やっぱり 僕 は 王道 を 征 く。 やっぱり僕は、王道を征く

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やっぱり 僕 は 王道 を 征 く

はい、みなさまこんにちは。 実渕玲央です。 現在洛山高校3年、バスケ部所属。 ポジションはSGをやっています。 今日は誠凛さんとの練習試合のためレギュラー一同、東京に来ております。 そして現在私たちがいるここは、誠凛高校さんの体育館。 うちほど設備は整っていないみたいだけど、新設校だけあってやっぱり綺麗だわ。 手入れも掃除も行き届いているし、大切に使っているのがよく分かるし。 校舎が綺麗っていうだけでも学校に来るのが楽しくなるわよね。 そうそう、学校と言えば・・・ 「レオ姉・・・どーすんのあれ」 あ、隣りからチームメイトの葉山小太郎が私の腰を肘で突いて来たわ。 ちょ、私今忙しいの。 しかも腰なんて止めてちょうだい。 くすぐったいじゃないの。 パシッ、と小太郎の肘を叩き落として、私は仕方なくナナメ45度に視線を向けた。 ・・・今まではなんとか逸らしていたんだけど、やっぱり無視し続けるのは厳しいわよね。 そして私の目に映ったのは、 「こんなに近くに・・・まさかテツヤの学校にいたなんて」 「あ、あああああの・・・」 「君の名前は降旗さんだよね。 ・・・下の名前で呼んでもいいかな?」 「はい、え?いやいやいや・・・」 完全に捕食者のオーラを発する我らがキャプテン、赤司征十郎と携帯のバイブみたいにブルブルと震える誠凛のマネージャーさんの姿。 まわりが唖然としている中、どうしてこうなっちゃったのかしら、と心に疑問を浮かべつつ、私は思い返すように目を閉じた。 昨年のWCで私たち洛山高校は誠凛高校に負けた。 決して相手を侮っていたわけでも、帝王だからと奢っていたわけでもないわ。 努力が足りなかったわけでもない。 でも結果として私たちは負けてしまった。 全力で激しくぶつかりあった末の勝敗。 最初こそ悔しくて悲しい思いでいっぱいだったものの、私たちは次のIHのリベンジに燃えたのよ。 本当にあれは良い試合だったと称賛できる出来だったと思うわ。 ・・・でも征ちゃんはそうは思わなかったみたい。 彼は一年生ながらも私たちのキャプテンとして部を引っ張ってくれたわ。 その分、誰よりも責任感が強すぎたみたい。 ・・・試合終了後、ふらりとどこかへ消えてしまったの。 私たちは焦ったわ。 まさかあの存在感バリバリの征ちゃんが誰にも見つかることなく消えてしまうなんて。 誠凛の黒子君なみにびっくりよ。 慌てて探しに行こうとしたんだけど、監督に「しばらくそっとしておいてやりなさい。 一人で考える時間も必要だ」と言われ、私たちは征ちゃんの帰りをじっと待つことにしたの。 帰ってきたら征ちゃんの髪をぐしゃぐしゃに掻きまわして、みんなに心配をかけたことを謝らせるつもりだったわ。 どんな表情をしていてもどんな態度をしていても私たちは征ちゃんを受け止める、とそう決めたの。 でも、 「せ、聖女に会った・・・」 征ちゃんが帰ってきて最初に放った言葉に、私たちは戦慄した。 泣きはらした目で彼は突如そんなことを言ったのよ? 征ちゃんが壊れた、と本気で思ったわ。 震える手で病院の予約を取ろうとして、征ちゃんに止められたの。 「僕は正常だ」って。 いやいやいや、あなたそういう事言うキャラじゃないでしょう。 ほら他のみんなだって混乱してるわよ。 小太郎なんて目を見開いたまま瞬きもしないし、永吉だって口をぽかんと開けっ放しよ。 あ、それはいつもの事か。 そこで私ははっとしたの。 そして思ったの。 もしかしてこれは征ちゃんの渾身のボケなのかもしれない、って。 少しでも場を明るくするために頑張ってくれたのかもしれない、って。 冗談を言うのが苦手なくせに、なんて健気な私たちのキャプテン。 私は込み上げてくる涙を飲み込んだわ。 ごっくんって。 でも・・・「ふふ。 なんだ、冗談だったの?」