで武具の伝承やキャラ設定、ユニットの性能を鑑みつつ、お客様が一度は試してみたくなるような使用感を目指しております。 例えば「三叉槍・トライデント」の「条件一致で3撃まで耐える効果を付与する」のコマンドスキルや「破壊斧・パラシュ」の「攻撃時に挑発を付与する」付与スキルは新しい試みになっています。 是非一度使っていただけると幸いです! さらにギルド武具の強化にも携わりました。 既存武具の強化は新規武具の実装と同様に大切だと考えており、特にこれまでのお客様の頑張りが活かされる形、新しいお客様が過去の武具も欲しいと感じる形、この2点を意識して実装いたしました。 汎用武具にも関わらず大きなステータス補正と強力なスキルを持っているので武具運用が楽になります。 どのユニットもトレンドを鑑みながら必ずどこかの場面で活躍できるよう考慮しました。 では、基本的に既存ユニットの面影を残しつつ、「別ver. が出ても既存ユニットの完全上位互換とはならない既存ユニットとは別軸の評価がされる要素」と「最新環境に刺さるような性能」を大切にしております。 また、コラボユニットでは、これまでのお客様はもちろん、そのコラボでファンキルを始めてくれたお客様も末永く、そのユニットと共に遊んでいけるような性能になるよう調整をさせていただいております。 これまでスキルの調整指針を勝手ながらお話しさせていただきましたが、リリースに際していただくお客様の声も調整指針のひとつとなります。 今後も貴重な声もいただけると幸いです。 何卒よろしくお願い申し上げます! 8:おわりに 今月もプロデューサーレターを最後までお読みいただいてありがとうございました。 来月には新たなキル姫として新コマンドキラーズが登場します。 ラグナロクを中心にしたコマンドキラーズとは世界線が違う今回のコマンドキラーズたちは、フォルカスを除いてイラストも声優も新しい完全な新キャラです。 インテグラルノア4章から登場してきますのでストーリーにもご注目ください。 さらに来月は新バレンタインイベント&ユニットの実装、4周年を迎えた『タガタメ』とのコラボなど盛りだくさんの内容になりますのでご期待いただけばと思います。 3月にはアニメの新コラボもあり、4月の新しい公式生放送に向けて、鋭意準備中です。 もちろん新しいことだけでなくVer. 0で実装した「退行システム」や「姫統合演出の改修」のように、既存のシステムやUIの見直しも引き続き行いつつ、覚醒ユニットやロストラグナロクユニット、クラスチェンジなどもどんどん実装をしていきます。 3月には新しいツアーイベントも企画中です。 マスターの皆さんとしっかりコミュニケーションをとってファンキルを盛り上げられるよう頑張ります。
次の「負けちゃったにゃ」 「ええ」 「でも帰れるんだにゃ。 子供たちの所へ」 「ええ」 力を使い果たしたシストルムとアイムールは互いに背中合わせになって地面に座って休憩していた。 すでにソロモンの姿はない。 もうだいぶ前に去っていってしまった。 代わりに幼い少女が二人の傍に無言で立っている。 肩口で刈り揃えられた髪。 丸くて大きな瞳。 着ている貫頭衣は裾の方が少し焦げていた。 残り火で焼いてしまったらしい。 マライカだった。 彼女はアイムールへ本日何度目になるかわからない言葉を繰り返す。 シストルムが発射した魔弾がソロモンを仕留めるかに思えた。 「グラウ!?」 ソロモンの前に割り込むように飛び込んだグラウが代わりに全ての魔弾を受けきった。 その背で闇色の小爆発が連続する。 グラウとソロモンは互いに絡み合うようにして地上に落下した。 ソロモンの腕の中でグラウがみるみる縮小していく。 しまいには手で抱え込めるほどのサイズへと変わった。 「活動は停止してるけど……内部機構は壊れてない。 よかった」 所々焦げついているがグラウの生存を確認してソロモンはほっと溜息をつく。 次の瞬間、今にも追撃をかけんとしているアイムールとシストルムをきっと睨みつけた。 その目に浮かぶのは怒り。 「貴方たち……!」 元より魔弾で仕留めきれなかった時点で負けである。 二人がかりとはいえガス欠寸前のアイムールと戦闘要員ではないシストルムでは勝ち目などなかった。 数分で二人は叩きのめされ眼前でランスの切っ先に青白い光が蓄積されていく。 