【第五人格】調香師の性能紹介！衣装やおすすめ内在人格【IdentityV】
今日もまた、命を削るゲームが始まる。 荘園に来てからもう幾度目の朝か、もはや数えるのも億劫になっていた。 けれども、この単調な仮面をした悪趣味なゲームもルーティンにはならない。 組むサバイバーでゲームの難易度は数段違ってくるし、ハンターが誰かによってもそれは同様だ。 しかし、そんなことは数回ゲームを繰り返せば、すぐ分かること。 「…ん…っ…エミリー…もう起きたの？」 今朝は同衾者がいた。 名実を併せ持つ調香師であるウィラ・ナイエルだった。 「ええ。 目が覚めてしまって」 ベッドから抜け出して、軽く体が冷えるほどには経っていた。 特に見てもいない窓の外に体を向けたまま、視線だけをウィラに移す。 ウィラと一緒の時に限らず、私は基本的に起床が早かった。 勤務医の時も、自院を開いてからも、入院患者の診察とお世話をするには、どうしても身につけなければならない習慣だった。 その名残は今も抜けることはない。 これからもそうだろう。 「…じゃあ、私も起きるわ」 むくり、と薄い毛布が盛り上がる。 が、ウィラ自身は起き上がれないようだった。 「あれ、おかしいわね。 待って、今…」 腰に力を入れているのだろう、少しだけ彼女の声が大きくなった。 「無理しないで、寝ていなさい」 「でも…その、何だか悔しいわ」 「こうなることを承知の上で、日付が変わっても私を要求したのは、あなたよ？」 プライドが高めの彼女は、ストレートにねだってはくれなくて。 代わりに私の両肩を掴んで、上目遣いでずっと見つめてきたのを思い出す。 今の私は、普段他のサバイバーの皆には見せない医師ではない顔。 この表情はきっとどこまでも意地悪で、歪んだ笑みだろう。 これは私を慕ってくれるエマにだって見せない、ウィラにだけに見せるものだ。 存外悪くない。 聖職者の如く扱われているレッテルが剥がれるのは、たまになら気分が良い。 「そっ、それは…そうだけど………い…もの」 毛布を完全に頭から被りながら話すから、くぐもって聞こえない。 「聞こえないわ。 もう一度教えてくれないかしら？」 私は窓から離れ、ウィラが潜っているベッドに歩みを進めた。 毛布にくるまれた体に、ふわりと軽く手を置いてから、さする。 まるで、具合の悪い子をあやす様な手つきで、昨夜のウィラの乱れた姿を思い出しながら。 「エミリー、あなた上手い…んだもの」 至近距離になったおかげで、彼女の羞恥が混ざった可愛い声が聞こえた。 「光栄ね。 一応手加減はしたのよ？まともに話せる程度には」 言葉の内容の割には自分でも思いがけない優しい声が出た。 「それは嬉しいわね…このうえ言葉まで話せなかったら嫌味すら言えないもの」 拗ねた声色で皮肉たっぷりに返すウィラ。 「嫌だったかしら？」 「…それは……」 「どうなのかしら？『次』のこともあるし、素直に答えて欲しいの。 いけないところは直すから」 彼女とは幾度か夜を共にしている。 始めのきっかけは何だったろう、よく憶えていない。 「嫌じゃ、ないわよ。 …普段のあなたより、その…情熱的で」 「ふふっ、私も人並みに欲くらいあるわよ。 それにあなたはとても蠱惑的だから」 「それはあなたのことでしょ、エミリー」 「あら、どうして？」 「エマはあなたを天使だと思っているし、マーサもヘレナもマルガレータもあなたを慕っているわ。 …そしてフィオナなんてあなたとタッグを組んだら安心感半端ないって言ってたし、あとトレーシーとパトそして…」 「ちょっと待って。 全員言うつもりなの？」 「いけなかった？」 「いいえ、そういう訳ではないけど。 でもね、ウィラ…それって蠱惑とは言わないわよ。 私には過ぎた言葉だけど、皆が私を信頼してくれるだけよ」 「…エミリー、あなたって天然だったの？」 毛布で遮られていても、彼女の溜息が微かに聞こえてきた。 「……え？」 「本当、私があなたを先に頂けてよかったわ」 「先にって…これから他の人に入れ込む予定なんてないわ。 あなただけで精一杯だもの」 「どうかしら…？」 「意地悪ね、ウィラ」 お願い、そろそろ毛布から出て来て。 あなたの顔を見せて。 ウィラの顔に掛かっている毛布越しにキスを降らせる。 早く、と催促するように。 しつこくそれを繰り返し続けると、観念した彼女は毛布から顔を出す。 すかさず、私は自身の唇を彼女の口元に持っていく。 必然的に、私がウィラを押し倒す形。 「…っ、ん…ぅ…」 キスは想定外だったのか、ウィラは驚いた顔で私を見た。 でも、それは一瞬で変化する。 すぐに頬が紅潮し、熱に浮かされたような表情になる。 「どうかしら？」 少し強引に唇を奪って愉しんだ後、ウィラがさきほど言った言葉をそのまま返す。 あなたのことで、こんなにも余裕がなくなるのよ。 他の人のことなんて考えられないくらいに。 「……てよ」 消え入るような声だけど、その意味は察しがついた。 「なぁに？」 でも、敢えて分からないふりをする。 だって、あなたからの言葉が欲しいから。 「して、エミリー」 彼女らしく無骨に、でもはっきりと形にする誘い文句。 「今日は…足腰が立たないままになるわよ？」 この忠告は意味がないだろうと分かっていても。 これは申し訳程度の礼儀。 「いいわ。 どうせ二人とも今日はゲームはないんだから」 だからこその、昨夜。 そして今。 「…愛しい、ウィラ。 覚悟してね」 彼女の耳元で囁くように告げた。 私は扇情的な色香に誘われ、再びベッドに沈む。 私は、あなたの毒を愛してる。 あなたは、私の毒を愛してくれている。 私は誇りを持っている医療、あなたは天才的な香水の調合。 それを狡猾に使い…どんな事情であれ、人を殺めた。 才能を冒涜した成れの果て。 煉獄に彷徨う者、それが私達。 毒には毒がお似合いなのだと、私の奥底の何かが蠢き、嗤った。
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