と笑顔で聞いたら「違う、本気だ。 僕は聖女に会ったんだ」って返されちゃった。 あああああ。 この時の心境をなんて語ったらいいのかしら。 少なくともその時の私たちは正常な思考回路じゃなかったと思うわ。 そうしてなんとか落ち着いた後、征ちゃんからお話を聞いたの。 彼女の名前が分からないから、とりあえず呼称だって。 よかった。 幻覚とかじゃなくて。 心底安心したわ。 征ちゃんの沽券にかかわるからどういう状態だったのかは省くけど、なんでもその子は柔らかいタオルでわざわざ征ちゃんの汗を拭いてくれて、その上お茶までくれたとか。 その時の彼女は慈愛と優しさにあふれていて、まるで聖女のようだったって。 話を聞いて私は納得したわ。 「まぁ!!征ちゃん、その子に恋しちゃったのね?」 きょとんとする征ちゃんの顔は可愛かった。 「・・・恋?これが・・・恋?」って頬をみるみるうちに赤く染めて。 可愛いったらないわ。 本当なら「決勝戦終了後に何やってんだ、ゴラァ」ってなるかもしれないけど、私はそんなこと言わないわよ?言わせないわよ? だってこの子にようやく春が来たと思ったら嬉しくて嬉しくてまるで母親みたいな心境になって、もう母乳が出「出ねぇだろ」・・・人のモノローグを勝手に覗いて突っ込んでんじゃないわよ、永吉。 え?「声に出してた」ですって? あらやだ、私ったら。 ま、兎にも角にも私(たち)は征ちゃんの恋路を応援することに決めたってわけ。 捻りが無いとか言っちゃ駄目よ。 重要なのは中身よ、中身。 部員一同大切なキャプテンの為、頑張るわ。 でもその聖女ちゃん探しは難航したの。 どうやら征ちゃんはその子のお顔がよく分からないんですって。 一応手がかりになるのは、征ちゃんが掴んだ「茶髪で黒い制服。 身長160㎝くらい。 前回のIH出場校のマネージャー」という情報ね。 それだけ分かれば十分よね。 私は気楽に考えたわ。 ・・・でも結局見つからなかったの。 調べてみるとこの特徴に当たる子が1人いたけど、その子はWCの決勝戦をそもそも見に行ってないんですって。 どういう事かしら・・・。 こうして征ちゃんの想い人探しは足踏みしちゃったってわけ。 だがしかし!!今日事態は大きく動いたわ。 誠凛さんとの練習試合の、この場で。 なんと征ちゃんの聖女ちゃんは誠凛高校のマネージャーさんだったという事が発覚したの。 茶色の髪、身長160㎝くらい、前回のIH出場校。 確かに特徴に当てはまる。 誠凛は黒い制服ではないみたいなんだけど、その当時彼女は黒い大き目のカーディガンを着用していたみたい。 WCは12月ですものね。 会場は寒かったものね。 むしろコートを着ていなくてよかった、と思うべきよね。 でも灯台下暗しとはこの事よね。 で、私にはよく分からないんだけど、どうやら征ちゃんは働く彼女を見て何かを感じ取ったみたい。 そしてつい先ほど征ちゃんは彼女にそれとなく確認を取ったの。 そうしたら想い人発見、発覚したってわけ。 もうびっくりよ。 征ちゃんったら、 「『奥ゆかしくて気遣いができて、優しさがあふれ出る女性』!!見つけた!!」 って、彼女を捕まえて彼女の目の前で言ったのよ。 そんなストレートに褒めちゃって、もう、聞いているこっちが恥ずかしくなっちゃう。 「ふぅ・・・」 短いながらも長い回想だったわ。 私は心を落ち着かせるため、小さく息を吐いた。 そうして目を開けた。 やっぱり状況は1ミリも変わっていない。 誠凛の皆さんはドン引きしてらっしゃるし、征ちゃんは聖女ちゃん(・・・降旗さんだったかしら?)の腕を掴み、 「なんてことだ!僕としたことがこんな近くにいて気づかなかったなんて。 くっ、君も意地が悪い。 僕が君を探していることをテツヤから聞いて知っていたんだろう?なら申告してくれても良かったんじゃないか?」 って叫んでるわ。 あら、聖女ちゃんは目を潤ませてぶんぶんと顔を横に振っているわね。 「違う」という意味なのかしら。 いえ、あれはきっと征ちゃんに脅えているだけね。 