過去最大級の光線で確実に仕留めるつもりだ。 「やめて」 その時、ソロモンの脇を追い抜いて少女がアイムールとシストルムの前に両手を広げて立ち塞がった。 肩口で刈り揃えられた髪。 砂ぼこりで汚れた粗末な貫頭衣。 「貴方、さっきの」 その少女の名はマライカといった。 ソロモンの目が細められ少女を認識した。 しかしランスの照準は一切ずらさない。 どかないようならば少女ごと打ち抜くという意思表示なのかもしれない。 「やめないわ。 私はその人たちが許せないの」 冷たく言い放つ。 口調は静かだが怒りが隠せていなかった。 ソロモンにとってグラウの存在は単なるサポーターではなく大切で特別な意味を持つのだろう。 少女は唇をきっと結んだままその怒りを正面から受け止めて、ただ一言返した。 「仲間なの」 長い沈黙が流れた。 永遠にも感じる時間の中、最初に動いたのはソロモンの方だった。 「そういう言い方はズルいと思うわ」 根負けしたように力なく肩を落とすとグラウを小脇に抱え、くるりと背を向けると地平線の果てへ向けて去っていった。 [newpage] [chapter:エピローグ シストルムの場合] 数日後。 マライカはトレイセーマ擬人区にいた。 今は空き家を借りて一緒に荒野で過ごしてきた仲間たちと暮らしている。 シストルムはいない。 到着と同時にトレイセーマの憲兵たちと合流してどこかへ行ってしまった。 話によると別の任務へ配属されているらしい。 今でも時々、仕事の隙を見て擬人区にも顔を出しに来ていた。 住民たちにお金や物資を届けに来てくれるのだ。 今日は珍しくシストルムが来た日だった。 早朝に到着してからずっとソファでだらりと横になっている。 他の子供たちにつつかれても「にゃー」と唸るだけで我関せずだ。 「寝てばかりだと体が凝るよー」 「ボクは元々こんなキャラにゃー。 戦場だと気を張ってばっかで疲れるにゃー」 「そうだっけ? でもご飯の時くらいソファから降りなよ」 「んにゃ? キミが作ったのこれ?」 「そう。 ここで暮らして初めてわかったんだけど。 あたししか料理できないの」 マライカが食卓へ手際よく料理を並べていく。 パン、乾燥させた果物、魚の香草焼きなどが土の器に盛られている。 そして最後に、いつか見た薄赤色の花の茎の漬物をよそった小鉢が出された。 シストルムの声色に懐かしそうな色を帯びる。 「アイムールは何してるのかにゃあ」 「さあ? まだあそこで何か燃やしてるんじゃない」 「燃やしてるって……」 「あのねシストルム。 まだ持てないのあたし」 「何がにゃ」 「包丁」 席に着いたマライカが唐突に話題を変えた。 ぐーぱーさせた掌を見ながら話す。 「というか刃物なんでも。 持つのはなんとかできるんだけどね。 刺したり切るってなると駄目。 手が震えて気持ち悪くて無理。 ただの料理なのにね」 アイムールを刺した時からマライカは刃物が使えなくなっていた。 刃が肉にめり込む感触があの時のままにぞわり、と蘇って持っていられないのだ。 「傷つけるって難しいね」 「無理に慣れなくていいんだ。 気づいたら使えるくらいでちょうどいいのにゃ」 「そういうものかしら」 他人を傷つける、殺める。 そういったものに嫌悪感が持てるというのはとても尊いことだとシストルムは語る。 この世界ではそんな優しいだけの感性は不要だし無駄だけれど。 「そういう人たちが優しい心のままに生きていくために代わりに戦うのが斬ル姫なのかにゃって」 「本当にそう思ってるの?」 「うーん。 ちょっとくらいにゃ」 「ちょっとかー」 食卓に仲間たちが集まり始めて「いただきます」の声を待たずに誰かが手を出したのをきっかけに騒がしく昼食が始まった。 「あ! 雨!」 誰かが声を上げる。 彼が指をさす方角を全員が向いた。 ここではない遠くの空で雨雲が発生していた。 奇しくもそれはあの荒れ地の方角だった。 なんとなくアイムールのことを考えた。 [newpage] [chapter:エピローグ アイムールの場合] 砂漠。 岩が点々と並ぶばかりで生命の気配はない。 そんな大地をアイムールは黙々と踏みしめていた。 「……低燃費状態で運転中……はぁ、お腹が空きました」 何度目かの言葉を呟く。 常に空腹は感じていたが数日前まではそれ以外にも考えることが幾つもあって少しは忘れられたのだが一人になってしまうとそれしか考えることがない。 「群れるのは好みません。 けれど」 何となく立ち止まった時。 背後に動く物の気配がした。 「にゃあ」 「!?」 よもやシストルムかと音速で振り返る。 しかし背後には誰もいない。 首をぐるりと回して、最後に目線を下へ落とすと足元に一匹の赤猫がいた。 アイムールは(心なしガッカリしたような)無表情で来訪者の名を告げた。 「ヤグルシ、どうしたのですか?」 「わーい、大正解! さすがおねーちゃん!」 赤猫がくるりと宙返りするとそこには赤髪の斬ル姫がいた。 ボンデージを思わせる全体的に際どい衣装。 ロングの赤髪の頂点には鉄の王冠のような髪飾りが付いている。 この斬ル姫がアイムールの妹。 ヤグルシ・[[rb: D. 「久しぶりー! ヤグ会いたかったよー!」 ヤグルシは両手を広げ砲弾のような勢いで抱き着いた。 強烈な衝撃がアイムールの腰に飛来するがアイムールは不動。 慣れているといった風だ。 この姉妹の間では日常茶飯事なのかもしれない。 「どうしてここがわかったのですか?」 「だいたいこの辺にいるってのはわかるからね。 後は普通に痕跡を辿ればわかるよ。 ほら」 ヤグルシが腰に抱き着いたままアイムールの背後を指さす。 振り向くと鉄球が引きずられることでできた跡が道のように刻まれていた。 なるほど。 「では何をしに来たんですか?」 「おねーちゃんを迎えに来たに決まってるじゃーん!」 「は?」 「あのね! おねーちゃんの主人がいたじゃない。 ほらラグナロク王国に近づく者をうんぬんかんぬんみたいな命令をした。 あの領主こないだ死んだんだよー。 戦死だって」 「……ということは」 「命令は破棄! おねーちゃんは自由!」 そうか。 これで任務も終わりか。 結局あの命令の真意はわからなかった。 そもそも知る必要もあまりない。 大方ラグナロク王国に見られたくないモノでもあったのだろう。 秘密の入り口とか。 何かのカギとか。 それは自分が考えても意味のないことだ。 でね! とヤグルシは興奮気味に続けた。 「せっかくだから私と一緒にこれから暮らそうよ! 今皇帝陛下の指示でお城で潜入工作やってるんだけどね。 お城の伯爵さんも面白い人だよー。 大丈夫! 痛い思いなんか少しもしないから」 「…………ふむ」 悪くない。 無所属になったからには次の仕事先を見つけなければならないのも事実だ。 ヤグルシの紹介で皇帝陛下のものになるのもありだと思う。 アイムールは一考して、答えた。 「少し、待っていただいてもよろしいでしょうか?」 ヤグルシは腰にぶら下がった姿勢のまま姉を見上げ不思議そうな顔をする。 「どしたのおねーちゃん? 任務は終わったんだよ」 じっとアイムールの目を覗く。 その何も映っていない瞳から妹なりに何か読み取ったらしくヤグルシの声が真剣味を帯びた。 「何かあったんだね。 話してよ。 バエルの知恵を貸すよ」 [newpage] 時間は数日前にさかのぼる。 シストルムと子供たちとの別れの時。 「じゃあねアイムール。 自分のHPくらい自分で管理するんにゃよ。 次行き倒れても誰も助けてくれにゃいよ」 「善処します」 契約満了。 それなりの満足感がある。 子供たちとも別れの挨拶を一人一人済ませた。 それなりに名残惜しそうな反応をされたのは意外だった。 そうして最後の子供との対話になる。 マライカという少女だった。 腕を組んでツンとした態度でアイムールに向かう少女にまず頭を下げた。 「ごめんなさい」 少女が呆気にとられた顔でこちらを見つめる。 「おそらくあなたの村を焼いたのと、この土地もここまで枯らしたのは共に私です」 「知ってる」 マライカは頷いた。 そんなこと気にもしない風に続けた。 「謝らなくていいわ。 だって覚えてないんでしょ?」 「はい」 「悪いとも思ってないんでしょ?」 「任務の成り行きですから。 悪いことではない、と思います」 悪い事とは思っていないが罪悪感は感じている。 少なくともマライカにはそう見えた。 そうであって欲しかった。 今度はマライカが話す。 「これからは人の気持ちを少し考えて話した方がいいと思うよ。 ほら、気持ちってキャッチボールだからさ。 愛されたら愛し返して、嫌われたら嫌い返して。 