こちらに背を向けているから表情は分からないけど、きっと征ちゃんは怖い顔しているんでしょうね。 うちのキャプテン、マジ絶好調。 「レオ姉・・・どうする?あの聖女ちゃん今にも泣きそうだけど、赤司を止めた方がいいかな」 「どうするって言われてもね・・・私、回想だけで疲れちゃったわ」 「?」 さて・・・この状態をどうすればいいのかしら。 [newpage] 降旗光樹は固まっていた。 というより、身動きが取れなかった。 現在自分の二の腕は、とある男の力強い手により拘束されているからだ。 これは逃げられない。 つい先ほど赤司に突然話しかけられ、ほんの一言二言言葉を交わして、なぜか今この状況。 「あ、あの・・・赤司君?」 緩く腕を振ってみたら、その分赤司の拘束が強まった。 痛くはないものの、肉に食い込む指の感触は恥ずかしくて仕方ない。 決して細いとは言い難い自分の二の腕。 半袖の為、赤司の手のひらの体温がダイレクトに伝わってくるから困る。 肌に直に触れられているという事実は、否応なしに光樹の頬に朱を走らせた。 「赤司君、や、そこ掴まないで・・・」 「・・・まさか、こんな近くにいたなんて」 光樹の言葉は見事にスルーされた。 赤と琥珀の鋭い眼力がこちらを向き、目を逸らすことなくじっと見つめてくる。 視線を逸らしたいのにそれができない。 逸らしたら最後、喰われてしまいそうだ。 比喩ではなく、本当に。 まるで蛇に睨まれたカエルの様だ、と光樹は思った。 今、赤司に確認されたのは「WC決勝戦後に、僕にタオルとお茶をくれたのはもしかして君か?」という事だ。 そして「あ、うん」と光樹は肯定した。 事実なので肯定するしかあるまい。 ただそれだけなのに、どうしてこんな展開になっているのだろうか。 「ご、ごめんなさい。 もしかして余計なお世話だった・・・?」 「・・・え?」 光樹が恐る恐る謝罪の言葉を発すると、赤司の目が丸くなった。 プライドの高そうな赤司の事だ。 意図せずともまるで慰めるような形になってしまったことが、彼の中で波紋を作ったのかもしれない。 (とっさにやっちゃったことだし、赤司君はその時の事を怒っているのかも・・・) そう考えると、光樹の額からは知らず知らずのうちに汗が吹き出し、足が震えた。 わずかに視界も歪んでくる。 ビクビクとしている光樹を見て何かを思ったのだろう、腕を掴んでいる赤司がゆっくりと口を開いた。 「降旗さん」 「は、はい」 「余計なお世話なんてとんでもない。 僕はあの時の君の心遣いがとても嬉しくてね、ずっとお礼を言いたくて君を探していたんだ」 「!?」 「降旗さん、WCではタオルとお茶をありがとう。 君のおかげで涙も止まった」 「あ、いえ。 どういたしまして・・・?」 光樹がこくりと頷くと、先ほどまで鋭かった赤司の双眸が優しげに細められる。 そして赤司の手の力が緩められ、その手はそっと外された。 (なんだよかった・・・思い過ごしだったみたい) 光樹はほっと安堵した。 赤司は別にあの時の事を怒っていたわけではない。 ただ、お礼を言いたかっただけなのだ。 そう思ったら一気に力が抜けた。 その際、足が少しふらつき、「危ない」と赤司に肩を支えられる。 「ご、ごめん。 ありがとう」 「いや・・・大丈夫か?」 「うん」 赤司に支えてもらいながら光樹は「あれ?そういえば」とぽつりと思う。 そういえば以前、黒子は言っていなかっただろうか。 『どうやら赤司君、WCでとある女性に一目惚れをしたそうで』 『WC決勝戦終了後にタオルとお茶を貰ったとか。 今お礼も兼ねてその女性を探すのに躍起になっているみたいです』 『身長が160㎝くらいで茶色の髪の子、らしいです。 黒い制服を着ていたらしいんですが』 『彼、初恋みたいなんで』 そうは言ってはいなかったか。 あの赤司が恋をしてしかもそれが初恋だと聞き、応援したい気持ちになったのを光樹は覚えている。 その彼女は黒い制服を着ていたと聞いたから、光樹の中で自然と自分は除外されていたのだ。 だが、今赤司は言った。 光樹の事を探していたと。 (ちょっと待って。 それだと必然的に赤司君の想い人は・・・) 「降旗さん」 「!!はい!?」 ぐるぐると思考を回していたら、いつの間にか赤司との距離が随分と近しいものになっていた。 「この後時間はあるかな?もしよければ食事でも一緒にどうだろう?もちろん僕が奢るよ」 「いや、えっと、そういう訳には・・・」 肩を支えてくれていたはずの手は、気づけば再び光樹の二の腕に触れていた。 しかも先ほどとは違い、今度は両手で両の二の腕を掴んでいる。 なんだろう、彼はソコが気に入ったのだろうか。 光樹が困惑しつつも視線を上げると、目が合った赤司がニコリと笑う。 「そうだ。 食事はお茶をくれたお礼、という事でどうかな?」 「そ、そんな、悪いよ。 だってあのお茶はたった150円だし」 「お礼に金額は関係ないよ。 僕は感謝の気持ちを現したいだけなんだから」 「でも・・・」 「そうそう、借りていたタオルも返さないとね。 今持っていないから、後日にでもゆっくり。 できれば今度二人きりで会えないかな?」 有無を言わせないような、強い感じがするのは思い違いだろうか。 それに威圧感を感じるのは自分がビビりな所為だろうか。 怖いにも拘わらずどうしてだか頬に熱がたまり、クラクラするのは気のせいだろうか。 「僕はもっと降旗さんのことが知りたいんだ」 そう言って赤司の目が細められる。 光樹は状況を整理できないまま、身体を反転させられる。 その拍子に固いものに鼻をぶつけた。 頭上から「お、おい、大丈夫か」という声が聞こえる。 火神だ。 どうやら自分は火神の胸に突っ込んでしまったらしい。 となると、自分を赤司から引き離したのは・・・。 光樹が後ろを振り向けば案の定、水色の影がいて、彼は赤司に食って掛かっていた。 「赤司君、何やってるんですか、君は。 こんな公衆の面前でうちのマネージャーを辱めないで下さい」 「?辱めてなんかいないだろう」 「何言ってんですか、そんな性的な眼でフリハタさんを見といて」 「性的・・・?」 「自覚ないんですか?うちのマネージャーは純真なんですよ。 その上、恋人でもない女の子の柔肌を揉むなんて駄目です。 セクハラです」 「おい、テツヤ。 少し言いすぎじゃないか?誰がいつセクハラをしたって?」 赤司VS黒子の構図が出来上がろうとしていたまさにその時、 「そーよ、聞き捨てならないわ!!」 そう口を挟む者がいた。 赤司の背後を見れば、力拳を作っている実渕がいた。 その隣には葉山と根武谷がいる。 「征ちゃんはねー、聖女ちゃんの事が本当に好きなのよ。 聖女ちゃんの保護者の方々、この恋路を邪魔しないでちょうだい。 いえ、しないで下さい」 「せ、聖女ちゃん?」 「初恋なんだよー、勘弁してやって。 だから聖女ちゃんをしばらくうちに貸して。 あとでちゃんと返すから。 ね、頼む」 「は?・・・は?」 「牛丼屋行く時間も削られてんだ。 ということで、聖女よこせ。 心配すんな、赤司が責任もって大事にすっから」 「・・・」 どうやら彼らは赤司をフォローしようとしているらしい。 むしろ彼らが保護者だ。 だが誠凛には彼らの真剣さは伝わってくるものの、その内実は理解不能だった。 (((((聖女ってなんだ))))) 必死な様子の洛山メンバーを見ながら、そう誠凛メンバーは内心首を傾げたのだった。

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#2 よくある赤降の出会い ~王道展開~ その後

やっぱり 僕 は 王道 を 征 く

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#2 よくある赤降の出会い ~王道展開~ その後

やっぱり 僕 は 王道 を 征 く