そうやってやり取りするもんだと思うの」 「できてませんか?」 「できてないよ。 だから相手の気持ちには向き合ってあげて。 それが敵同士でもさ。 無視されると寂しいから」 例えば、アイムールに初めて会った時のマライカのように。 こちらは過去の因縁を全てぶつけるくらいのつもりなのに相手が自分のことをただの子供としか見てくれていなかった時。 自分の存在や過去を否定されたようで悔しかった。 「だから。 そのことには気を付けてね。 命令だから」 「ご命令ですか」 ふっとアイムールが小さく笑った。 ように見えた。 結局、その場はそれだけでお開きになりアイムールとシストルムたちは互いに別々の方角に向かっていく。 片やトレイセーマへ、片やティルヘルム国境付近へ。 小さくなるアイムールの背にマライカは声を張り上げた。 「言っとくけど私はアンタを許したわけじゃないからね!」 そして泣いた。 どんな意味で泣いたのかは自分にもわからないがこの時、少女の中で一つの決着がついた。 [newpage] [chapter:エピローグ ソロモンの場合] 「自己修復完了。 ソロモンを庇って傷を負ったグラウが回復したので状態を確認していたのだ。 小型サイズになっているグラウの体をくるくると回しながらあちこち覗くソロモン。 「ちゃんと確認したい機能があと200ほどあるけど。 現実的に考えて時間がないわね。 ああでも耐久力の向上だけはやっておくべきだわ! 次にあんなことがあっても問題ないように! よーしグラウ! 今日は君をオーバーホールするわよ! これが私の最適解!」 「拒否します」 ソロモンの手から逃れるようにグラウが飛んだ。 小屋の天井付近を旋回してから梁の部分に着地する。 「それにしても。 なぜあの斬ル姫二人を見逃したのですか」 「そういえばグラウはあの時気絶してたのよね」 あの時、ソロモンは問答無用であの斬ル姫二人を始末するつもりでいた。 だがそれを庇った少女がいて、彼女は斬ル姫たちを『仲間』と称した。 ソロモンは苦笑する。 「なんか毒気を抜かれたのよ。 非論理的だけれど。 まるで私が悪役みたいに見えてきてね」 それに実力差もわきまえずソロモンの前に立ち塞がった少女の瞳が、自分を庇って傷を負った時のグラウの瞳に似ていたのだ。 「この瞳は液晶です。 イミテーションの眼球と似ているはずがありません」 「まさか。 私にはわかるわよ! グラウ、君の目から感情が読み取れるの!」 「ソロモンの目は機械か何かでしたか?」 「今のは冗談よ!」 と他愛もないやり取りをしていると。 グラウが何かを発見した。 「この小屋に接近する反応を確認。 徒歩の速度で向かってきます。 数は斬ル姫が三人。 それにオートアバターが三体」 「あら、索敵能力が上がったんじゃない?」 ソロモンはグラウと共にこっそりと裏口から小屋を出た。 そのまま物陰に隠れながら謎の一団に近づく。 (あれは……カリス?) その一団の一人はソロモンがこの任務に着く前にハルモニアで共に過ごしていた斬ル姫だった。 スキップ気味に進むカリスの隣には彼女のオートアバターであるキプルの姿もある。 他のメンバーは一房だけ紫色が混じる浅葱髪の小柄な斬ル姫にそのオートアバターらしき紫の馬。 その後ろに薄灰色の長い髪をした赤い目の斬ル姫。 見たところ彼女が一番強そうだった。 その手にはドラゴンを小さくしたようなオートアバターが物のように乱雑に握られている。 『あ! ティルヘルムとの国境が見えてきたよ!』 『そういや国境じゃなくてティルヘルムの監視をしてるって言ってたな……ソロモンの他にもハルモニア兵がいるんじゃねえか?』 彼らの目的はどうやら自分らしい。 カリスを脅すか何かして案内に使っているに違いない。 許せない。 ソロモンの胸に義憤の炎が燃える。 『……レヴァ、何か気になんのか?』 『……何でもない。 それより、あの小屋』 『きっとあそこだよ! ソロモン、元気にしてるかなっ?』 とうとう自分の拠点まで辿り着いてしまった。 (行くしかない) ソロモンはランスを構え、ついに彼らに接触する決意を固める。 「君達、その場で止まって」 それが、運命が大きく変わる瞬間だとも知らずに。 [newpage] [chapter:エピローグ 兵器になれない彼女たち] 「いっちばーん!」 