きききーっ がっしゃん! 激しい衝撃に閉じた目を、なんとか開く。 目にしているものを、脳が受け入れるのに・・・約10秒。 それは、頭脳明晰・冷静沈着を称えられてきた彼女にとって、人生初の経験だった。 咄嗟に身体が動かない、なんてことも。 今、彼女の目の前では、一台の自動車が、ゆっくりと、ゆっくりと・・・山道からすべり落ちていくところだった。 薄闇の中で点滅するハザードランプが残像を残して視界から消えて、ようやく認識が現状に追いつく。 (・・・事故?) 「せ・・・せいか、さま。 お怪我は」 「それより、相手を確認して!」 するどい声で指示を出すのは、まだ若い女性・・・赤司征華。 その命令しなれた口調に運転手もはっと冷静さを取り戻した。 慌ててシートベルトを外した運転手に続いて、征華自身も暗い山道に降り立った。 彼女の自動車は頑丈さが売りのドイツ製で、バンパーが少し凹んでいるだけだ。 突き破られたガードレールから下を覗くと、断崖絶壁と言うほどではないが、それなりの急斜面を滑落したグレーのファミリーカーは、10mほど下で大木に衝突していた。 おそらく何かのトラブルで道端に止まっていた自動車を、追突して山道から押し出してしまったのだ。 「あの、警察に連絡を?」 「そうね、それと救急車・・・、ちょっと待って!」 視力に優れた征華の目には、ひしゃげた後部座席のドアをこじ開けて這い出てくる、人の姿が見えた。 幼い子供を抱えた女性のようだ。 とにかく安否確認の声を掛けようと身を乗り出したところで、征華はふと異変に気付いた。 (なに、この感じ・・・匂い?) 擦れたタイヤの焦げ臭さ。 潰された植物の青臭さ。 衝撃に舞い上がった土の埃臭さ。 それに加えて、現状にまったくそぐわない、甘い香りがする。 「征華さま!?」 「そこで待っていなさい」 スーツ姿なのも躊躇せず、征華は斜面を滑り降りた。 数分で大破したファミリーカーのところまで下ると、女性が征華に気がついたのか、倒れたまま、うつろな目を向けてきた。 「た・・・すけ、て。 この子を」 「・・・」 女性が抱えていた幼児を押し出す。 うっすらと目をあけてはいるが、ショックで泣くこともできないようだ。 目立った外傷は無いが、頭を打っているかもしれない。 「・・・ま、ま?」 かろうじて吐き出した息に言葉を乗せると、途端に強くなる甘い香り。 「こうき・・・こうき、を」 「大丈夫よ。 この子は私が助けてあげる」 征華は母親らしき女性から幼児を受け取ると、そのまま斜面を登り始めた。 女性は骨折しているらしく、そのまま動かない。 これだけの事故だ、おそらく内臓にもダメージを負っているのだろう。 ちらりと運転席に目をやると、男性がハンドルにだらりと俯せていた。 「征華様っ、手を」 「いいから、この子を先に引き上げて」 長く赤司家に仕えている運転手は、自分で何かを判断して動くタイプの人間ではない。 征華に命じられたまま、どこにも連絡せず、山道に立っていた。 かろうじて伸ばされた手に幼児の襟首を掴ませると、征華は自身の身体を道路に引き上げた。 スーツもパンプスも泥まみれだが、そんなことを気にしている場合ではない。 「あの、この子は、もしや」 「ええ、どうやら、事故のショックで覚醒したようね」 もう初老とはいえ、運転手も斑類だ。 相手も幼すぎて甘さは少ないが、それでも中間種に『先祖返り』のフェロモンはきついだろう。 (しかも、人魚だなんて!) 征華は、受け取った幼児を愛おしそうに抱きしめた。 これは、自分に、自分の大切な一人息子に与えられたギフトだ。 誰にも奪われてなるものか。 「いいこと?この事は他言無用よ。 もちろん、父にも夫にも」 「は、はい」 「では行き先を変更して。 双峰町に私の持ち家があったわね。 あそこが近いわ。 別荘ヘはその後で」 「はい。 承知いたしました」 腕の中の幼児は、自分を抱くのが見慣れない相手だと分かるのか、『まま、まま』と母親を呼びながら身じろぐ。 運転手がフェロモンに中ることも考えて、征華は人魚の力で、幼児の魂元を凍結した。 びくん、と身体を硬直させて、幼児の抵抗が止むのと同時に、甘い匂いも薄くなる。 (さあ、考えるのよ。 この僥倖から、さらなる結果を得るために、今どう動くべきか) 征華は事故現場を振り返ることもなく自動車に乗り込むと、すぐに運転手に車を出発させた。 1週間後。 連休を別荘地で過ごそうとした家族連れが、途中の山道でガードレールが破損し、自動車が転落しているのを発見し、警察に連絡した。 ナンバープレートから死亡していた男女の身元はすぐに判明したが、共に居たはずの3歳の子どもの行方は、とうとう分からずじまいだった。 [newpage] 赤司征華は、かの赤司グループ(旧赤司財閥)の総裁のひとり娘である。 父の部下で遠縁にあたる男を婿に取り、息子が生まれたのが3年前。 まだ年若いがカリスマ性に富み、やがて父の後継者となると目されている女傑・・・というのが、多くの日本人に知られているプロフィールだ。 そして、彼女のもうひとつの、斑類としての顔。 彼女は日本でもあと数家しか残っていない、人魚の血筋を守る家に生まれた、マッコウクジラであった。 斑類の中でも希少価値が高く、もはや絶滅の恐れもある『人魚』。 人魚の家系とされる赤司家でも、人魚はせいぜい1代か2代にひとりくらいしか生まれなくなっている。 征華の祖母もカマイルカの魂元を持つ人魚だった。 番う相手は少しでも人魚の血を引く従兄弟たちだ。 それでも人魚の魂元を持つ子は産まれず、蛇の目重種の息子が赤司を継いだ。 それが征華の父であったから、征華が人魚、しかもクジラの魂を持って生まれたことは、一族にとって悲願成就といえた。 そして、征華の産んだ息子・・・征十郎も、また人魚。 しかもその魂現はオルカ。 海の食物連鎖の頂点に立つ存在だった。 2代続けての人魚の誕生、それは赤司家の繁栄の象徴のように見えた。 だが、一族が沸き立つ中、征華には誰にも告げていない悩みがあった。 それは、自身の身体を蝕んでいる、進行性の病。 多くの重種がそうであるように、征華も若い時からブリーリングをしていた。 相手は少しでも人魚の引くとされる国内外の名家の男たちだ。 16歳からブリーリングを繰り返し、それでもなかなか妊娠には至らず排卵剤なども使用した。 妊娠したこともあったが、初期の段階で流産すること2回。 苦節15年にしてようやく生まれた一人息子を、彼女はそれは愛していた。 (それなのに、私が何をしたというの!) 若いころから負担を掛けた身体は不調を訴え始めていた。 最初は育児疲れかと思ったが、めまいや息切れ、貧血などの症状が出始めて・・・主治医に相談した時には、もはや手遅れだったのだ。 斑類独特の、神経性の病。 人魚の体質に関しては、あまりにデータが少なく、このまま病状が進行するとしたら・・・ (あと5年・・・あと5年で、私は征十郎をひとりにしてしまう!) こっそりと受けた検診で、その事実を告げられた後、家族の待つ別荘へ遅れて向かう途中で、あの事故は起きた。 思えば、征華が無意識に発していた重圧に、中間種の運転手が仕事に集中できなかったのが事故の原因かもしれない。 だが、その事故のおかげで、征華は手に入れたのだ。 自分の息子と同じ年頃の、先祖返りの人魚。 (征十郎には、私のような苦労はさせない。 この子が、きっと征十郎を幸せにしてくれる) 彼の両親の命と、彼自身の出自を犠牲に、征華は希望を手に入れたのだ。 シロイルカの魂元を持つ少年の名前は『こうき』・・・征華は、それに『光る樹』という漢字を充てた。 両親が付けたであろう名前を残したのは、彼女なりに詫びる気持ちがあったからだが、だからと言って、自分の行いに悔いることなどない。 (この子は希望の光。 やがて征十郎の子を産む実りの樹) 征華は、奪い取った幼児の魂元を厳重に封じると、普段は使っていない別邸へ光樹を運び入れた。 そして、誰にも知られないように、こっそりと、彼を養育し始めた。 やがて征十郎のための、完璧な『雌』となるように。 その日が来るまで、他の誰にも触れられないように。

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