「負けました」 とんでもない量の土煙を上げながら砂漠を爆進する二つの影が同時に停止した。 土煙の中から二人の斬ル姫の姿が現れた。 アイムールと妹のヤグルシである。 「久しぶりにやると楽しいね! 追いかけっこ!」 満面の笑みではしゃぐヤグルシと対照的にアイムールは周囲を冷静に観察していた。 砂で隠れてはいるが地肌が黒い岩のような岩盤で覆われている。 地上に露出したマグマが冷えて固まった跡だった。 「私が戦闘を行った爪痕ですね」 ここはトレイセーマ軍が陣を張っていた場所だった。 数日前にアイムールが突撃して壊滅させた。 地形ごと爆破してしまったので当時の面影はない。 あの戦闘がなければシストルムと行動することもなかった。 「おねーちゃんはさ。 ようはいいことがしたいんでしょ?」 思い出を振り返っていたがヤグルシの声で現実に引き戻される。 「いいこと?」 「まあ言い方はなんだっていいや。 自分のせいで不幸になった、本来だったらおねーちゃんの敵にならずにすんだイミテーションたちのために何かしたいんでしょ」 「そうかもしれませんね」 奪うばかりではなく他の事だってできるはず。 とシストルムは言っていた。 自分のせいで飢え、自分によって狩られた多くの村の住民たち。 彼らのために自分にまだできることがあるかもしれない。 「うん! だからここに来たんだよ!」 「……ここで何ができるのですか?」 「おねーちゃんの話だと。 ここは元々荒野のオアシスでトレイセーマ軍が湖の水を補給するために陣を敷いていたんだよね?」 「シストルムはそう言っていました」 「ならやってみる価値はあるね」 頷くとヤグルシは戦斧を担ぎあげた。 「……地形解析完了。 フィールドを掌握。 バエルとの[[rb:D. ヤグルシの瞳の奥で小さな光点がチカチカと瞬いた。 その頬が、望ましい数値を叩き出せた研究者のように喜びで吊り上がる。 ヤグルシの体から闇色のマナが噴き出し、それを衣のように纏う。 「自己強化完了、自陣にフィールドを展開。 さあおねーちゃん! ヤグが導いてあげる!」 そして戦斧を思い切り大地に叩きつけた。 「やっぱり出口が塞がっただけで水脈は生きてた! さあ、おねーちゃん! この土地を全力で焼け野原にしちゃってよ! できるだけ広範囲でね!」 「え? はい。 地上に太陽が顕現したかのような灼熱が一帯を襲った。 さらに火炎が溢れ濁流が如く地面を飲み込んでいく。 それは上空から見ると花が咲く様を思わせた。 アイムールを中心に炎で形作られた鮮やかな花弁が広がっていく。 火災旋風を伴いながら空間そのものに拡散していく熱量は水源から噴き上がる大量の水分を水蒸気爆発と共に蒸発させていく。 さらに地面が溶けるほどの暑熱はアイムールを中心とした低気圧を、強烈な上昇気流を発生させ全てのものを空へ舞い上げた。 「うん。 そろそろ全部飛んだかなー。 もういいよーやめて」 「わかりました」 ブツン、とスイッチを切るようにアイムールは熱の放出を止める。 しかし空は上昇気流と舞い上げた砂や灰で暗い雲ができていた。 「あの、これで何ができるのですか?」 「まあ見てて」 すっ、と暗い空へ手をかざすヤグルシ。 その手にポツリと水の雫が落ちた。 雫はさらに勢いを増していく。 見ると雲はアイムールが炎を広げた範囲以上に広がっているようでこの土地一帯に達しているかに見えた。 「……雨?」 「そう。 言葉にするなら人工降雨とかになるのかなー」 ヤグルシが解説する。 広範囲の地面と空気が強く熱せられると上昇気流が発生し、空へ巻き上げられた水分は砂や粉塵と凝結しあい雲ができる。 そこに大量の水分が含まれていれば雨となって地上に落ちてくることもあるだろう。 「地下水源の水をチマチマ汲んで撒くのも涙ぐましくて素敵だけど。 雨にして一気に降らした方が手っ取り早いし効率的だよね」 ヤグルシが地下水脈を刺激し地上に噴出させる。 そこへアイムールが空気と大地を加熱して人工的に雲を作った。 その中に一気に蒸発したオアシスの水分が溶け込んで雨が降ったのだ。 「うふふ。 これがバエルの力。 知恵の領域」 ヤグルシが得意げに笑う。 「これを定期的にやれば、きっとここにも緑が戻ってくるよ」 「そう、ですか」 モートはウガリット神話においてバアルの存在なしに語れない存在だ。 彼らは常に戦いを続けており、豊穣神であるバアルがモートに敗れると自然世界からは一切の恵みが消え去り、逆にバアルがモートに勝利すると地上には雨が降り作物は実り豊穣が約束されるという。 またどちらが死んでも必ず生き返り戦いは続く。 その戦いは雨季と乾季を象徴しているともいわれている。 「ヤグルシ」 「なあに?」 アイムールのキラーズの持ち主はバアル。 ・[[rb:D. 命を奪う冥界の力。 命を与え育む豊穣の力。 どちらの力も持ち合わせ、きっと力の使いようでどちらにでもなれるのだろう。 「私はもうしばらくここにいることにします」 「いいよ。 おねーちゃんが望むなら。 ヤグは本国でいつまでも待ってるからさ。 気が済んだら帰ってきてね」 「感謝します」 アイムールは濡れた大地に腰を下ろした。 湿った砂に体が沈む。 「そういえば……お腹が空きました」 食べられるという赤い花のことを思い出しながら。 雨音に耳を傾けて。 そっと瞼を閉じた。 『END』 [newpage] あとがき ・完結しました。 反省もそれなりにありますが多少は達成感もあります。 科学的な話をされると突っ込みどころが果てしなくあるのでマナのなんかすごいパワーでどうにかしたんだと思って許してくれませんかね。 題名がちゃんと機能しているかは読者様の感性にゆだねるところではありますが一応、今回登場したキル姫たちはシストルムを除いて戦闘マシーンじみたメンバーを選んだつもりです。 そんな彼女たちのそれだけじゃない一面も書けてたらいいなーと思います。 ソロモンとかあんなに感情豊かだからね。 しかし当初はちょい登場くらいの予定だったヤグがこんなに活躍するとは思わなかったなあ。
次のキル姫84キャラが水着ユニットとして登場し、海上編だけのオリジナルストーリーが展開します。 妹のヤグルシ型のキーホルダーを渡されたが、なくさないよう、家で大切に保管している。 布面積が少なめの黒ビキニにシースルーのドレスを着用している。 乗っているスワン型の巨大フロートを膨らますのはマスターの仕事。 手に持っている狼型のぬいぐるみがお気に入りで、海に入る時以外は常に持ち歩いている。 以前、黒の水着を着ていた時に周りから挑発的すぎると言われたので、反対イメージの白をチョイス。 しかし、肝心なのは布面積だと気づいていない。 彼女は、走行の妨げにならない形のサンダルや迷彩柄のビキニ、水鉄砲など、いつでも戦闘態勢が取れるようなコーデをしている。 そんなシャルウルは、黒地でやや透けているホルターネックのハイレグ型の水着を着用。 かなりセクシーなので、マスターが目を合わせてくれないとか。 パーカーについているビニール性の角で、隙きあらば他のキル姫をツンツンしている。 水着という大胆な格好ながらも、しとやかさが感じられる淑女を志す、彼女らしいコーディネート。 彼女の水着は、妹のケラウノスとおそろいのプリントビキニ。 髪飾りなどは、妹と交換したアクセサリーで整えた。 豪快な性格の女の子なので、あの水着は本物の葉っぱではないかと周りに噂されている。 アマゾネスチックな大胆さを出しつつも紫色の半透明パレオで、普段の彼女らしい慎ましさも感じさせるコーデ。 姉と同じ柄の水着を着用し、少しでも姉に近づきたい、新たな自分を開拓したい、と強く思っており、いつもより少し大胆な形の水着をあえてチョイスした。 大きな鳥のハネを髪飾りとして用い、ヒョウ柄の水着を着用している。 水着に関して「生皮じゃないから血の匂いがしなくて残念」と発言し、空気を凍らせた。 そんなレーヴァテインは、水色のビキニに淡い白色のレースを着用。 頭の花冠はお手製らしく、めんどくさがり屋のレーヴァテインにしては珍しいと驚かれている。 彼女は、水色のビキニを着用し、大きな麦わら帽子を被っている。 この水着は一緒に買いに行ったマスターが気に入ったものを選んだとのこと。 キル姫の水着姿を眺めて、涼しんでいただけましたでしょうか? まだ見たりない! という方は、やの水着イラストもぜひご覧ください。 海上編の魅力をチェック! 水着の美少女と恋愛も楽しめる『海上編』の魅力を、声優の優木かなさんと電撃のみょんが動画で紹介していますのでぜひご覧ください。
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